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演出解析

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世に出ている映像作品の演出を解析していきたいと思います。 映像制作を志す人たちの参考になれば良いかなと思っています。
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#映画

「2001年宇宙の旅」に学ぶ演出技法【人類の夜明け】

「2001年宇宙の旅」に学ぶ演出技法【人類の夜明け】

映画「2001年宇宙の旅」とはスタンリー・キューブリック監督によって1968年に公開されたハードSF映画です。

アポロ11号による月面着陸より前に公開されたにもかかわらず、特撮で再現された宇宙の描写があまりにもリアルな上、監督の判断によりナレーションによる説明を省いたことで、より引き込まれる映画になっています。

※ここから先、ネタバレを含みます。

モノリスによる人為的な進化この映画では「人類

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トイ・ストーリー4に学ぶ演出技法

トイ・ストーリー4に学ぶ演出技法

トイ・ストーリー4は2019年7月公開のディズニー、ピクサー制作のフルCGアニメーション映画です。

今回はこちらの作品の演出解析を進めていきたいと思います。

2019年7月16日現在、劇場公開中作品ですので、未見の方やネタバレを回避したい方はここから先を読まないよう注意してください。

※ここから先本編のネタバレあり

ウッディはボニーには必要ないもの今回の作品でウッディはボニーの人形遊びのメ

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「機動戦士Zガンダム(TV版と映画版)」に学ぶ映像演出【日常へ帰る】

「機動戦士Zガンダム(TV版と映画版)」に学ぶ映像演出【日常へ帰る】

富野由悠季監督作、「機動戦士Zガンダム」は1985年放映の全50話のTVシリーズと、TVシリーズ放映から20年後に公開された追加カットと再編集、音声再録を行った劇場版3部作が存在します。

そのなかで最も大きな変更となっているのが、物語の最後に主人公のカミーユ・ビダンがどうなるのかという部分です。

富野監督曰く「最後のシナリオを変える際に違う演出を思いついたことで20年前のカミーユを救うことがで

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イマジナリーラインを超えてゆけ

イマジナリーラインを超えてゆけ

みなさん、イマジナリーラインを超えてますか~?

映像関係に関わったことがある人ならほぼ100%聞いたことがる「イマジナリーライン」。日本語では「想定線」と呼ばれる撮影テクニックの一つです。(詳しくはWikipediaとGoogle先生に)

イマジナリーラインは撮影やアニメ、CG制作の初心者向けの本で必ずと行っていいほど出てくるものですが、その中には「イマジナリーラインを超えてはいけない」と多々

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【愛ゆえの別れ】

この映画内の絵本、楽曲には「愛ゆえの別れ」と言われる章があります。リズと青い鳥がお互いのことを考え、別々の道を歩くという章のことですが希美とみぞれも最終的にお互いのことを思い別々の道を進むことになります。

みぞれの全力の演奏後、理科室での希美とみぞれのシーン周辺に関する演出をまとめていこうと思います。

絵本とのリンク
希美が絵本の「かごの開け方を教えたのですか」というセリフを、高台のベンチに座

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【シンクロ】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【シンクロ】

物語の終盤、希美は図書館で勉強、みぞれは練習室で演奏の練習をするシーンがあります。ここで二人は別々の場所にいるのですが、シンクロした動きを見せています。

これは物語序盤で近くにいるのにずれていた二人から、お互いの本音をさらけ出し、才能の有無を理解した上でそれを受け止めることができたためで、心の距離感が適切になったため、遠くにいても心がつながっていることを表しています。

歩幅、動きのシンクロ

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【パーツで見せる感情】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【パーツで見せる感情】

映画において、顔以外の手や足などのパーツを接写し、その演技でキャラクターの感情を表現する演出技法が存在します。

リズと青い鳥ではこの手法が多用されており、特にストレスが掛かったときに印象的に使われています。

腕と足を伸ばす
みぞれに才能があることが発覚し音大に誘われたことを知った希美は、自分が音大に誘われていないこと、能力がみぞれのほうが上であることに対して嫉妬と悔しさの混ざった感情を抱くよう

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【立場の入れ替わり】

この映画では希美とみぞれという二人の女の子が、自由に飛び立つ青い鳥とそれを見守るリズとリンクした形で表現されていきます。

物語序盤では希美が自由の象徴青い鳥のようであり、みぞれがそれを見守るリズとして物語は進んでいき、物語中盤でみぞれに才能があることがわったことで、最終的に立場が入れ替わりみぞれが青い鳥で希美がリズと同じであると表現されます。

この立場の入れ替わりを様々な映像演出を用いて表現し

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【分断】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【分断】

物語序盤、希美とみぞれは一緒に行動することが多いですが、実際には心がすれ違っており、別方向を向いていること、分断していることを表す表現がいくつか使われています。

この映画では近くにいるのにずれていた二人の思いが、お互いのことをより深く知ることで同じ方向を向き、それぞれの道に進む話なので、映画前半では心の距離感が遠いことを細かく描いています。

光と影
お互いの好きなところをハグしながら打ち明け合

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【雨と影と彩度と】

みぞれに才能があることを新山先生が気が付き、音大を勧められたあとの雨の日の全体練習では様々な技法が詰め込まれています。

希美は自分には音大を勧めてくれなかったことで、自分にはみぞれほどの才能がないことを知ります。


この日の全体練習では雨が降っており、みぞれが特別な存在であり自分とは違う存在であるということでざわめいている、沈んだ希美の心を表現しています。

雨 = ざわめく心、暗い気持ち

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【いなくなること】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【いなくなること】

劇中における絵本「リズと青い鳥」は、リズという少女のもとに青い鳥が人の姿でやってきて、二人は幸せに暮らしていたのですが、リズは青い鳥の正体が鳥であることに気が付き、青い鳥を開放し大空へ羽ばたかせる出会いと別れの物語です。

この映画では絵本のストーリーとリンクした物語構成となっており、2年生のときに部活を辞め3年生のときに帰ってきた希美を青い鳥になぞらえています。また理科室?でフグに餌をあげている

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【個人練でのすれ違い表現】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【個人練でのすれ違い表現】

「リズと青い鳥」では物語後半まで、みぞれと希美がすれ違うさまを描き続けています。

導入部後の個人練のシーンでは二人の性格や感情、考えていることを説明する演出になっています。

同じセリフを違う意味で言う
個人練で二人で話している際、みぞれは「嬉しい」というセリフを喋ります。これは、希美と一緒にいられて「嬉しい」という意味で言われています。

それに対し希美も「私も嬉しい」と返すのですが、それは本

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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【導入部分の演出】

「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【導入部分の演出】

映画「リズと青い鳥」はTVシリーズ「響けユーフォニアム」のスピンオフ映画で、仲の良かった二人の女子高生の気持ちのすれ違いと別れを描いた作品です。

この映画には絵本パートと現実パートが交互に出てくるようになっているのですが、自分の演出解析では現実パートの解析を主に進めていく予定です。

まずは現実パートの冒頭で希美が青い鳥の羽を見つけて掲げるまでの間にどのような演出意図が盛り込まれているかを解析し

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「GODZILLA(2014)」と「キングコング: 髑髏島の巨神」に見る怪獣のとカメラの距離感

「GODZILLA(2014)」と「キングコング: 髑髏島の巨神」に見る怪獣のとカメラの距離感

怪獣映画には大きく分けて2種類の映画があります。
ひとつは「怪獣 = 人類の敵、意思の疎通ができない相手」である映画、もう一つは「怪獣 = 人類の味方、意思の疎通ができる相手」である映画です。

「GODZILLA(2014)」と「キングコング: 髑髏島の巨神」は同じモンスターバースと呼ばれる同一世界観の映画です。今後ゴジラとキングコングが戦う映画が制作されることが決定しています。

この2つの映

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