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「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【導入部分の演出】

映画「リズと青い鳥」はTVシリーズ「響けユーフォニアム」のスピンオフ映画で、仲の良かった二人の女子高生の気持ちのすれ違いと別れを描いた作品です。

この映画には絵本パートと現実パートが交互に出てくるようになっているのですが、自分の演出解析では現実パートの解析を主に進めていく予定です。

まずは現実パートの冒頭で希美が青い鳥の羽を見つけて掲げるまでの間にどのような演出意図が盛り込まれているかを解析していきたいと思います。

冒頭数カット
足元のどアップから、引きの画のカットにつながり首上のアップにつながる流れで始まる一連なのですが、TVシリーズによくあるバストアップやウェストアップが極端に少なく、実写映画などに見られるレイアウトが多用されています。
これはキャラクターデザインにも言えることですが、より写実的にすることでリアリティの獲得を狙ったのではないでしょうか。
よりキャラクターの心情に寄り添う作品にするためにデフォルメされた部分は極力排除しているように思います。


足元のドアップは誰かわからないようにする効果や、足音でリズムを刻むことで音楽的な要素を生むことができます。また、ヨリの絵を使うことでよりキャラクターに寄り添うような効果を得ることができます。この作品では二人のキャラクターにフォーカスをあてて、ひたすら描かれるのでヨリの絵が多用されます。

引用元:リズと青い鳥

引きの画は場所の説明と寂しさを表現しています。校舎と階段を写し、場所の説明をしつつ周りに生徒が一人もいないことで、寂しさを強調しています。

引用元:リズと青い鳥

みぞれ
みぞれが一人で希美を待っている一連では、カメラはレールの上か三脚の上に乗っている状態でほぼ手ブレが入っておらず静的なカメラになっています。BGMもそれに合わせて、ほぼ環境音のみで構成されています。
一人で待っている寂しさと、みぞれのキャラクター性をここで表現しています。

みぞれ(物静か) = 静的で機械的なカメラ = 動かないこと、機械的なことの象徴

希美
希美が登場するところでは、足音に気づいたみぞれが大きく顔を校門の方へ向けると同時にカメラも大きくPANし、手ブレまでついています。

引用元:リズと青い鳥


ここから映画のキーアイテムである青い鳥の羽が出るまではほぼ全カット手ブレ付きで表現され、みぞれの近くに希美が来ることでみぞれの中の世界が動き出す、希美本人のキャラクター性も活発で元気であることを表現しています。
同じタイミングでBGMもリズムのついた音楽が始まり、世界が色づいていくことを表現しています。

希美(活発) = 動的で自由なカメラ = 動くこと、変化、自由の象徴


みぞれと希美が合流してからは希美が常に階段では上段、進行方向に対しては先側を歩き、後を追うみぞれという構図になっており、希美が主導権を握っている、自由度のある側であるという描かれ方をしています。

引用元:リズと青い鳥

吹奏楽部の練習室にいくまでの間にはほぼセリフが無いのですが、キャラクターの動きや音楽、カメラワークや立ち位置、キャラクターのデザインなどでそれぞれのキャラクター性と関係性を描こうとしています。

また、足の歩調が二人で違っていてリズムが合っていないのですが、映画の冒頭では仲は良いが実際には気持ちがすれ違っていることを表しています。

まとめ
このように特にセリフに頼ることなく、カメラワークの変化や音楽の変化、立ち位置や動き方に気を使うことでキャラクターの個性や関係性を表現することができるのです。


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