「リズと青い鳥」に学ぶ演出技法【雨と影と彩度と】

みぞれに才能があることを新山先生が気が付き、音大を勧められたあとの雨の日の全体練習では様々な技法が詰め込まれています。

希美は自分には音大を勧めてくれなかったことで、自分にはみぞれほどの才能がないことを知ります。


この日の全体練習では雨が降っており、みぞれが特別な存在であり自分とは違う存在であるということでざわめいている、沈んだ希美の心を表現しています。

雨 = ざわめく心、暗い気持ち


引用元:リズと青い鳥

立場の逆転
物語序盤では希美のことをみぞれが凝視するシーンが多くなっており、希美に対する一方的な執着心を描くことでみぞれがリズであることを強調していました。

しかし物語上みぞれが音大に行ける才能を持っていることがわかってからは希美がみぞれを凝視する構図に変わっています。

このことで立場が入れ替わったことを意味します。

物語前半 希美を凝視するみぞれ
物語後半 みぞれを凝視する希美

凝視する方向を入れ替えること = 立場の入れ替わり

引用元:リズと青い鳥

光と影
練習後一人で外に行く希美を追いかけてみぞれが呼び止めます。その際に希美は窓の光の中に、みぞれは柱の陰の中に配置されます。

これは二人の心が同じ方向を向いていないことを表しており、気持ちがすれ違っていることを表しています。

影の中と外に分けて配置する = 気持ちが離れている

引用元:リズと青い鳥

この表現は別の映画でも使われていた光と影の中でキャラクターを分けて配置することで気持ちがつながっていないことを表す演出になっています。

彩度を下げる
みぞれは希美に「大好きのハグ」をしてくれとせがみます。「大好きのハグ」はお互いの好きなところを言い合う遊びなのですが、希美は「今度ね」と言って拒否し去っていきます。

希美に拒否され、悲しい気持ちになったみぞれの感情を彩度(色味)のない傘を使って表現しています。

彩度(色味)のない傘 = 悲しい、暗い、つらい気持ち

引用元:リズと青い鳥

別の映画でも同様に彩度を意図的に下げることで、暗い気持ちを表現されています。

まとめ
このシーンでは自分に才能がなかったこと、みぞれと立場が入れ替わったことを受け止めきれていない希美の悲しさと、希美に拒否されたことでショックを受けたみぞれの悲しさを様々な方法を積み重ねることで描いています。

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