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「HSP外来」今後の展望〜ベスリクリニック新刊紹介を通して〜

こんにちは。ベスリクリニックベスリTMS横浜醫院
「HSP外来」担当カウンセラーの宇賀神です。

本投稿では、私が勤めるベスリクリニックの田中伸明先生・田中遥先生が書かれた新刊の紹介を軸に、HSP外来のスタンスと今後の展望について書いていきます。

HSP概念✖️心理医療臨床現場 での視点から発信する、という前提のもと書いていきます。違う視点から見れば、腑に落ちない部分があるとも想定しますので、忌憚ないご意見をいただくことで、建設的な議論ができればと思っています。

・心理職、医療業界、支援職の皆さま
・メンタルヘルス領域 経営者の皆さま
・HSP概念を脳神経学の視点から捉えたい方
・HSPという言葉を使って発信やビジネスをされている方
・ネットや本などのHSP情報を見ても腑に落ちない方
・うつ病・適応障害・精神疾患や発達障害と診断されている
 当事者ならびにそのご家族の方

へぜひ読んでいただきたい記事になります。

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参考記事⬇️


本の概要

本の構成は、序論・第1部・第2部・補論となります。

序論では、「うつ病治療革命」と題し、治療・診断・目標の3つの宣言が書かれています。医療における薬物療法だけではない視点で、うつ病の治療をどう考えるかの大枠について説明されています。

第1部では、うつ病事例を扱っています。
うつ病発病→身体回復期→心身回復期→社会回復期→社会成長期 に分けて、治療に向けた取り組みと考え方について解説されています。

昇進した主人公Nと、部下A、医師Hが登場するストーリーに沿っています。

「回復のためのQ&A」コラムもあり、どのようにして社会復帰していくのかのプロセスも追えるようになっています。


第2部では、うつ病治療革命を提唱する理論について書かれています。

脳や神経における専門用語が多く出てくるので、理解できるまでに時間がかかりますが、図解が沢山あるため、まずそちらをみてから文章を見ると理解しやすくなるよう構成されています。

補論1、2については、ベスリクリニックが提唱する「ベスリ理論」と世界で導入されている最先端のソマティック心理療法について言及しています。

総ページ140ページほどで、ボリュームはそこまで大きくはないですが、それだけ中身が濃くなっています。

タイトルがうつ病となっておりますが、精神疾患・発達障害・高感受性の仕組みとも重なるところがあります。脳神経学の視点で見ると、こんな仕組みだよ!とまとめられている本になります。

HSP外来のスタンス

現在私は、どのような意識、スタンスで臨んでいるのかについて書いていきます。

感受性の高さ・敏感性・繊細性がどのようなプロセスで表出するのかを特定した上で、「自分に合った」具体的な対処法を見つけ、実践し、日常で定着するまでをサポートする

上記は、私がHSP外来で行なっていることを1文で表現したものです。


HSP概念を提唱したエレイン・N・アーロンは
HSP傾向を説明する「DOES」の中にある
” E:Emotional reactivity  情動的反応 ”の特徴として、
扁桃体活性が人一倍強い、を挙げています。

ではなぜ扁桃体活性がより強くなされるかという疑問が出てきます。

脳の構造から説明していくと理解しやすくなります。

生物の進化の過程は、魚類→(両生類)→爬虫類→哺乳類→人間と辿っています。
脳の構造も、魚類脳→爬虫類脳→哺乳類脳→人間脳に分けることができます。

新しい脳は古い脳を抑制するという流れです。
扁桃体は魚類脳に分類される器官です。

扁桃体がより強く動く理由は、爬虫類脳の動きが何らかの理由で障害されることで、扁桃体の動きを抑制する働きがなくなるからです(これを”脱抑制”と言います)。その結果、扁桃体活性がより強く起こるという仕組みです。
(詳細の解説は本に譲ります。ご興味がある方はぜひお手に取ってみてください。)

HSP外来の立ち位置としては、爬虫類脳の動きを回復させていくためのワークを実施しています。具体的に言えば、自律神経の中の「腹側迷走神経複合体=社会交流神経」をスイッチオンにするワークを行い、安心感を醸成していきます。

社会交流神経がオンになり、育まれることによって、爬虫類脳の動きが回復し、扁桃体活性が穏やかになっていきます。そうすると、扁桃体活性することで起こる「危険察知・情動反応」も穏やかになり、今の環境で起こる状況を俯瞰して冷静に捉えられるようになります。

「感受性の高さ」の理由やその出方は人それぞれです。

現在の環境や状況を整理し、心身ともにゆるめ、日常での対処法を見つけ実践する。

そのために、安心安全の感覚を醸成する(神経の領域)、身体をゆるめる(体の領域)、心理学的アプローチ(心の領域)の3つを組み合わせてワークを行っています。

クリニック連携の詳細

ベスリクリニックでは、扁桃体症候群に対する治療を、横の連携を通して行っています。

「脳・体・心」にアプローチするベスリ理論に基づいて診療を行っていますが、1番のポイントは、「横との連携が密」であるという点です。

HSP外来の他にも、

脳へのアプローチ(TMS:経頭蓋磁気刺激装置、VNS:迷走神経刺激)
心のアプローチ(SE:ソマティックエクスペリエンシング、BSP:ブレインスポッティング、EFT:感情解放テクニック  などの心理療法)
体へのアプローチ(ニューロモデュレーション・動作療法、鍼灸)

があり、患者様の状況やニーズに合わせた治療提案が可能です。
例えば、トラウマ体験による症状の場合は、心理療法の先生へ繋ぐことができます。


HSP概念は日本社会の中においても、研究途中のため曖昧な状態です。
発達心理・パーソナリティ心理・臨床心理等の各研究者によって
「HSP:環境感受性」の論文が少しずつ出されています。

しかし、臨床群(病院やクリニックへ行く人たち)に対するデータが不足している状況です。そのため、主に臨床群の方々と対話しているHSP外来は研究者や心理職から見ても異端な立ち位置なのかもしれません。

精神疾患(主にうつ病や適応障害と診断される方)を抱く方々との対話となるため、単独で運用することはリスクでしかなく、横との連携を通して初めて成り立つのです。

HSP外来へいらっしゃるのは、HSP概念に関心がある(HSPだとは思っているけど、実際はどうかわからないと思っている)方です。
「HSPが理由で今の不調に繋がっているのではないか」と予測していらっしゃっています。

この問いは、HSP概念が ” 気質的概念で病名でも診断名でもない ”
とわかっていても、一生付き纏う問いなのです。


他の外来診療の中で、HSP外来を希望される方もいますし、
初めからHSP外来を受けたいといらっしゃる方もいます。

身体回復期ではTMS(経頭蓋磁気治療)やこころ外来、
心身回復期からHSP外来にいらっしゃるケースもあります。

社会回復期になった時に、キャリア外来やビジネストレーニング
(リワーク支援)に移られる方もいます。

このように、医師🔄カウンセリングという流れだけではない
新しい体制のもと対応しています。

治療の考え方

悩んでいる症状に対してではなく、根本にある「原因」に着目し治療するという考え方です。

原因とは、症状や感情・反応が起こるようになった環境やトリガー(刷り込みの場面)を指します。(脳神経や身体器質的な領域は医師が対応)

それが職場の場合もあれば、家庭内の時もあるし、誰かといる時もあれば、一人でも起こる時がある。気候変動によってなのか、身体のバイオリズムによってなのか、人間関係によるものか・・・
挙げ始めたらキリがありませんが、それぞれの原因は人によりけりです。


HSP外来では「痛みや症状は、身体からのメッセージである」と捉えます。

本の中で、うつ病は「これまでのやり方・考え方・生き方を変えなさい」というメッセージであると表現しています。

この考え方は私の捉え方と繋がっていると感じています。
HSP外来臨床において、痛みや症状の原因を見たときに
「今のやり方を続けるのはもう嫌!!」というメッセージが大半だからです。


扁桃体症候群に対する治療であると言っていますが、
具体的にどのようなプロセスを経るのか解説します。

扁桃体活性の原因は、

・外側からの刺激(五感・態度・雰囲気など:外受容感覚)
・身体の内側の刺激(臓器感覚・感情・反応:内受容感覚)
・過去の経験と記憶から作られたイメージ

これら3つの情報が日常場面で脳内に集められるからです。

場面情報に対して「危険」だと脳が察知すると、
扁桃体を通して身体症状や精神症状となって出てきます。

HSPはその度合いが大きいのですが、上記で書いた「鰓弓神経」の中にある社会交流神経がスイッチオンになることで、扁桃体活性が抑えられます。


HSP外来初回では、まず神経エクササイズワークから入ります。
神経の昂りを落ち着かせ、社会交流神経を育むことで、
身体の内側に「安心感」を醸成します。
神経が緩むことで、心身の緩まりに繋がっていきます。

安心感の醸成 → 社会交流神経が育まれる → 扁桃体活性が落ち着く
→ 場面の受け止め方がゆるまる → 冷静に受け止められて気にならなくなる

という流れを辿っていきます。

この流れが日常の中で回るようになったら、卒業です。


ベスリクリニックでは開業10年で
2万人を越える患者様の治療臨床をしています。

その中の1800件ほどを私が担当させていただいていること。
臨床を積み重ねる中で、HSP概念を軸とした支援がより明確化しています。

ここまで話したことは、限定的で範囲が限られていますが、今の社会に蔓延している”生きづらさ”に切り込む新たな視点になると確信しています。

HSP外来今後の展望

普段であれば、専門的な言葉を使わずに書くよう努めますが、
今回の記事は新刊の内容に合わせて書きました。

HSP外来の担当カウンセラーとして勤務して4年目の今。
これからもクリニックの中で臨床を積み重ねていくことは変わりません。

ただし、これまでと同じやり方を続けていたら、時代変化に対応できなくなります。現在いらっしゃる患者さまからの主訴が、変化していると肌で感じているからです。

過去3年間では「HSPかどうか知りたい」「今起きる症状はHSPのせいですか?」という内容が主でした。

現在は『HSPと自認する自分が、今の社会に適応できるだろうか』という永遠の課題を感じていらっしゃっています。
また『自分は何のために生きているのか』『この命をどう今の社会に還元するのか』『本当はどうしたいのか?』という本質的なテーマに変わってきています。

最近のワークでも、「在り方」を明確にしていくセッションが多いです。
どんな仕事をするのか、どの環境にいるのか関係なく、
いかなる条件や制約があっても、”自分らしく”生きられるようになる。

とても大きなテーマに対して、HSP外来では一緒に答えを見つけ、日常に溶かす、を繰り返しています。

HSP概念をメディアやSNSで知るだけでは、対応できなくなるくらいに、より個別の状況を踏まえた支援が必要になっていきます。
それどころか「HSP」という言葉自体がもはや関係なくなっていきます。

入口としてHSP概念がありますが、ゆくゆくは「ありのままの自分」でこの世界を歩んでいく。そんな道筋を体系化し、実践していきます。

新刊で書かれているように、「うつ病」という表出したメッセージから、原因にアプローチする。

神経・心・身体の3つの視点を組み合わせながら、
自分にとっての心地よさを、探り・見つけ・広げる。
日常に溶けて自分で応用が効くようになる。

行き先の見えない不安を
揺らぎない安心感に変えていく

そんな道筋が、私にはみえています。

これからは言語化しながら、多くの方に届くように。
クリニック内だけにとどまらず、提供できるようにいたします。



最後までお読みくださり、ありがとうございました。

ご感想やご意見、大歓迎です!
忌憚ないお言葉お待ちしております。

宇賀神

リンク集

🔸ポリヴェーガル理論による「うつ病」治療革命
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🔸前書籍レビュー記事

🔸宇賀神がカウンセラーをする思いと覚悟

🔸宇賀神の自己紹介

🔸HSP外来で行っているセッションをオンラインでも受けられます
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