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ベスリクリニック「HSP外来」担当をする理由〜発達障害 治療革命!本レビューにあわせて〜

こんにちは。宇賀神です。
本投稿では、私自身がなぜクリニックで臨床を積み重ねているのか?
「HSP外来」の看板を背負っているのか?について書いていきます。

私が現在勤める「ベスリクリニック」グループを創設した
脳神経内科専門医 田中伸明先生の本の内容に沿いながら書きます。

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クリニック勤務経緯

私は2020年9月末まで、サラリーマンとして働いていました。自身の経験からHSP概念についての配信を毎朝30分ライブ動画を通して行なっていました。

そんな中、クリニックへ「HSP」を悩みとして相談する方が急増したそうです。2020年夏頃に、「繊細さん」の本や、TV番組「世界で受けたい授業」にてHSPが取り上げられたのを機に、瞬く間にHSP概念が日本に広がりました。その影響があって、本来は医療業界と相容れないHSP概念を入り口に相談が増えたのだと思います。

通常であれば「できません」と言って終わるところだと思いますが、ベスリクリニックでは、感受性の高さゆえの症状に対する治療を真摯に対応されています。「HSPの専門家を呼ぼう!」という話になり、私に声がかかったという流れです。

田中先生の”生き様”に共鳴した瞬間

突然のお話に戸惑いながらも、一度面談をさせていただく流れになりました。初めてお会いした瞬間から、熱い想いが伝わってきました。

田中先生は、難病治療の神経内科医としてキャリアを積むだけではなく、外資系コンサルティングの会社に飛び込み、抑うつ症状を経験された他、大学の特任教授のご経験もあります。医師だけの視点だけでなく、ビジネスの現場も体感されているということに、私は深く心強さを感じました。

「症状ではなく、原因を治す」という言葉に、私は納得しました。例えば、うつ病が診断されるのは、9個の症状のうち5個以上の症状が2週間以上続いた場合です。逆に言えば、4個以下だったり2週間以下の場合はうつ病ではないということです。症状が起きるのには多岐にわたる原因があって、人によって違う。だから原因を特定したらいい、ということです。

診断名が出る出ないかかわらず、本人のしんどさや辛さの原因を見なければ適切な治療にならない。このお言葉を伺った時に、私は(心の中で)唸りました。

現在の保険診療では、薬物療法以外の選択肢がほとんどない状況。そんな中で、心・脳・身体の「ベスリの三角」で内的要因にアプローチする。薬に頼らない治療を謳っている部分になります。こんな考え方をしている医療機関があるのかと感動しました。土台は身体になっており、身体から治すことが大切であるとおっしゃっています。

それは私自身の実感としてもあり、心と身体は一致している。心だけのアプローチには限界があると思っていました。ベスリ理論をその場で語ってくださったときに、「自分の思い描いた支援を実現している!」と思ったのです。

その後私の想いも伝え、「HSP外来頼んだよ!」と背中を押してくださったのです。

脳神経という視点

脳神経内科の視点がメインということもあり、ポリヴェーガル理論も踏まえた治療方針になっています。HSP概念も神経学的に捉えると理解がしやすく、紐づく身体症状の原因を認識しやすくなると考えています。

医師の役割の一つとして、「診断書を書く」が挙げられます。
単純に「職場の環境のために〇〇という症状になった」と表現するのではなく、本人が職場の環境に対してどう捉えて、どう行動しているのか?という思考行動パターンに言及しながら「原因がわかる診断名」を記載する点がユニークな特徴であると思います。

思考行動パターンの仕組みに「脳神経」が関わっているということ。
私がHSP概念を深く理解し、人生が好転してきたプロセスに、「脳神経」の視点の深い理解があったので、ベスリクリニックの方針と一致しています。

HSP概念と神経学の宥和性

扁桃体活性がしやすい、というのがHSP概念を提唱したアーロン博士の研究主軸となります。田中先生も扁桃体の動きに注目し、「扁桃体症候群」として必要な治療の提案をしています。(扁桃体活性を抑えるための治療を行うのが主な考え方となります)

HSPの専門家として私にお声がけいただき面談した際に、はじめに共感できたことでもあります。扁桃体の活性化といっても、解剖しなければ分からないものですし、反応パターンは人によって大きく変わると思います。それを体系的にまとめながら治療をしているところに深い安心感を抱きました。

また、現在のHSP研究では「環境感受性」理論が中心となっています。美的感受性・易興奮性・低感覚閾の3つの感受性尺度も、脳神経の動きや心理統計的な分析から研究されているものです。そう言った意味で、HSP概念と神経学には宥和性があるといえます。

本の中でも、HSP外来の存在について言及いただいているページがあります。3年で1500件以上の臨床事例を担当してきました。HSP外来にいらっしゃるクライエントさんの変化度合いの大きさについて、田中先生よりお褒めいただくことがあります。そのお言葉に触れるたびに、今行っていることをより広げていこう!という闘志が湧いていきます。

環境要因と個人要因の双方に原因がある

心理学のあらゆる文献や論文に触れていても、環境と遺伝の相互作用によって今の症状や出来事が表出する、という考え方がメインになっていると感じます。HSP概念もそうで、環境感受性理論における「感受性の高さ」は、遺伝的要素が47%、環境要因が53%という論文もあります。

対象者・文化的背景・コンディションなどによって結果も大きく変わるものではありますが、遺伝だけではない、環境だけではない、というのは体感からも理解しやすいのではと思います。

現にHSP外来での対話においても、この話によくなります。
「HSP」という言葉があるから、「HSPだからしんどいんです」「HSPは〇〇なんですよね?」と、HSPを理由にしてしまう。本来の原因から離れてしまって必要な支援が届かなくなる、という事態も起きているのです。

どのクリニック行っても改善しなくて、HSP外来をやっとのことで見つけていらっしゃる方が口を揃えて仰られることは、「やっとHSP概念の捉え方が腑に落ちました」ということです。

HSPという言葉自体に支配される必要はないのです。自身がどう捉えたら、今の自分に必要な行動が取れるのか、変化できるのか。そのためにHSP概念を活かし、自分の特徴を理解する。これが私の信条です。

診断名にとらわれない治療というのが、HSPという言葉にとらわれない自分の特徴の明確化ともリンクをしていると感じました。

名称が与える印象

田中先生のご専門は、脳神経内科です。原因不明で治療法がない病気の究明が大切な仕事であるとおっしゃいます。

精神科では、統合失調症の治療モデルを発達障害にも適応しているということから、必要な薬を出すために紐づかれた「保険病名」として診断される。例えば、コンサータを処方したいから、発達障害と診断名を出す、ということです。

この事例は、本人にとって必要な支援の道筋とズレることがあるなと思いますし、私自身が医療に対して抱いていた違和感はここにあったのかと納得しました。薬物療法においては特に、今の自分にとってなぜ必要なのか?原因解決に必要だという納得感が大事であると思います。

「HSP外来」で大切にしていることは、HSP概念は診断名ではないのはわかっていても、どうしてもHSPを理由にしてしまう。そうでもしないとやっていられないくらいに周囲の理解がないし、しんどいということ。その背景も踏まえながらセッションを進めるということです。

なので、診断名がついているついていない関わらず、HSP概念の視点を軸にしながら、目の前にいるクライエントさんの環境要因と内的要因をじっくりと観ています。

また、鰓弓神経(顔面神経・三叉神経・舌咽神経・迷走神経・副神経)不全と神経発達症の特徴がつながっている。そう本の中では、脳の成り立ちから丁寧に解説いただいています。

Disorderという単語の捉え方を「障害」から「症」へと変える動きになった最近。発達障害が神経発達症という言葉に変わってきています。言葉だけをみても印象が変わってくると思います。

ただし、本の中でも指摘している通り、日本においては最新情報が社会に取り入れられるまでにはタイムラグがある。最新のDSM-5やI CD-11にて名称が変わっているので、実際に日本で神経発達症という言葉が馴染むのには相当の時間がかかると想定できます。

本の感想・レビュー

全体190ページと短めで、編集者で聞き手の浅見淳子さんとのやりとり形式で書かれているため、読書が苦手な私でもサラッと読むことができました。浅見さんは今回の本を出している「花風社」を創立され、2000年代初頭から発達障害の分野の本を手掛けていらっしゃいます。

脳神経の仕組みについては、かなり取っ付きづらいと思います。田中先生が同じことを何度も丁寧におっしゃいます。浅見さんによる要約やまとめも書いてあるので、要点だけ読み直すこともできます。

HSP概念を伝えるときには、私は神経学的側面から話すようにしています。世のネット情報を見て腑に落ちない方がHSP外来にいらっしゃいます。その際にこの本に載っている図表や相関図を見せると理解しやすいなとも思いました。

「発達障害は生まれ持ったものだから治せない」という風潮がある中、
脳神経内科医としての臨床から、「発達障害は治せるかもしれない」という新たな可能性について強く提言している本でもあります。

治る治らないだけが論点ではないと私は思いますが、「治らないのならば、一生このままなのか」という絶望は無くなると思うのです。

HSP外来においても、「HSPは治すもの治さないもの」という視点を一切持っていません。あくまでも、HSP概念は、自分の特徴や今の環境に適応できるための”ほんの一つの視点でしかない”からです。

この本に書かれていることも、ほんの一つの視点です。でも今の社会で当たり前になっている風潮や捉え方を見つめ直し、自分に合った生き方を見つけ実践していく大きなきっかけになることは間違いないです。

発達障害 治療革命!という本のタイトルからも、その姿勢が伝わってきますし、読み切ってタイトルの深い意味を感じています。

発達障害の治療についてご関心のある方だけでなく、今自分の身に起きている症状や反応、しんどさがなぜ起きているのかを、体系的に捉えたい方にもお勧めします。

HSP外来においてもこの本は近くに置いて、必要なときに活用していきます。田中先生と同じ想いで、同じ空間で仕事をさせていただいていることに心から感謝です。いつもありがとうございます。この場を借りて感謝の思いを綴ります。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

宇賀神

ベスリクリニックの各情報リンク

HSP外来は、神田院では毎週水曜日と隔週土曜日、横浜院では隔週月曜日に診療に入っています。(2024年3月現在)

HSP概念について深く知りたい方、身体症状がしんどくかつHSPについて関心がある方、HSP特性を踏まえて復職や転職をしたい方などがお越しくださっています。

ベスリクリニックの良さは、横の連携が図られているところです。
急性期〜回復期までカバーをしており、薬物療法はもちろん、心理療法・鍼灸・フラワーレメディ・セロトニン活性から、ビジネストレーニングやキャリア外来など、特別外来がたくさんあります。

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