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また私が読み返したいと思える記事をまとめています。
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#小説

すべては私の思い込みでしかなかった。

家庭で、ちゃんと言いたいことを言うこと。 これは私にとっては少々ハードな課題だった。 それもそのはず、幼い頃から強い感情は口にはしないことを意識しながら過ごして来てしまったのだから。 機嫌の悪いときの私や、落ち込んでいるときの私、感覚が鋭すぎる私とも躊躇なく向き合ってくれる人。すべてのそのままの私に寄り添ってくれる人。 そんな人が存在すると言う概念がそもそもなくて、 機嫌の良い私しか出してはいけないと言う思い込みがいつの間にか、心の奥深くに刻み込まれてしまっていた。ずっ

「それをやってはいけない」と神様から言われた話 #一歩踏み出した先に

ねえ、何か嫌なことされたら、やり返す? やり返さない? やり返したらどうなると思う? 「やり返した」人が体験した不思議な話を元に創作しました。 ※ この記事は宗教とは関係がありません。 *** 黒歴史ある日、会社員Aは、同じ課で働く同僚Bが自分の悪口を言っていたことに気が付いた。どうして気が付いたのかの詳細は省くが、思い込みや勘違いではないことは確実で。 しかも、仕事でBに話した内容を、悪意から大きく改変し「Aってこんなこと言っているんだよ。こんなこと言うようじゃ、

一つしかなかった夜は君と二つに分けて

 公募の結果が出たのが日曜日。それまでの間、この7月、たくさんの出会いとか、新しい体験とかあって、それはもう刺激的で、全てに意味があるような気がしている。無意味なことは何一つなくて、全てが未来に繋がっているんだと、直感した。  一緒に出した人が、最終選考に残り、私の作品は一次を通過することはなかった。私の結果は残念だったけれど、彼の作品が最終選考に残ったことへの喜びの方が優った。残って欲しいと思っていたし、なんなら受賞して欲しいと思っていたので、このまま願い通りになってほし

【詩】指をさせ

やり直しの効かない人生 笑いながら指をさせ 大人なんだからなんて うるさいほど耳の奥で こびりついて 離れないほど 聞いてる もう諦めなよ 笑いながら指をさせ 掴めない可能性を 決めつけるのは 一体誰だ 耳を貸さないのは こっちだ いい加減にしな 笑いながら指をさせ 口を出さないでただ見てろ バカにされてる人生を いま生きてんだ 夢なんて消えたと言われても 大人なんだからなんて いい訳言いながら 煮え切らない 人生に夢があるなら そんなの見たくない こっち

「ショートショート」初恋のギフト。

私の視線は天邪鬼だ。 見る。視線を逸らす。そしてまた見る。 自然と。でも時々故意的に。 見てる時はだいたい無意識。 無意識だけど、気持ちは暖かい。 寒い冬を暖かくするのは凄い事だと思う。 教室の机に肘を置いて手に顔を載せる。 こうした方が見つからない。凄く自然。 展望台になったかのように目を光らせる。 でも、あまり光が強いと気づかれてしまうから、 そっと悟られないようにそっと。ただただ見てる。 誰かと話している。女の子だ。 笑顔を向けないで。こう思う自分は嫌な女だ。 で

輪廻の風 (1)

エンディは飛び起きた。 あまりにも奇妙な夢を見たからだ。 目が覚めると、自分の脂汗の量と息の荒さに驚いた。 宿泊先の小さなホテルを後にし、街に出る。 ボロくて殺風景な部屋だったが、久しぶりに雨風を凌げて屋根のある場所で一夜を過ごせたことにありがたみを感じながら歩き出した。 天気が良く、風が気持ちいい。 昼過ぎまで寝ていたのをもったいなく感じた。 ここは大国、バレラルク王国の端っこにある、自然が豊かで農業と漁業が盛んな小さな田舎町だ。 この少年は散歩が大好きだ。

空白小説Twitter投稿まとめ1~8【ショートショート(500字)×8作】

1. ”猫には9つの命がある” 2. ”あの猫の名前” 3. ”猫じゃなかった” 4. ”本屋にて(A面)” 5. ”本屋にて(B面)” 6. ”ワレワレと猫” 7. ”ワガハイといえば悪魔” 8. ”本屋にて(C面)”

【空白小説】『コンテストにチャレンジだぜ!(アマギフも貰えるらしいよ)』

どうもお疲れ様です、ミックジャギーでございます。 あの、いきなりなんですけどワタクシ、少し前に某公募に入選したんですよ。 それで、ちょっと賞金を頂ける事になったんです!ありがたいですよねえ。 で、思わず財布のヒモが緩んじゃいましてね。 賞金が入るから、欲しかったアレを買っちゃおうとか、たまには美味しい物食べたいなぁ.. 賞金入るから食べちゃうか!って。 ちょっと普段より出費が増えちゃいまして。 賞金が入るから、まあいいじゃないですか。 でも、一週間経っても、二週間経ってもお相

美しい というものに

 美しい  という感情は いったい どこから湧いてくるものだろうか。  いや、そもそも、何をもって 美しい とし、その言葉を伝えるのだろう。  ……そこに、何か、理由がいるのか?  僕は今、目の前のそれを 美しい と思い、心が感動に震え、自然に何か 何かが湧き上がってくるのを、感じている。  それはたしかなことだ。疑いようもない。  ではそれは、どこに、なにを、どうして、感じていることであろう。それを、言葉に表すことが、できるのだろうか? 言葉に表す必要が、あるの

本当の友達

ミネさんとの出会い 私の日光の家は、神社とお寺の間にある。  お寺にはお墓が隣接していて、お寺の敷地はかなりの広さがあり、ミネさんは、お寺の土地の草むしりをしている。  初夏から真夏の多忙期にはシルバー人材センターからヘルプの高齢者が手伝いに来る、ミネさんはその人たちのリーダーでもある。        ミネさんの年齢は83歳くらいだろうか? 高齢の長時間労働は辛くはないかと、私は少し気の毒に思っていた。 報徳二宮神社と如来寺  報徳二宮神社は二宮尊徳(1787〜185

【詩】救済

心の深いところにある 誰にも話さない痛みに 苦しむことがある 誰も傷つけたくないし 誰にも傷つけられたくない 忘れていない痛みが 置き去りのまま たまに疼くけど そっと蓋をする 天使でもなければ 悪魔でもない 太陽があれば 月もある 見るのは奥じゃなくて 表面でいて 傷が私を呼び起こすから 心の奥を見ないで 本当は君がそっと 傷に触って優しい気持ちで 雲一つない空に向かって 癒し給えと言って欲しい 邪悪な色をした言葉が 取り囲んで 仕方なく言うことを聞いた時 自分

【詩】残された手紙

あの頃は自分の言うことが正義で 当たり前のように人を断罪して 胸を張って間違いを犯していた そんなことも思っていなかった きっとそんなことだ 振りかざす頑固で硬すぎる正しさは 人を傷つけるには十分 謝るなんてこと頭になかった きっと間違っていない あなたはなぜ一人 全身から溢れる振りかざされた 正しさはメッキのようだ その正義には根拠が見えない ねえ父さん 自分に自分の正義が正しいか 聞いてみてよ 振り回されて聞きかじったことを信じて 誰よりも饒舌に分かっ

【詩】つくる手

ろくろを回して作る器 何回やっても上手くいかなくて 途中でぐちゃぐちゃになってしまう そっとあなたが手を添えると 美しい曲線の器が 目の前にあらわれる わたしが何かをすると あなたは静かに眺めて 見守ってくれる 転げるように 繕っていたものが 剥がれ落ちてゆく もがけども 望んでいた方向とは 逆の方向に流されてゆく 座り込んで空を見ている ただのわたし そんなわたしをあなたは 名を呼び 引き寄せ 抱きしめ 温め 赦して 涙をぬぐってくれる あなたが行

【詩】Scene

震える心の独り バス帰りの中から見る朝日 後ろから聞こえる溜息 空気が凍る家族のリビング 後ろ指をさされる片足の少年 飲みたくないのに飲むアルコール 暗闇に光るスマホの画面 画面に映る自分の顔 冷え切った弁当 シンクにあるのはコップだけ いつまでも来ない返事 眠れない時間を文字で埋める指 部屋に転がるペットボトル 履きつぶした靴 すがるのも無駄な偽者 見覚えのある横顔 違う世界が交叉する瞬間 冷え切った空気の月 忘れていた温もりのある手