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「ショートショート」初恋のギフト。

私の視線は天邪鬼だ。
見る。視線を逸らす。そしてまた見る。
自然と。でも時々故意的に。

見てる時はだいたい無意識。
無意識だけど、気持ちは暖かい。
寒い冬を暖かくするのは凄い事だと思う。

教室の机に肘を置いて手に顔を載せる。
こうした方が見つからない。凄く自然。
展望台になったかのように目を光らせる。
でも、あまり光が強いと気づかれてしまうから、
そっと悟られないようにそっと。ただただ見てる。

誰かと話している。女の子だ。
笑顔を向けないで。こう思う自分は嫌な女だ。
でも、嫌な部分が出てきたのは貴方のせい。
責任をとって欲しい。

月に一回の席替え。先月は良かったけど、
今月は嫌だ。後ろから貴方を見れなくなる可能性があるから。先月は別に良かったんだ。私の後頭部に目はついてないから。
今月は31日までじゃなくて、30日までだった。
少しだけカレンダーを恨んだ。

時々目が合う。
時間にして0.3秒。音なら8部音符くらい。
それだけで、吸い込まれる。全部を持っていかれる。
その日は私の体は間抜けの殻だ。私と言う家主は貴方の瞳の中に滞在している。

話す事はできない。見てるだけ。
おはようも言えないから、おかえりなんて夢のまた夢だ。でも、夢を見るのは素敵な事だ。私の頭の中は未来を見ていて、夜疲れた目を瞑ると脳の電気信号が駆け巡る。電気信号は頭のブラウン管を通して映像で流れる。熱った体が暑くて足だけ布団の外へ出すけど、顔は布団の中へ。中は真っ暗で、自分の匂い。その暗闇の中で貴方を探す。自分の匂いの中の貴方。少し恥ずかしくなり、顔を出す。息をするのを忘れていたのか…はたまた…ブハッと大きく息をすると胸がドキドキしている。今日も眠れないな。

教室はいつも後ろから入る。
前から入ると目が合うから、嬉しいけど私の精神衛生上良くない。朝から全てを捧げて疲れてしまうから。そっと後ろから入る。そして、席に座って徐々に視界に入れながら慣らしていく。

たまにある嬉しいような苦しいような感覚。
おはようって言われる。
1週間に数回。
おはようって言い返す。
上手くできたかな?無愛想に聞こえてなかったかな?
朝から夜まで、時々無意識の向こうから思考の邪魔が入る。
さよならは別に普通の挨拶。
でも、貴方から言われたら少し意味は違う。
胸の真ん中から広がるようにぞわぞわとする。
ドキドキはおはようの時と変わらないけれど、少し冷たいドキドキ。嫌なドキドキ。
いつかの別れのいつかの練習。そう思って胸の蓋を閉じる。

雨の日濡れるからやっぱり嫌いだ。
でも、今日の雨はもっと嫌いだ。
クルクル回る一本の傘。男の子が指すには少し女の子っぽい。
風になびくカーテンの隙間。
貴方は左肩が濡れている。そして、隣には華奢な肩が濡れている。紫の傘はクルクル回る。止まっては回り。また止まっては回り。イルミネーションのないだけのメリーゴーランド。でも、分かる。幸せそうだ。

貴方は空を見る。私が吸い込まれていた瞳は暗い空を見ながら笑っている。
小さくなる傘。私はただただなびくカーテンの隙間から甘そうな葡萄味の飴になるまで眺めていた。

少しの間のちょっとした初恋。
一年もないくらい。これからの人生のたった一瞬。
人生を時計にしたら30分くらい。でも、初恋の時間を貴方にそして、未来の私に捧げたギフト。


おしまい。

tano

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