ミックジャギー(そよかぜフィリップ)

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ミックジャギー(そよかぜフィリップ)

短文書きです✍ タップノベル👉https://tapnovel.com/writers/3557 神社探訪記👉https://hotokami.jp/prayers/5957/

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【掌編】『卒業検定』

「ねえ、知ってる?」 教習所の無機質な待合室で、隣に座った見知らぬ大きな目の女性に声を掛けられた。 卒業検定の事で頭が一杯だった私は、一瞬遅れて返事をした。 「.....え?...何をですか?」 大きな目の女性は声を潜めて、周りを気にしながら答えた。 「あのね、かなり前の話なんだけど、この教習所で卒業検定の実技試験の時に、運転ミスして大事故起こした生徒がいるらしいのよ」 「え..」 私はショックを受けて言葉に詰まった。 この後、その実技試験が控えてるというのに..

    • 【掌編】『ふたたびの彼女』

      「これ、スゴい人気のやつだから、後で食べてね」 幼なじみの春野七海が、四畳半の隅にある小型の冷蔵庫を開けて、プリンを2つ入れた。 「え?..ああ、悪いな」 彼女は、親の遺産で慎ましく生きる俺の唯一の理解者だ。何故、俺の事を気に掛けてくれるのかはよく解らない。俺は人の気持ちというものに疎い。 幼い時に、交通事故で両親を亡くして以来、意図的に心を閉ざしている影響だろう。 七海が部屋の隣に視線を移す。 「ねえ、まだお風呂直ってないの?」 狭い部屋で実験の最終段階に入った

      • 【掌編】『コンプラ刑事』

        『『そこの君!止まりなさい!』』 パトカーの前を走るバイクの若者へ放った俺の言葉に、助手席の近藤刑事が反応した。 「おい、鈴木。今のはマズイんじゃないか?」 「え?どこがです?」 近藤刑事は呆れた様に首を振る。 「【止まりなさい!】がだよ」 「いや、他の言い方あります?」 近藤刑事は露骨にタメ息を吐く。 「【俺は止まって欲しいと思ってる】くらいの方が人権に配慮してていいんじゃないか?ヘタに強く出れば、反発されるぞ」 ここでもコンプライアンスか.. だが、暴走行為で他のドライバ

        • 【掌編】『水ばかりの惑星』

          ワタシは漁師。 たった独りで漁に出て、今日でちょうど一年。 その間、家族にも友達にも会えないけど、不思議と寂しくはない。それどころか、毎日わくわくして過ごしている。 いろんな知らない場所に行けるし、毎日、冒険してるみたいなんだ。 そんな現在のワタシの家族は、このオンボロの船と旧型のコンピューター【mj.24.25】、通称【m】だけだ。 【m】はかなり長い間、アップデートされていないから話題が古いけど、ワタシとは波長が合うみたい。 「ねえ【m】?、ちょっと場所変えた方がいいん

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        • SF/ホラー/サスペンス編
          34本
        • ドラマ/青春
          21本
        • 巨匠ミックジャギー師匠のコメディショートショート集
          40本
        • どんでん返し
          11本
        • 超短編コレクション
          16本
        • スマホを持った詩人、巨匠ミックジャギー写真集
          20本

        記事

          【掌編】『不条理すぎる朝』

          夢を見た。 亡くなった父の夢だ。 必死に私に語り掛けていたが、その内容は解らなかった。 汗だくで目覚めると、出勤時間が迫っていた。完全に遅刻だ。私は会社の上司に体調不良で遅れる旨を伝える為、スマホを手に取った。 だが、呼び出し音が鳴り続けるだけで上司は出ない。電車の中だろうか。 仕方なく、ラインで連絡をする。 少し待ってみたが、既読マークはつかない。 私は出勤する為にシャワーを浴びた。 最寄りの駅から電車に乗る。 通勤時間が少し遅れだけで、いつもの路線は人が少なかった

          【掌編】『聖戦』

          その人は、いきなり話を切り出した。 「この世界は...とても長い間...あなたの知らない所で....」 ......... 4月、強風が吹いたその日、俺は大学時代の友人Mと偶然再会した。約5年ぶりの事だ。 駅のホームを颯爽と歩いてきたMは、俺に向かい軽く手を挙げた。 「よう!」 いきなり声をかけられ、俺は戸惑いを覚えた。Mに似てる..な.. 反応の鈍い俺に、Mが笑いながら続ける。 「俺だよ、Mだよ」 「えっ、あっ、そうだよな...久しぶりだな」 何かが随分と変わった気が

          【掌編】『完璧すぎる社会』

          朝6時。 お国からボクの家のコンピューターに通知が届いた。今月のボクの全国ランキングの結果だ。 ボクの順位は48万7936位だった。 前回とほとんど一緒だ。 1位は、言うまでもなくミツヒデ君。 これでミツヒデ君は5年連続、60期続けての1位だ。 ミツヒデ君は学校の成績、リーダーシップ、クラスメートへの分け隔てない態度、親孝行、ご近所での評判など、50項目の全てが満点らしい。 お母さんはランキング画面のミツヒデ君の顔を見て、タメ息をつく。 そして、お父さんを見てこう言った。 「

          【掌編】『悪魔/天使』

          「...そうだよね、アハッ。私もそう思うよ」 これは独り言。 学校の制服を着て、スマホ片手に話すフリをしてる。そうしないと生きていけない。 友達がいないと思われたら、 周りに人が寄ってこないから。 試しに、優等生のフリをしてみる。 すると、真面目そうな同性が周りに集まってきた。 とてもつまらない人達。 家の門限があるからと、明るいうちに帰ってしまう。 生きづらさを感じる。 合わないと感じたから、優等生のフリはやめた。 思いきって、素をさらけ出してみる。 とたんに異性が

          【掌編】『2つの、食べる話』

          《1.おやつどろぼう》 なあ? アンタに、おやつどろぼうの話を聞かせてやるよ。とってもズル賢いヤツなのさ。 知らぬ間に、 子がいる家庭に入り込む。 そして疾風のように、 おやつ、を盗むんだ。 おい、アンタ。 なに笑ってるんだ? もしかして、 たかが、おやつ、 だなんて思ってるのか? そうだとしたら甘すぎる。 その考えは改めな。 ヤツに狙われた家は大変なんだ。 子供は、おやつ、にありつけない。 だから、親を嘘つき呼ばわりさ。 友達が来ても、何も無い。 親友同士でも仲違い。

          【掌編】『素敵じゃないか!』

          土曜日、早朝。 朝4時まで営業してる居酒屋から、追い立てられる様に外に出た。 「風邪ひかないでね。ありがとねぇ」 還暦を過ぎた白髪の男性店長は、疲れた様子で僕と彼女にそう言い、アルバイト2人と店の掃除を始めた。 4月の朝はまだ寒い。 小柄な彼女は赤い顔で、大きなアクビをしてから僕に言った。 「..メチャ寒いね。始発までどうする?」 最寄り駅の始発は5時05分。 あと1時間とちょっとだ。 「どうしましょうか」 「私、とりあえず温かいのが飲みたい」 「コーヒーでいいですか?

          【掌編】『素敵じゃないか!』

          【掌編】『2つの、怖い話』

          1.王国 俺には、特殊な能力がある。 そして俺は、それが当たり前だと思い、周囲に吹聴して回った少年時代に多くを学んだ。 『変わった子』のレッテルを貼られた俺の周りに、同年代の子供は寄りつかなくなった。 そこから学習した俺は、級友達を始め、両親にもその能力を隠す様になった。 だが、俺は社会に出るにつれて、能力を有効に活用し始めた。 この能力は、多くの人間を喜ばせる事ができる。 一種のシャーマンの類いだが、俺は能力について、本当の事は一切洩らさない。 だが、噂はじわじわと浸

          【掌編】『2つの、届かぬ想い』

          『1.ナオと僕の距離』 ボクシングで曖昧な距離感は危険らしい。 トコトンくっつくか、トコトン離れる。 それが闘いのセオリーなんだ。 「私の話をしてるんじゃないよ。アナタの話をしてるんだよ」 ナオはそう言って僕の目を見つめる。 彼女はある周期で僕を呼び出す。 そして不甲斐ない僕を問い詰める。 「そんな事言ったってしょうがないじゃないか」 僕の口から情けない言葉がこぼれる。 えなりかずき、のセリフみたいだなと他人事の様に思っていたら、ナオの攻撃が強まった。 「書き続け

          【掌編】『2つの、届かぬ想い』

          【掌編】『2つの、ちょっといい話』

          会社で、肩を叩かれた.. 要はリストラ要員だ。 勤続28年、全力で尽くしてきたつもりだったが.. もちろん不況の影響もあるはずだ。 誰かが犠牲にならねばいけないのだろう。 仕方ない部分も確かにある。 だが、俺には家族がいる。 ひとり娘は、まだ高校2年だ。 この歳での再就職となると.. 俺と話した上司は真摯な態度でこう告げた。 「御家族と話をしてくれないか?」 あやふやに頷くしかなかった。 会社からの帰り道、最寄り駅についた俺は、真っ直ぐ自宅に帰る気にはならず、家とは反対の

          【掌編】『2つの、ちょっといい話』

          【掌編】『シカエシ』

          2月の中旬。 外は肌を刺すような冷たい風が吹いている。 『カナラズ、シカエシ、スルカラ..』 カブリエルは強い視線で、私にそう言った.. 困惑した私は... ..... ..... ..... 半年前、私は夢を現実に変える為、5年勤めていた会社を辞めた。 プロの作家として物語を世に送りだす。 それが私の夢だった。 しかし、残業続きで疲れきり、体が常に休みを求めている状態では、それは叶わぬ夢物語でしかなかった。 だから、会社という組織の呪縛から解き放たれ、自由になっ

          【掌編】『小噺みっつ』

          【春の小噺】 春先はいつも、くしゃみが出る。 だけど花粉症ではないはずだ。 嫌がる人もいるからマスクは欠かさない。 でも、静かな場所でくしゃみが出そうになると、とても困る。 それが今だ。 平日の午前、客のまばらな純喫茶。 クラシックが薄く流れる店内で、僕は珈琲カップ片手に、くしゅ、くしゅ、と何とか音を抑える。 何度かそれを繰り返していると、僕と空席3つ分離れたカウンターの隅に座る若い女性がチラリとこちらを見た。 目が合ったので、ほんの少し頭を下げる。 すると女性が小さ

          【写真集】『TOKYOサイケデリア』

          【写真集】『TOKYOサイケデリア』