【掌編】『悪魔/天使』
「...そうだよね、アハッ。私もそう思うよ」
これは独り言。
学校の制服を着て、スマホ片手に話すフリをしてる。そうしないと生きていけない。
友達がいないと思われたら、
周りに人が寄ってこないから。
試しに、優等生のフリをしてみる。
すると、真面目そうな同性が周りに集まってきた。
とてもつまらない人達。
家の門限があるからと、明るいうちに帰ってしまう。
生きづらさを感じる。
合わないと感じたから、優等生のフリはやめた。
思いきって、素をさらけ出してみる。
とたんに異性が寄ってくる様になった。
自信満々の男子達だ。
「ねえ、俺と付き合わない?」
言われるまま付き合い、相手を貪り、味を覚えた。
これは生きてる感じがする。
本能のままに行動するのが合ってる気がする。
だから、これからは相手に媚びない。
黙って向こうから寄ってくるのを待つ。
そして最近、同じ考えの仲間が集まる場所を知った。
とある公園で、間隔を空けて立ち、相手を待つのだ。
そこに吸い寄せられる様に男が集まってくる。
光に集まる蛾みたいな連中。
あまりに簡単だ。
だから毎日、その公園で待つことにした。
今も、暗がりで相手を待つ。
スマホ片手に話すフリをしながら。
「..そうそう!超ウケるよねぇ!」
すると..
来た、来た、来た..
爛々とした目付きで。
次々と寄ってくるよ、
美味しそうな、エサが..
人間のフリをするだけで..
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ねえ、みんな。
天使って、いると思う?
判らない?
そう..
じゃあ、悪魔はいると思う?
ふーん..
結構、いると思ってる人が多いんだね。
何でだろう?
もしかしたら、毎日、凶悪な事件をニュースで見せられてる影響かも知れないね。
それで、『これは悪魔がやらせたんだ』なんて思ってるのかな?
そう。確かに悪魔は存在するよ。
でも、天使も存在するの。
何で判るのって?
だって、ワタシが天使だからだよ。
ホントだってば(笑)
まあ、別に信じてくれなくても、ワタシは損しないからいいけどね。
でも、ワタシは本気でみんなの事を心配してるから、ちょっとだけでいいから話を聞いて欲しい。
実はワタシの他にも、天使っていっぱいいるんだ。
でも、普通の人間にはまず見つからないはず。
それには秘密があるの。
今日は特別に教えてあげる。
あのね、人間の頭の上にはそれぞれアンテナが付いてるの。
いや、アンテナみたいなのが頭から生えてる、って言い方が正しいかな。
そして、そのアンテナに、ワタシ達を感知できなくする装置みたいなのが付いてるの。
だから人間にはワタシ達の姿が見えないんだ。
え、アンテナの形?
それは、人それぞれで形も色もバラバラだよ。
まさに十人十色!
とっても綺麗な色をしたアンテナの人間もいるし、真っ黒でキモチの悪いアンテナの人間もいるの。
そういう黒いアンテナは悪魔を引き寄せるから、みんなも気をつけて欲しいんだ。
基本的に、濁ってる色に天使は近寄れない。
そして最近、少しずつだけど、ワタシ達が近寄れない人間が増えてるの。
アンテナの色が濁ってる人間が増えてきてるんだ。
ここまで聞いてくれてる人はもう判ったと思うけど、アンテナの色って、その人間の心の状態が反映されるの。
前向きな人間のアンテナの色は綺麗で、
歪んでる人間のアンテナの色は濁る。
とってもシンプルなの。
ワタシにも、今の人間世界は複雑で難しいっていうのは理解できる。
それでも毎日、少しずつでいいから良い選択を続けて欲しいの。
ほんの少しずつでいいから、正しい道を選んで欲しいんだ。
そしたら、みんなの想いが重なって、少しずつ世界は明るくなっていくはずだから。
あ..
なんか、ちょっと説教っぽくなっちゃったな。
じゃあ、最後に天使の笑い話をひとつ!
みんなも知ってる通り、天使って、他人だった人間同士を恋人にするのが仕事なのね。
でも、ワタシはまだ修行中の見習いみたいな感じだから、たまにイタズラしたくなるの。
天使なんだけど、ちょっとだけ悪魔になってさ。
それで、自分でくっつけた幸せそうなカップルを無理やり引き離してみたの。
でも、人間の愛の力って凄いのね!
そのカップル、ワタシの悪魔的なイタズラに逆らって、また幸せな恋人同士に戻ったの。
そして、前よりもずっと幸せそうにしてる。
その時、ワタシはこう思ったの..
あ~あ、結局、ワタシは悪魔でも天使かって。
結局、ワタシは、あくまでも天使か..
なんてね!
サポートされたいなぁ..