上 / UeKko

ここには好きに書き散らしたいときに来ます。 普段は絵と文章にまつわることを雑多にやって…

上 / UeKko

ここには好きに書き散らしたいときに来ます。 普段は絵と文章にまつわることを雑多にやっています。

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小説「魔女のシチュー」

 五月にしてはまだ冷えるものの、陽が長くなってきた。自分の影を手押し車で轢きながら、ゆっくりと化生の口紅は歩いていく。  化生の口紅は齢百十一の魔女だ。魔女にとって老いが意味するのは「老練」でしかなく、本来関節や視力の支障とは無縁である。それでも、口紅は地面を確かめるようにゆっくりと歩く。  風が吹き抜ける住宅街は閑散としているが、家々の明かりの中でさざめく息遣いを感じる。ひっひっひ。口紅はそう笑いたくなった。魔女の自分には、家庭の温かさなど理解できないとでも言うように。  

    • Donation Records | The Devil's Disciple

      ■First A portion of the sales from The Devil's Disciple collection will be donated to child support groups. I promise to donate at least 20% of them, excluding gas fees. As long as the donation is less than 1000 JPY, it will be kept by me.

      • あくまのでし | 寄付の記録

        ■はじめに  NFTコレクション「あくまのでし」の売上の一部は、児童サポート団体に寄付されます。  ガス代を除いて、最低でも約20%の寄付をお約束いたします。寄付金が1000円に満たないうちは、私UeKkoの元で保管されます。 ■寄付の記録 22.02.14 … 3点お買い上げ (計 0.011ETH) 22.02.17 … ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン にいがたハウスへ 3000円 22.02.20 …1点お買い上げ (計 0.003ET

        • あくまのでし | The Devil's Disciple

           「あくまのでし」は悪魔に弟子入りした魔術師の男の子の物語です。 "The Devil's Disciple" is a story of a magician boy who became a disciple of the devil.  “あくまのでし / The Devil’s Disciple” -2017.09.09  2017年9月、私は無意識に絵を描いていました。気がつくとパソコンの画面の中に、かわいい男の子と悪魔がいたのです。 In September

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        小説「魔女のシチュー」

          宝くじ恐怖症の話

           宝くじ恐怖症なんて馬鹿馬鹿しいものを克服したいとたまに思う。  宝くじ恐怖症とはなにか?それは宝くじに対する恐怖症である。多くの人は宝くじが当選したときのことを想像すると、どちらかといえば快活な気分になるだろう。私は逆だ。当選したときのことを考えているうちに、どんどん嫌な想像が膨らみ、動悸と吐き気とが止まらなくなるのである。  馬鹿馬鹿しい!買ってもいないのに。しかし家人(本人の希望でこう記す)は買っているようだ。家人は宝くじが当たったらどうするつもりか、常々私に言いき

          宝くじ恐怖症の話

          極めて非健康的に体重を10kg増やす方法

           私は166cm、50kg前後の女性だ。日によって違うものの、47kg〜52kgの間を行ったり来たりしている。一般的にやや痩せ型と言えるだろう。47kg以下になると体が冷えて仕方がないので、意識的にたくさん食べるようにしている。  身近な人がダイエットを始めた(正確に言うと、私が生まれたときから痩せようとしているが、失敗し続けている)ため、この記事を書こうと思った。わけあってその人との関係性は明かせない。  10代の頃の私はストレスを過食で発散するタイプで、長らくぽちゃっ

          極めて非健康的に体重を10kg増やす方法

          童話「たぬきの親子ときつねの親子」

           むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。毎日、おじいさんは山仕事に、おばあさんは畑仕事に行きました。  あるときおじいさんが山に行くと、そこにはこだぬきがいました。こだぬきはおじいさんを見ると、すぐににげてしまいました。おじいさんはこだぬきがひとりぼっちなことが気にかかり、こっそり後をつけてみました。するとこだぬきは、やぶの中でこぎつねと話をしていました。 「こぎつねやい、こぎつねやい。なにか食いもんをわけてくれねかい。ひもじくてたまらねが」  こぎつ

          童話「たぬきの親子ときつねの親子」

          小説「雪上の詩人」

           その時の私は、運命に翻弄された顔をしていたに違いない。  なにせ大雪警報が出ているなかで帰宅していて、三度も車が立ち往生したのだ。二度まではたまたま周りにいた人が助けてくれたが、三度めは駄目だった。すでに夜の11時を過ぎ、人気のない住宅街に入りこんだ場所だ。この住宅街に私の家はない。普段通る道が雪と消雪設備の水とで埋まっていたので、迂回するしかなかったのだ。  住宅街の入り口にはすでに、いく台かの車が停められていた。道沿いにある小さな工場の社員らが、普段から勝手に駐車してい

          小説「雪上の詩人」

          「枯葉」に新しい訳詞をつけた話

           ひんやりとした秋風が吹きだすと、不思議と切ない気分になりますね。こんなときにはシャンソンの名曲、「枯葉」が聴きたくなります。様々な歌手によって唄いつがれており、日本でも根強い人気がある曲ですね。  日本語の訳詞だと、越路吹雪さんが唄った岩谷時子訳が有名かと思います。かの中原淳一も訳詞を書いていたとは驚きです。  私は十代の頃にこの歌を習ったのですが、フランス語の発音は日本語話者にとって難しく感じました。それだけに美しく、音楽的な言語のように思ったことを記憶しております。

          「枯葉」に新しい訳詞をつけた話

          星を集めたい話

           皆さまには夢がありますか?目標とは別物の、漠然としたやつ。例えば「生身で空を飛びたい」とか、「超能力を使いたい」とか、空想的でほぼ実現不可能なもの。少なくとも、子供のころは誰しも持っていたのではないでしょうか。  私も小さいころからたくさんの夢を抱えていて、その多くは成長過程で振るいおとされてきました。しかし今でも、疲れたときなんかに湧きあがる夢がいくつかあります。  まず一つめ。交通を鎮静したい。これはアクセル・ハッケの「ちいさなちいさな王様」(那須田淳/木本栄 共訳

          星を集めたい話

          初めて買ったゲームの話

           小学3年生の夏休み。蒸し暑く、外に出ると熱い空気の中を泳いでいるみたいだった。忘れもしない、初めてゲームを買いに行った日だ。  私はそれまでテレビゲームを持ったことがなく、友達の家で数回やらせてもらっただけだった。しかもすぐ死ぬので、誰も私にコントローラーを渡したがらない。指をくわえて見ているしかなかった。  でもこれからは違う。「ぜったい大事にするから!」と再三親に頼み込んで、やっとゲームを買ってもらえることになったのだ。  今はもうなくなっているが、当時はショッピ

          初めて買ったゲームの話