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最終フェーズに向かう「避難所の衛生ストレス解決」プロジェクト 技術の人(パナソニック担当者)と防災の人(被災地支援者)に聴く今後の期待


先日公開した、「避難所の衛生ストレス問題解決」プロジェクトに関する2つの記事。

これらの記事では、プロジェクトの中で開発した、被災地で活用可能な消臭機能のあるプロダクトの試作品に関して、被災経験者のフィードバックの内容や開発にかける想いを紹介してきました。

実は今回、「避難所の衛生ストレス問題解決」プロジェクトについて、防災にまつわる活動を手がける「つなぎteおおむた」の彌永恵理(いやなが・えり)様と商品開発で必要不可欠なナノイーXをはじめ産学連携を行っているパナソニックくらしアプライアンス社 の中田隆行(なかだ・たかゆき)さんにメールインタビューを実施しました。プロジェクトに対してどのようなことを感じているのか、今後期待することなどについて、お伺いしました。


問題解決につながるアイデアに「ワクワク」する

まずは、東日本大震災の被災地で支援活動を行った経験がある彌永さんに、当プロジェクトに対する感想や今後期待することについて、お話を伺いました。

——彌永さんは、以前訪問した際、「避難所の衛生ストレス解決」プロジェクトで開発した消臭機能のあるプロダクトの試作品に対して「ワクワクする」という感想をお話されていたことが印象に残っています。彌永さんにとって、どのあたりがワクワクするポイントだったのでしょうか。

彌永:「避難所の衛生ストレス解決」プロジェクトは、防災や避難という、ともすれば重くなってしまいやすいテーマを扱っていますが、そこに携わっている人たちに悲壮感や義務感を感じないんですよね。京都工芸繊維大学をはじめ、若い方々もたくさん参画してくださって。そうした若い力が被災地の課題解決に結びつくアイデアを次々と形にする姿に、プロジェクトへの期待と驚きの気持ちが湧き上がり、「ワクワクする」という表現が私から飛び出したのだと思います。

つなぎteおおむた 彌永恵理さん

——彌永さんには、当プロジェクトが正式にスタートする以前から長く関わっていただいています。開始から現在に至るまでの動向を見てきた彌永さんだからこそ、試作品に触れたときの感動もひとしおだったのですね。

彌永:そうですね。プロジェクトのみなさんには、節目ごとにさまざまな報告をしていただいていましたから、問題解決のアイデアをお聞きするたびに「おお、こう来たか!」と驚き、感心していました。

——8月には「あれこれ無料相談所」と久留米市での災害ボランティア活動にUCI Lab.の渡辺が参加しました。9月に学生たちと訪問させていただく前のタイミングでしたが、率直にどのように感じられましたか。

彌永:お申し込みいただいた段階で「嬉しい」と、心の底から思いました。渡辺さんとは以前から親交がありましたが、お会いしたのはほんの数回ほど。たった数回の間に私を信用してくださり、お申し込みしてくださったことに対して、「自分にできることで背中を押したい」、「少しでも安心して現場に出向いていただけるようにサポートしたい」という気持ちでした。

実際に渡辺さんをお迎えし、活動に向けての対話を重ねていくうちに、被災者の声や現地の情報を、自分の中に落とし込んでいかれているな、ということが、渡辺さんの表情から分かりました。

そもそも私がこの活動を始めたのは、東日本大震災で避難者への支援活動に携わったことがきっかけです。震災直後から通い続けていた宮城県南三陸町で、地元の皆さんから「次にあなたがやることは、ここで見聞きしたことを、地元で伝えること。備えておかなければ、命を守ることはできないのだから」というお言葉をいただきました。

以来、私なりに学びを重ね、「自然災害に対する備えは、知識、物、実践力、繋がりの4つだ」と、多くの方にお伝えしてきました。今回の「あれこれ無料相談会」も、被災に際して役立つ知識と物、そして実践力を伝授するものでした。無料相談会後に、渡辺さんが「(初めての災害ボランティアで不安だったのが)少し安心しました」といってくださったのは、本当に嬉しかったですね。

——プロジェクトに対し、今後どのようなことを期待されていますか。

彌永:まずは、現場で活用できる製品の完成を一番に願っています。私自身は楽しみながらプロジェクトの過程を見守っていますが、今回のプロジェクトは避難所の未来に関わる大切な製品をつくっていると理解していますから、やはりプロジェクトの結果に対してはシビアに見ていこうと考えているのが正直なところです。

商品化されたら、すぐに購入するつもりです。そして、実際に自分で使用してみて、周囲の方からも感想をいただき、プロジェクトのみなさんに、「消費者アンケート」としてお伝えします。今後の展開、そして着地を、ワクワクで待っています。


「使用者目線」を第一に日常生活で普段使いできるものを

次に、ナノイーXをはじめ当プロジェクトの技術支援をされているパナソニックくらしアプライアンス社 の中田隆行さんにお話を伺いました。

——今回のプロジェクトに対して、改めて率直な想いと今後期待することを教えてください。


パナソニックくらしアプライアンス社 中田隆行さん(写真中央)

パナソニックくらしアプライアンス社 中田隆行様(以下、中田様):「避難所の衛生ストレス解決プロジェクト」では、日常生活の延長に避難生活があるとの考えのもと、製品開発を進めてきました。防災は防災で考えなければならないのではないかと思っていましたが、ヒアリングを通じて様々な方からお話をお聞きする中で、「普段使い」しているものでなければ、「非日常での使用」にもつながっていかないという言葉に大変納得しました。

そうした発想は、現場での声・体験をもとに考えを深めていかないと、なかなか出ないものだと感じています。我々は「日常のくらし」を中心に、製品やサービスを通じて、様々なお客様と繋がっていますが、被災現場に関する経験は少ない。既存製品に一工夫入れることで利用シーンが広がり、新しい価値提供につながる可能性があることを知る、非常に良いきっかけとなり、大変うれしく思っております。

また、京都工芸繊維大学の皆さんや渡辺さん、宮本さんにもご協力いただき、「共創デザイン」という新しい手法にチャレンジできていることも素晴らしいことだと感じております。

共創デザインとは、作る側の考えを一方的に形にするのではなく、使う側であるユーザーをパートナーとし、対話を通じてデザインを進める手法。今後、プロジェクトを通じて被災現場でのQOLを少しでも向上できるように、被災現場にも気持ちを整える場所や時間を創れるように貢献できることを期待しています。

当社が保有する空気と水の「クリーンテクノロジー」の提供を通じて、学生ならではのユニークな視点に立ったアイディアの具現化を、今後も引き続き全力でサポートしていきたいと思っております。

おわりに

つなぎteおおむたの彌永さま、パナソニックくらしアプライアンス社の中田さま、お忙しい中でメールインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました!

これからも、みなさんのご期待に応えられるよう、製品の完成までしっかりと歩みを進めていきたいと思います。今後もプロジェクトの進捗をこちらのnoteで公開していきますので、ぜひご期待ください。

(UCI Lab. 広報担当)

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