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北野武新作「首」。悪い「風雲!たけし城」。教養ある暴力喜劇。

「世界のキタノ」北野武監督の新作「首」が公開。
まずは一言。「お蔵入りにならなくて良かった。

事務所のお家騒動・分裂でお披露目が危ぶまれていた本作。一部週刊誌が報じて存在は確認できたが公開が難航。ようやくキタノ映画新作が見れるようになった訳でこれは祝福せねば。
なお、オフィス北野のサウンドロゴ(作詞:久石譲)は消滅。寂しいが仕方ない。

それでも、暴力描写とブラックジョーク満載の内容は健在で役者陣は充実。
加瀬亮の信長は「アウトレイジ ビヨンド」石原強化版みたいな奴で、バッティングセンターの刑再現を期待せずにいられない存在感だった。

改めて西島秀俊は端正な顔立ちだと思った。BL要素があるので、より美形が際立つ映りをしていた。作中一の真面目ポジション。

たけしが演じる秀吉と弟・秀長の大森南朋。
主に大森がボケ。たけしがツッコミのポジションで望遠鏡片手の本陣場面は「風雲!たけし城」のトークパートみたいだった。大森南朋がそのまんま東ポジション。で、黒田官兵衛の浅野忠信が2人をまとめるフォロー担当。

フリ=大森南朋
オチ=たけし
フォロー=浅野忠信。

笑いの三大要素「フリ・オチ・フォロー」を殺伐とした戦国時代の中に入れてくるのは流石の一言。
この悪い笑いは嫌いじゃない。三池崇史よりは品があると思う

異色のキャスティングが木村祐一。
恐らく最も観客に近い目線で物事を俯瞰して見ている人物。それで元忍者の設定なので殺陣も披露。意外な活躍。

かつて、前述の三池作品で禁忌の×姦をやった(ビジターQ)遠藤憲一は今作の可哀想な人ポジションで濃厚な濡れ場を披露(西島秀俊の胸筋!)。

久々の北野組復帰の寺島進はいぶし銀の忍で「真田丸」で演じた役そのままだが必殺仕事人ぶりが渋く格好良い。

六平直政。あのキレ演技と変顔は反則
大人げない
中村獅童は狂気のある馬鹿。勝村政信と桐谷健太のワイヤーアクション殺陣(何故?)と、演者それぞれに見せ場あり。

また、舞踊とタップダンスを取り入れる辺りが流石芸能に教養のある監督らしさだと思った(三池監督は人体の痛覚についての知見が多いと思う)。

思えば、近年のたけしは元気がなかった。
相次ぐ醜聞、安住アナとMCのニュース番組で滑舌の衰えを露呈。コロナ禍は自粛で家に籠っているとか治安悪くなるから気を付けろとかネガティブな発言が増えていた。襲撃もされた

「浅草キッド」は話題になったけど、あれは老いた自分が若き日を回想する人生の哀愁を描いたもので、この作品を見た日。丁度、番組の生放送中に降板を発表。余計に栄枯盛衰を感じたものだった。

しかしながら腐っても、衰えていない。
ここ数年出せなかった毒を作品で披露出来てる感に加え、早くも新作の構想があるというのが嬉しい。

パロディを撮りたいとの事で、コメディなら米国の「ホット・ショット」みたいなのも良いかも。2作制作され、1作目が「トップガン」、2作目が「ランボー」と共に、戦争を娯楽に落とし込んだ作品が元ネタで、今回の「首」が戦の愚かさと醜さを風刺してるのだとしたら、意外と共通要素はある。作るなら「みんな~、やってるか!」に近くなりそう。

なお「トップガン マーヴェリック」公開時についでとばかりに「ホット・ショット」2作も見返したのだが、本当にくだらない。それで画面の隅々まで必要以上にネタを仕込んでるので、うっかり流し見できなかった。気になる人はAmazonPrimeでレンタルできる。

何にせよ好きな映画作りが出来るようにまずは大ヒットを祈願したい。

最後に、クレジットに劇団ひとりの名前があったが、どこにいた?
柴田理恵は分かったのだが。

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