ことばを集めて新聞記者になった話(5)
記者の仕事は楽しかった。車を乗り回して、ありとあらゆるものを取材した。片側1車線しかない、間に細いワイヤーが張られただけの高速道路で現場に向かうとき、対向車の大型トラックとすれ違うたびに死を覚悟した。
それ以外には、身の危険を感じることはない程度に平穏で、ときどき嵐のように忙しい日が訪れた。その繰り返しだった。
僕は車の窓を全開にして田舎の道を走ることが好きだった。数十万単位のものを買うのは、その車が初めてだった。
仕事の合間を縫って温泉に足を伸ばした。いつ鳴るとも知れ