ことばを集めて新聞記者になった話(4)
多くの人がそうである以上に、僕は恋愛において不器用だった。ぶつかって、何度も絶望し、そして最後に一緒に泣いてくれた人が、いま僕の妻になっている。それは文章を書き続けることとはまた別の、険しい道だった。
でも、本を読んでわかったこともあった。「運命の出会いなどない」ということ。愛情というのは電撃のように自然発生するものではなく、育てるものだということ。そして、それは今のところ、正しい見解のように思う。
「星の王子さま」に書かれていた言葉が、僕は一番のお気に入りだ。でも、ほかにも沢山ある。恋愛に関する本を読むのは楽しかった。自分の「柄ではない」とは分かっていても、それと無縁でいられる人などいないのだ。
愛情は意識して育てないといけない。胸を張って「僕はできている」とは言うつもりはないけど、とてもためになる考え方だった。
もちろん、多少はつらい思いもした。それでも、この手の問題は、傷を負わずにいるよりは、捨て身で向き合ったほうがずっとよかった。
どんな卓越した作家が生み出した一文よりも、LINEの何気ない返信のほうが、ずっと自分の人生を揺るがすことを知った。たとえ、それがたった数文字の単語であっても。
もしかしたら、これは大学生の間に履修すべきことだったのかもしれない。ただ、僕も30歳を前にして、とても良い結婚ができた。必要な単位をなんとか取得できたみたいにーーこんな比喩をしたら、叱られてしまうかもしれない。
でも、恋愛に関する言葉はどれも、本当にすてきだった。いまでもときどき読み返しては、どうしようもなかった自分自身をこっそり思い出す。当時の僕がかき集めた言葉を読むと、古いかさぶたをちょっと剥がした感じがする。そして、あぁ自分にも血が流れているんだなと確認する。
僕も、こんなに愚かだった。そして僕以外の人間も、みんな愚かなのだった。
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