夜、街頭に照らされた樹が美しくて
それだけで、なんだか得した気分になる。木のシルエットを、暖かみのある
光がぼんやりと縁取っていた。
僕は帰りに立ち寄ったスーパーでシシャモと惣菜を買って、家に帰ってから何をしようか考えていた。たくさんのスーツ姿の人たちとすれ違った。誰かと喋ったり、スマホを操作したりしていた。「都会の夜空に見るべきものなどない」と決めつけているような姿だった。
こういう瞬間に、つい、以前の職場で忙殺されていた時期を思い出してしまう。本を楽しむ余裕がなくなり、やがて肌や嗅覚で感じる季節の変化