びす男

30歳の男。元記者。これまで小説などを中心に1200冊以上を読んできました。 旅行記の…

びす男

30歳の男。元記者。これまで小説などを中心に1200冊以上を読んできました。 旅行記のほか、主に「読書メーター」で登録した250字の感想文をそのまま転載します。 大学生時代の書評ブログ 「本と6ペンス」 http://niksa1020book.blog.fc2.com/

マガジン

  • 散文

    エッセイです。いい文章を書くために、思ったことを書き散らしています。

  • モルディブ・リッツ滞在記

    モルディブ新婚旅行の記録です。写真、楽しんだこと、考えたこと……など。連載形式で、随時更新。

  • 読書感想

    読んだ本の感想。主に読書メーターから転載。たまに長いものも。

最近の記事

  • 固定された記事

モルディブ・リッツ滞在記1【最高】

見惚れてしまう景色だった。 「青い空、青い海」という表現が、オーソドックスで端的かもしれない。しかし、そこに広がる青はさまざまで、豊かだった。 浅瀬の白っぽい青、その奥で帯状にたゆたう鮮やかな青、遠方に見渡せる深みのある青……。それらが一瞬ごとに色を変え、日の光を照り返し、表情を変えてゆく。 風もよどみなく、爽やかだった。日差しは強いが、日陰に入れば暑さを感じない。水平線をぼんやり眺めていると、自然と心も平らかになってゆく。 ソファに座って伸びをした。長旅の疲れが景色

    • 20240407春のにおい

      「春の匂いがする」と、つい先日、会社の若手が言っていた。 きょう朝起きて居間の窓を開いたとき、僕も春の匂いが部屋のなかに流れ込んでくるのを感じた。湿り気と、暖かくなる予感と、少しの埃っぽさ。 春の匂いがするとはいっても、正直なところまだ若干肌寒い。もう少し暖かくなればと思いもするが、最近は気温は一気に上がるものだから、望むべくもないのかもしれない。気がついたら酷暑に見舞われて、冬が恋しくなっている自分の姿が思い浮かぶ。 今週は土曜日も日曜日も予定がなくて、家でだらだらし

      • 20240406散漫な文章

        趣味で小説が書けるようになりたいと思っている。思ってから、どれくらい経つだろう。 子供の頃の夢はプロ野球選手か、小説家だった。野球のほうは無理だなと早々にわかったものの、幸か不幸か、新聞記者からはじまり、いまだに文章を書く仕事は続けている。 小説を書けるようになりたい。この世に小説を書ける人間/書けない人間がいるなかで、自分は書ける側でありたいなと考えている。 それは「小説家になりたい」という願望とはちょっと違う。自分が終生上機嫌で生きていくには、自分で小説を書けるよう

        • モルディブ・リッツ滞在記10【海とサメ】

          ※先にことわっておくと、僕らはサメとは触れあわなかった。モルディブでは人気のアクティビティのようだったが……。 絶えず僕らを魅了し続ける、鮮やかな海に入ろうと思った。 バトラーが送ってくれた案内をざっと見てみる。マリンアクティビティも、シュノーケリングのツアーを含めて多数揃っていた。 ただ、豊富なメニューのなかにひとつ、ギョッとするものが。 正式な名前は失念したが、「シャークなんとか」とかいう、縁起でもない名前であった。 写真を見ると、海の深そうなところで、旅行客が

        • 固定された記事

        モルディブ・リッツ滞在記1【最高】

        マガジン

        • 散文
          2本
        • モルディブ・リッツ滞在記
          10本
        • 読書感想
          34本

        記事

          モルディブ・リッツ滞在記9【星空】

          ▽パーティーに参加 カクテルパーティーに招待された。 それ、タダ?という不躾な質問に、バトラーは「タダ(complimentary)だよ」と即答してくれた。ならば参加しない手はない。 僕らは多少着飾って出かけた。こんなケチな宿泊客でも、スタッフがバギーで送迎してくれる。 パーティー会場は海岸に面した広場。日没を眺めながらシャンパンと軽食を楽しめた。 写真を沢山撮ってぼんやりしていると、女性スタッフが「アラベスクには行きましたか」と声を掛けてくれた。 アラベスクは、

          モルディブ・リッツ滞在記9【星空】

          モルディブ・リッツ滞在記8【名医ヤブー】

          ▽不都合なケガ ガラにもなく、はしゃぎ過ぎたのだろうか。 到着してすぐ部屋の中を眺めて回っているとき、右足の親指を軽くケガしてしまった。扉の隙間に指を挟んでしまったのである。 単純な切り傷・擦り傷と言うには少々深かったこともあり、僕はたまたま鞄の中にあった最強の絆創膏「キズパワーパッド」を貼った。日本の素人の応急処置というのは、9割方はこんなものであろう。 しかし、ここはモルディブ。次はいつ来られるかわからない。楽しみ尽くして帰りたい。 やりたいことがたくさんある中

          モルディブ・リッツ滞在記8【名医ヤブー】

          読書感想-正欲(朝井リョウ)

          人は、「分かってほしい」と「分かられてたまるか」のはざまで生きている ■性的欲求、それは思考の根源にあり、もっとも密かな場所に隠れている。マイノリティ・多様性の看板が光を浴びるほど、闇は濃くなる ■性的欲求が普通とは異なる人たちの物語だ。ただ、この本を読むと、「普通ってなんだ」という気持ちになる ■境界は薄れ、消える。「相互理解」という美辞麗句への絶望が生まれる ■人と人との間は「良い誤解と悪い誤解しか存在しない」という言葉を思い出す。ただひとつの共通点は、「僕らは生

          読書感想-正欲(朝井リョウ)

          モルディブ・リッツ滞在記7【もうひとつの島】

          ▽うやうやしい挨拶 部屋で一息ついてから、島内を散策してみた。 もちろん、どこをどう切り取っても画になるのだが……ブランコや大きなチェスなど、明らかに撮影向きのスポットもいくつかあった。 僕らも撮ってみる。 おぉ。見事な出来映え。 旅行に合わせて、携帯をiPhoneに替えてよかった。旅の記録には欠かせない、心強い助手である。 リッツのスタッフたちは、庭師や改修工事の作業員に至るまで、ゲストが通るたびに胸に手を当てて、小さくお辞儀をしてくれる。 まるで王様に対する

          モルディブ・リッツ滞在記7【もうひとつの島】

          モルディブ・リッツ滞在記6【到着】

          ▽歓迎の音 僕らを乗せた船は、小さな出島のような場所に横付けされた。 ”Arrival Pontoon”という場所で、ゲストを迎える桟橋だった。下船すると、スタッフがおしぼりと爽やかな味のジュースをくれた。 飲み干して気持ちを落ち着かせて前をみると、桟橋が島のほうへと伸びている。 周りは美しい水色の浅瀬だ。あぁ、今すぐにでも飛び込みたい。 もう一組の夫婦が、先に島の方へと歩いていった。橋の中ほどに立つ男性スタッフが大きな貝を口元に構え、ぼおおお、と吹いた。歓迎の合図

          モルディブ・リッツ滞在記6【到着】

          読書感想-アキラとあきら(池井戸潤)

          面白かった。分厚かったが一気読み ■父の工場が潰れて家を追われた山崎瑛と、郵船を柱とする一族系企業の御曹司として生まれた階堂彬。二人は同じ銀行に就職し、出色の活躍をする ■生い立ちは正反対だが、2人のアキラは結構似ている。ライバルではなく、むしろ手を携え、困難に立ち向かうのが新鮮だ ■親族が反目しあい、階堂の家業は傾いてゆく。その様子も興味深い。なぜ会社は沈むのか。なぜ経営判断は誤るのか。学ぶことの多い小説でもあった ■「カネは人のために貸せ」の哲学で、取引先の企業を

          読書感想-アキラとあきら(池井戸潤)

          モルディブ・リッツ滞在記5【リゾートへ】

          ▽プライベートボート 空港からリッツ・カールトンまでは、スピードボートで約50分かかる。乗客は僕たち夫婦と、もう一組、おそらく中国から来た夫婦だけだった。 たった50分間の移動、しかしリゾートの体験はここから始まっている。 船室は、小さなテーブルをソファが囲んでいる。完全なプライベート仕様に、否応なくテンションが上がる。 提供された軽食には、おなじみのライオンのロゴが入っていた。 そして出航。 ボートが白波を巻き上げて加速してゆく。妻が大喜びではしゃぎ、写真を撮り

          モルディブ・リッツ滞在記5【リゾートへ】

          モルディブ・リッツ滞在記4【シティホテル】

          ▽思わぬ連携 モルディブのリッツでは本来、到着便に合わせてプライベートボートが用意される。 ただ前述の通り、僕たちは到着時間が遅かったのでマレのシティホテルで前泊した。 宿泊先はBooking.comで見つけた"Amina Residency"。リッツの系列でもなんでもない宿だが、驚いたことに、事前に連絡を取り合ってくれていた。 「朝8時半に空港に行けますか。プライベートボートはその後に出発しますから」 マレ国際空港に着いた夜、チェックインをする僕たちにフロントが確

          モルディブ・リッツ滞在記4【シティホテル】

          読書感想-生物はなぜ死ぬのか(小林武彦)

          タイトルの大風呂敷にロマンを感じて購入した。人間を生物としてとらえ、誕生、老い、死の意義を問い直すのが面白かった ■説明は親切に噛み砕かれていた。「食べられて死ぬ(捕食される)か、食べられなくなって死ぬ(飢える)か」という分類の仕方も興味深い ■もはや捕食されることの少ない人間も、後進にはその場所を譲らなくてはいけない。多様性を積み上げることが、個体ではなく、生命のバトンを未来に繋ぐために不可欠だからだ ■最後は「死なない存在」としてのAIに言及。個人的には、この箇所は

          読書感想-生物はなぜ死ぬのか(小林武彦)

          モルディブ・リッツ滞在記3【マレ前泊】

          ▽マレ モルディブの首都・マレに着いた。時刻は夜8時前。 マレ国際空港は、実際は首都の隣の島に位置する。「ヴェラナ国際空港」とも呼ばれ、飛行機の予約ではこちらの名称が使われることもある。 無事に荷物を見つけ、1泊目は首都にある安めのホテルで過ごす。リゾートは時間いっぱい楽しみたいので、翌朝から滞在する旅程を組んでいた。 空港を出ると、目の前に海が広がり、船がいくつか待機していた。空港から首都への移動は、すなわち島から島への移動になる。 今でこそ大きな橋が架かり、タク

          モルディブ・リッツ滞在記3【マレ前泊】

          モルディブ・リッツ滞在記2【フライト】

          ▽フライト11時間 モルディブは、日本から計約11時間のフライトで着く。 9時間余でスリランカの首都・コロンボのバンダラナイケ国際空港に到着し、そこで乗り継ぎ、さらに1時間半ほど。インドの南端からさらに南西の洋上に位置している。 1200近い島々が集まり、まさに「観光立国」を体現したような国だ。「1島1リゾート計画」なる計画もあるらしく、すでに140島超がリゾート化されているらしい。 ひとまず旅程を追っていく。 午前に成田空港を発ち、コロンボへと向かう。もちろんパスポ

          モルディブ・リッツ滞在記2【フライト】

          読書感想-橋を渡る(吉田修一)

          読書感想-橋を渡る(吉田修一)