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13_人が増える。社長はどうする?

▼今回のテーマを読んでほしい方
・ミドルマネジメントの育成に課題を感じている経営者
・社員数が増えて、目が行き届かなくなってきたと感じる経営者
・マネジメントに追われ、重要なタスクに時間が十分に取れない方
・スタートアップやベンチャー企業で管理職に従事している方



1.社長のジレンマ


今回は、組織開発に関するエントリーです。
前回、『個人がチームに変わるとき』というテーマで、
一人社長から組織へ変わる過程での重要ポイントを書きました。
今回は、さらに組織が大きくなった時のことを書きます。

(1)「〇人の壁」はなぜ起こる?

巷では「社員数〇人の壁…」と言われます。
まるで人数に対して「障壁」があるかのように表現です。
確かに、売上規模と人数が増えるにつれて、
組織が分かれていき、社長の目が行き届きづらくなるのは事実です。

と、同時に社長にとって「意思決定」の難度は、
人数の増加以上に、加速度的に上昇します。

事業に関わる利害関係者、つまり「ステークホルダー」が増えるためです。
ほぼ自分の判断で決められていたことが、
対外的、そして組織の全体最適という要素が加わります。

組織のリーダーとして、「決めること」を求められる一方で、
独断的な意思決定や振る舞いをすれば、人心が離れていきます。

つまり人が増えていくこと自体に壁があるわけではなく、
人が増えたときに、最適なジャッジをし続けなければいけない。
ここに難しさがあると思うのです。

実際は、様々な制約下で全員が100%満足する意思決定を下し続けることは、極めて難しいです。しかし目指す努力は続けなければいけない。

そのように経営の舵取りが難しくなる中で、
各部門のリーダー層のマネジメントも徐々に重たくなっていきます。
結果、「本来やりたいことに着手できない」というジレンマを抱える。
この状況に陥る組織は非常に多いです。

この状況から抜け出すためには、
組織を自分の代わりに判断を任せても大丈夫なレベルにすること
つまり「ミドルリーダーの育成」を如何に進めていけるかが課題になります。

(2)ショートカットは可能か

「そんなこと改めて言われなくてもわかっているし、既に取り組んでいる」

こういう声が聞こえそうですし、その通りだと思います。
実際にミドルリーダーの育成に着手している組織は多いと思います。
資金の調達がうまくいっているようであれば、

・外部からプロのコンサルやコーチを招へいする。
・CXOなどのエグゼクティブ採用や人材紹介を利用する。

こうしたショートカット的な手段もとれるかもしれません。
ただ最も忘れてはいけない、そして大事にしなくてはいけないことは、
組織として「自律性」を育てることです。

優秀なアドバイザーや顧問がジョインし、
自分の代わりにチームやリーダーを育ててくれて、
どんどんソリューションをしてくれれば、確かに楽です。
ただし、その人がいなくなれば、簡単に元に戻ってしまいますし、
戦闘力も大きくダウンします。

重要なのは、自分たちでできるようになること。
もし外部に助力を求めるならば、求めるのは「伴走」であることです。

もっと高次な言い方をすれば、
社長があれやこれやと指示をしなくても、
サービスの質が損なわれず、不正が行われず、
そして自発的に改善がなされていく、
つまり「自浄作用」が働くようにすること
です。

もし採用の方面で、良い方が採用ができたとしても、
その人とのエンゲージメント構築のほうが重要になりますから、
任せておけば安心。ということにはなりません。

つまりショートカットのように一足飛びできる方法はありません。
ただし組織と、そしてリーダーの能力を着実に伸ばすために、
実行できることは確実にあります。
次の項でもう少し踏み込んで書いてみます。

2.ミドルリーダーをどう育成するか


(1)個人の志と会社のビジョンがリンクしていること

これは「前提」と言っても良いです。
スタートアップやベンチャー企業に就職(もしくは転職)し、
リーダーなどの管理職をされている方であれば、
「志」や「ビジョン」を持っている方も多いと思います。

人の力が最も発揮されるのは、個人と会社のビジョンの一致。
平たく言えば、「Win-Winの状態が作れているとき」です。

それは面接や入社オリエンの時に聞いていますよ。
という方もいるかもしれません。

しかし状況によって経営判断が変わるのと同様、
タイミング、出来事、誰かの言葉などによって、
心が移ろっていくのも人間です。

あの時は、君はこう言ってたじゃないか
と後になって言っても通用しないことは、普通にあります。
ゆえに定期的な棚卸が必要なのです。

・貴方が成しえたいと思っていることは何か(≒ミッション)。
・今の組織・仕事がその未来にどう活かせるのか(≒ビジョン)
・そのためにどのような振舞いや人間性を身に着けるべきか(≒バリュー)

この3点は、その組織で「働く動機そのもの」になります。

「組織のMVV」を設定しているところも多いですが、
「個人のMVV」もしっかり明確化すること、そして
定期的(※)にリンクをし直すことが大事です。
(※目安としては半期に一度程度)

そして、これらの活動をリーダー陣に対しても、
チームメンバーへ実施するように徹底することが必要です。

(2)「なにをまかせているのか」を明確にする

「具体的な職務内容」を言語化できる人は沢山いますが
〇〇さんにまかせているミッションは具体的に何ですか?
と聞いたときに、明確に答えられる社長は、思ったよりも少ないものです。

社長が答えられなければ、リーダーたちも自分のミッションを
正確に答えることは難しいです。

特に小規模な組織であれば、マルチタスクや兼務が基本です。
なにか1つのことに集中していればいいというのはレアケースです。
KPIも整理が追い付かないほど大量にでてきます。

人間はマルチタスクになればなるほど、処理能力が下がります。
処理能力が落ちていくと、どんなに優秀でベースの能力が高い人でも、
思考力も落ちていきます。

そうならざるを得ない状況もあると思いますが、これが慢性化すると、
なんのためにやっているんだっけ?」と黄色信号が頭の中に点滅してしまいます。

なので(1)のことも大事なのですが、そこにプラスして、
貴方に「任せていることミッションはなにか」を常に明確にして
伝えつづけることです。

こういうと「目標や評価」の話へシフトすることも多いのですが
これは成果責任とは別個で、任せる側が明確に言語化してほしいのです。

レンガを積んでいるのか、城を創っているのか
というわかりやすい例えがあります。

業務上の目標を設定し、評価を正しくすることに加えて、
その先に「目的」が存在していることが大切です。
こと若い組織の場合は、そのための道程を自分たちで
整備していかねばいけないことも多いです。

なので社長自身の口で、「一緒に組織を創ってほしいのだ」と、
できうる限り根気強く伝えることが必要になるのです。

(3)口出ししたい。が、こらえる。

経営者は、優秀です。
不明確や不正確な言動については、
人一倍敏感に気づく方も多いでしょう。

限られた時間の中で、効率的な会話を行い、
かつ自分と同じように考えて成果を出してほしい、と求めていくと、

・なぜそのような判断を下したのか。
・未達についてはどのようにリカバリーするつもりか。
・なぜやるといったことを、やれなかったのか。次はどうするのか。
・チームの達成状況や行動管理は、しっかりできているのか。

上記のような、いわゆる「詰めのコミュニケーション」が増えていきます。マイクロマネジメント=絶対に悪だというつもりはありません。
もちろん、このような矯正が必要な場面も多々あるかと思います。

ただ、毎度毎度このようなコミュニケーションスタイルになってしまうと
育成を通り越えて、「萎縮」を招く可能性が高くなります。
萎縮」は、相手の発想や自発性を奪います。

本来は、
「ユーザーやクライアントの満足のために仕事をする」ことが
「指摘や叱責を受けないために仕事をする」
と健全ではない目的へと変わってしまいます。

とはいえ、
「まるきり任せるのは、まだ不安すぎる」
「何も言わないというのも違うだろう」
という声があるのもわかります。

なので、「口出しをする基準」を決めておくことです。
例えば「顧客満足を損なうこと」や「行動基準やルールを逸脱したとき」などです。

自発性をもとめる一方で、でてきた判断や施策に対して、
「それはやれ」、「それはやるな」と逐一判断を下したいときも
あるかと思います。

しかし、それは(2)のミッションに基づいて、
「迷ったらすぐに相談してくれ」と言うに留めておいてもよく、

組織としての規範やルールを逸脱しそうなこと、
顧客満足への影響などの想定が十分に吟味されていないことに対しては、
しっかりと指摘をして諫める。このメリハリが大事です。

これをリーダー陣からチームメンバーに対しても徹底するよう
求めつづけることで、組織全体に適切な緊張感を生み、
基準が固まることにもなっていきます。

すごくツッコミたいけど、ぐっと我慢をして一歩引いて見守る。
というバランスをとることも、育成には必要なのです。

(4)「準備徹底」をカルチャーに加える

最後は、個人的におすすめしていることです。
準備を徹底させることです。

先に述べた通り、マネジメント育成を通じて育むべきは
個人の力というよりは「組織としての自律性」です。

組織として自律的に動くためには
メンバーが目的意識を持ち、可能性を考えて、先回りして動く」
という癖付けをすることです。

そして「事前準備をする」ことは、
「パターンを想定をしておく」訓練になります。

特定の部門、例えばセールスであれば、顧客折衝や根回しなどが
必要な場面が多いため得意かもしれません。
しかし一部ではなく組織全体で徹底させることが必要です。

例えば会議などではよくある場面ですが
・何も発言しない、参加姿勢がない人がいる(特にオンライン会議など)
・論点が未設定のまま、相手に時間をもらいたいと打診している。
・その場で決めきれない議論テーマを出して、終わりの時間が伸びる。
・毎回、振り返りとすり合わせで時間を長く使う
などです。

この状況を許してしまうことは、組織として効果的ではありません。
とはいえ、「準備を徹底しなさい」と言われると、
それはやらされていることになってしまいます。
なのでリーダー自身や同士で、どうあるべきかを話し合う時間や
それを実践に移すことも有効です。

事前準備が、成否の8割を決めているともいわれます。
これらが少しずつ組織に浸透していくと
プロジェクトの進行、定例会議、商談などの様々な場面で、
進行や効率が大きく変わっていくはずです。

具体策として、是非検討をしてみてください

3.終わりに


今回は、組織、特にリーダーの育成にフォーカスした内容でした。

いわゆる組織の育成論・方法論は、
多くの先人によって科学され、体系化されて、世に存在します。

なので筆者が上に挙げたこと以外にも、
もっと良い方法はたくさんあるだろうと思います。

しかし一番大事だと思うことは、
敬意と感謝を持ち、メンバーに本気で接する」ということです。

社長(経営層)とメンバーでは、「時間の重み」が違います。
それは、「創業社長が偉いから」ということではありません。

背負う責任が違うからです。

社長の経営判断一つで、事業と組織の未来は
簡単に変わってしまいます。

そのために、社長は全身全霊で事業に挑みつつも、
常に余白を残しておく努力をする必要があるのです。

ただ事業と組織が大きくなる過程で、自分は偉くなったと思い、
メンバー、時には対外的にも、高圧的な接し方に変わる方もいます。
それでは事業も組織も、いずれどこかで頭打ちになります

そうではなく自分が、組織や事業の未来を決める重要な決断をするために、
自分の代わりに、任せられる存在がいること。
そこに報いることを、一つの使命として持っておく必要があります。

給与などの待遇の面ももちろん大切です。
ただキャリアの転換が当たり前になった今でいえば
この組織で働いていることが、自分の大きな礎となっている
とメンバーが思えるように「物心両面の幸せ」をつくることに対して
本気で接していかなければ、
人心をつかみ、組織を大きくすることはでません。

そのためには、社長が誰よりもリーダーやメンバーへ敬意と感謝を
することが何よりも大事だと思うのです。

今回は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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