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テレビの未来のために、先を見据え動いていきたい。放送コンテンツの新たな“届け方”の実現へ〜/取締役 事業戦略担当兼コミュニケーション戦略室長 須賀インタビュー

TVer」は、視聴者と各放送局をつなぐハブとして機能し、新しいテレビの楽しみ方を提供するプラットフォーマーとなることを目指しています。

在京民放5社・在阪民放5社・広告会社4社が共同で出資する株式会社TVer。その経緯もあり、さまざまなステークホルダーとともに、業界全体を変える取り組みを行ってきました。

今、サービスをより成長させていくために注力していることのひとつに「ローカル局との連携」があります。この施策をリードする取締役 事業戦略担当の須賀は、TVerに、サービス立ち上げから携わってきました。

そんな須賀に、ローカル局との連携から見える今後のTVerの可能性や、TVerがテレビのDX化を担う存在として目指す未来について聞きました。

■プロフィール
取締役 事業戦略担当 兼 コミュニケーション戦略室長:須賀 久彌
1996年、株式会社電通入社。データ放送事業、放送局担当などを経て、2006年に株式会社TVerの前身となる株式会社プレゼントキャストに出向。2008年代表取締役社長に就任。TVerの立ち上げに携わる。電通へ帰任後、2020年に再出向して現職。


「TVer」立ち上げから現在まで、事業の最大化がミッション

——須賀さんは、広告会社の電通出身だと聞きました。これまでの経歴を教えてください。

株式会社電通に入社後、社内システム部門を経て、4年ほどメディア・コンテンツ計画局でデータ放送に関わり、新事業の立上げなどに携わりました。

その後、テレビ広告を扱うテレビ局という部署に異動したのですが、純粋に広告に関する仕事に関わった経験はこの3年間のみかもしれないですね。広告会社に入社した人間のキャリアとしては珍しいかもしれません。

2006年、TVer社の前身となるプレゼントキャストの立上げに関わり、設立とほぼ同時に出向となり、2008年6月からは9年半、代表取締役社長も務めました。2015年のTVerの立ち上げにも関わっています。

その後、電通に2年半帰任したのち、2020年にプレゼントキャストからTVerへと社名変更したタイミングで、取締役 事業戦略担当として再び事業に関わっています。

——広告会社出身でありながら、放送業界にも長く携わってきた経験からTVerの立ち上げに参画することとなった経緯を教えてください。

ちょっと話しが長くなりますが、プレゼントキャスト設立のタイミングで自分から出向を希望して出向することになりました。
データ放送の事業に携わっていたときに、社内ベンチャー企業の設立を間近に見ていた経験があり、次にチャンスがあればと思っていたんです。

プレゼントキャストの設立作業に関わり「こんなチャンスは滅多にない」と思い、真っ先に手を挙げました。

そこから、TVerが立ち上がるまでには10年ぐらいありまして、DOGATCH(のちのテレビドガッチ、現TVerプラス)やgorin.jp、らじる★らじるなどのサービスに関わりました。
民放各社と様々な仕事を経験を積み重ねる中で、TVerの立ち上げにも参画できた感じですね。

TVerはもちろん、どのサービスも、立ち上げて、育てていくのは「どのようなサービスにするか?」「どのような仕組みのビジネスにするか?」など事業会社の一員としてサービスをゼロから考え形にできます。

それぞれのサービス一つひとつに思い入れもあり、その時々でワクワク感を味わいました。
きっかけになったという意味では、プレゼントキャストの設立に関われたことがよかったなと思います。

——TVerでの現在のミッションを聞かせてください。

現在の私のミッションをざっくりと表現すると「TVerの成功のために、未来のことを考え、実行する」ことです。

再出向して最初の1年はマーケティング領域を管掌していましたが、現在は事業戦略担当として、短期的な目標やKPIを追いかけるというよりは、中長期的な目線でTVerの事業を考えることが私の役割です。

たとえば、ステークホルダーとの中長期的な関係構築や、のちのち課題になりそうな懸念材料に対して先回りして手を打つことなど、言ってしまえば「TVerの未来のために必要なことはすべてやる」のがミッションですね。

2023年4月からは、コミュニケーション戦略室の室長も兼務し、社内外における情報発信や連携も担っています。

ローカル局との連携で、地域の活性化につながる事例も

——現在、TVerが注力していることのひとつが「ローカル局との連携」です。どのような背景から始まったのでしょうか?

私たちが実現したいのは、テレビというサービスを進化させること。今まで電波に乗せてリアルタイムに放映するサービスをテレビと呼んでいました。

このテレビが、周辺環境の変化によって、視聴者からも広告主からも使い勝手が悪い、と思われるようになってきてしまったと考えています。
時代と世の中のニーズに合わせ、インターネット配信の力も使って、テレビというサービスを、放送と配信がミックスされたものに進化させたいと思っています。

一方で、現状、TVerで配信しているコンテンツが、東京と大阪の民放キー局で制作された番組が中心であることもあり、この考え方は、ローカル局の方々の中には、自分たちが置いてきぼりになってしまうのでは?と不安を感じる方もいると思っています。

ただ、今後、TVerが業界全体を巻き込んで変革を起こしていくには、ローカル局も巻き込んでいくことが必要不可欠だと考えています。

——ローカル局との連携は、どのように進めているのでしょうか。

まずは全国のローカル各局を訪問し、積極的に意見交換の場を持つことから始めています。

先ほどもお話ししたように、TVerや放送局のSVODのサービスが充実してきて、放送ネットワークの中心であるキー局が、インターネット配信によっていつでもどこでもコンテンツを届けられるようになることで「相対的にローカル局の存在感が弱まってしまうのでは」と、危機感を持つローカル局の方々は少なくありません。

TVerの存在が、ローカル局の方々にとっては「脅威」だと捉えられてしまう側面もあります。

なのですが、実は、TVerだけでなく、さまざまな動画プラットフォームが台頭していて、テレビ番組以外のコンテンツを見る人、テレビ受像機でそれらの動画コンテンツを見る人がが増えてきています。

TVerだけではないどころか、もっと大きなサービスもあり、業界として、視聴者に向き合って、放送コンテンツがきちんと見られる環境を再構築することが必要だ、と知っていただく活動をしています。

「キー局とローカル局が対立するのではなく、ともにテレビ全体の進化へ取り組むために連携していきたい」

毎回、ローカル局の方々にはそのようなメッセージをお伝えしたうえで、各社の思いを聞かせていただいています。

自局の番組をインターネット配信することに対して、現時点では慎重な方々もいらっしゃいます。

しかしその一方で、番組を放送エリア外に届けたいと、熱い気持ちをお持ちの方も想像以上に多いこともわかりました。

——実際に、最近ではローカル局の配信事例も増えてきましたね。

現在、約70局のローカル局がレギュラー番組を配信してくださっています。
例えば、TSKさんいん中央テレビ「かまいたちの掟」は、TVerの「ローカルバラエティ番組」カテゴリで2021年の年間総再生数1位を獲得。
お気に入り登録数も16万人を超えるなど(2023年4月現在)、数字の面でも成果がでてきています。

先日、パネルディスカッションにもご登壇いただいてお話を伺ったのですが、KAB熊本朝日放送の人気番組「ヒロシのひとりキャンプのすすめ」では、昨年11月に、公式ガイドブックが出版された際、本の帯に「TVerご当地 九州・沖縄エリアお気に入り登録 第1位」とコピーを載せていただいきました。

出版直後には、東京都内の書店でのイベントも実施され、その際には、全国から多くの方々が集まってくださったそうです。
今年3月の熊本のイベントでは、全国から番組のファンが熊本に集まり、「聖地巡礼」と称して、実際に番組で紹介された熊本県内のキャンプ地に足を運ぶ人も多かったと聞きます。

ローカル局の番組を放送エリア外に届けることで、全国にその地域の魅力が伝わる好例となったのではないでしょうか。
TVerが、地域の活性化に貢献できたと感じられて嬉しかったですね。

あらゆるステークホルダーを巻き込み“テレビの開放”に挑む

——ローカル局との連携について、今後の展望を聞かせてください。

全国127局、すべての局の番組がTVerで配信されている状態を目指したいです。

またローカル局の番組も含め、ユーザーの方々にTVer上で「今まで知らなかった番組」を見つけてもらえるような仕掛けを作っていきたいと考えています。

その施策の一例が、2022年9月〜10月に配信した「サウナ特集」企画です。
今、注目が高まっているサウナをテーマに、全国のサウナ関連番組200本以上をまとめて取り上げました。出演者や番組名ではない切り口で、番組を浮き上がらせる狙いです。

2023年4月からは「キャンプ特集」を配信。第2次キャンプブームと言われ、キャンプにハマる人が急増している昨今、TVerでは全国放送のキャンプ番組はもちろん、ローカルエリアで放送される番組まで網羅し、新作・過去作合わせて100本以上のコンテンツを集結させました。

これからもさまざまな切り口やテーマでコンテンツを発見して楽しんでいただけるよう、企画していく予定です。

あとは、ローカル局から直接TVerに参画する仕組みを構築中です。これまでに2回の説明会を行ったところ、全国から多くのローカル局の方々に聞いていただきました。

TVerでの配信に興味を持ってくださっている方が、着実に増えているのだと思います。取り組みの事例をどんどん生み出し「うちの局でも試してみようかな」と思ってもらえるよう、積極的に発信していきたいと考えています。

——今後、TVerとして目指したい姿を教えてください。

究極のゴールとしては、冒頭にもお伝えした通り、テレビというサービスを進化させることを目指していきたいです。

そのために、やるべきこと、やりたいことはたくさんあります。
たとえば今、TVerの社員を何人か集めて紙を1枚渡し「TVerが成長するためのアイデアを書こう」と呼びかければ、1時間ずっと全員の手は止まらず、100個200個とアイデアが出てくると思うんですよね。

何をやれば良いか分からないと言うより、やりたいこと、やるべきことが多くて、どこから手を付けるか、というステイタスなんだと思います。

今後は、やるべきことの優先順位を見極めつつ、いかに各戦略を立案・実行するスピード感を高めていくかが重要です。ともにミッション実現に取り組む、新たな仲間も集めていきたいですね。

——どのような人に、TVerにジョインしてほしいと考えていますか。

大きく2つあります。まずは、今の私たちが持っていない“視点”を授けてくれる人。そして、明るくてポジティブな人がいいですね。

現在のTVerは、急速に人が増えて組織規模が拡大しています。そのような中で「テレビを進化させる」というゴールに、全員が同じ気持ちで向かっていく必要があるんです。

多様なバックグラウンドを持つ人たちが集まる中で物事を進めるためには、それぞれの思いを拾いつつ、みんなが気持ちよく働けるようドライブしてくれる、推進力のある人が必要です。

みんなの気持ちをポジティブなエネルギーに変えてくれるような、明るい人にぜひジョインいただきたいですね。

また、TVerは放送局や広告会社、広告主、視聴者の方々、さまざまなステークホルダーがいて成り立っています。
周りを巻き込みながら変革に挑むのはおもしろさを感じる一方、やはり難しい局面も多々あります。たとえ壁があっても、大局を見据えて前向きに取り組めるかどうかが大切ですね。

「一緒に挑戦してみたい」と感じていただけた方は、ぜひ、テレビの進化に向けてともに取り組んでいきましょう。


株式会社TVerでは、一緒に働く仲間を募集しています。興味のある方は、こちらからエントリーください。

TVer Tech Blogもぜひご覧ください。

取材協力:CASTER BIZ recruiting

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