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「世の中の見方が変わる」読者にオススメしたい翻訳書・洋書の数々

「翻訳書ときどき洋書」は2018年5月8日に誕生し、3年余のあいだに200本超の記事を配信してきました。「海外の良書を知っていただきたい」「翻訳書の素晴らしさを伝えたい」一心ではじまったメディアでしたが、4000名を超える読者の皆さまにフォローいただき、大変感謝しております。

このメディアではこれまで、各界で活躍する目利きの執筆者の方々に、数々の書籍を評論いただきました。今回は節目を迎えた「翻訳書ときどき洋書」の寄稿記事をまとめ、「世の中の見方が変わる」翻訳書や洋書の一部をご紹介します。

これまででもっともたくさんの方に読まれた記事

華道家でハーバード・ビジネス・レビュー特任編集委員の山崎繭加さんにご紹介いただいた“Bad Blood”の書評が、もっともたくさんの方に読んでいただいた記事となりました。バイオベンチャー「セラノス」の栄光と崩壊を描いたこの作品はまさに「事実は小説よりも奇なり」と言うべきもの。“Fake it, until you make it.(そうなるまで、そうであるふりをせよ)”という言葉に、スタートアップシーンの危うい倫理観が浮き彫りになります。2021年2月には、当メディアにも寄稿いただいた関美和さんら翻訳による日本語版『BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相』が出版されています。

これまででもっとも「スキ」がついた記事

エール株式会社取締役を務める篠田真貴子さんにご紹介いただいた“Atomic Habits”(日本語版『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』)の書評が、もっとも「スキ」をいただいた記事となりました。新たな習慣を身につけるのは、誰もが苦戦するもの。「ほんの小さなことからはじめる」習慣化のメソッドは、人間の本質に即したものでした。篠田さんには、他にも『恐れのない組織』『Joy at Work』『約束の地 大統領回顧録』など、日本語版が話題となった本をいち早く原書でご紹介いただきました。

海外ニュースから「今」と「未来」を読み解く

いまや世界中のニュースをタイムラグなく受け取れる時代になりましたが、ある統計によると、インターネットで使われている言語のうち、日本語は2.6%ほど。英語の25.9%と比較すると、やはり情報量には差があります。植田かもめさんにご紹介いただいた“The Code Breaker”"Mindf*ck"、倉田幸信さんにご紹介いただいた“The Hype Machine”など、いち早くいまのテクノロジーを読み解く書籍は、私たちの暮らしがどんな社会に根ざしているのか。どんな未来が導かれていくのか、その可能性を示してくれます。

「言葉」から次の時代を切り拓く

FACTFULNESS』が私たちに物事の適切な見方を示してくれたように、書籍によって新たに提示される概念が、いまを生きる私たちに役立ちます。厄介な問題をクリエイティブな視点から解決へ導く「デザイン思考」。デザイン思考を自らの人生に応用する「ライフデザイン(スタンフォード式人生デザイン講座)」。困難な状況に置かれたとき、自分自身や相手と“共にいる”ための力「コンパッション」──。いずれも、この複雑な社会を、そして自分自身の未来を切り拓くために重要な概念であり、行動に移すための方法論です。

改めて触れたい古典・名作の魅力

古典や名作をいまのフィルターを通して読み返すと、思わぬ発見や人間の普遍性、現代との同時性を感じられることがあります。行きすぎた合理性、効率性に疑問を投げかける『モモ』、現代の思考法のルーツとも言えるデカルト『方法序説』、食の楽しみと快楽を再発見できる『美味礼讃』、ル・コルビュジエの思想から近代建築を紐解く『建築をめざして』。いずれも「読み継がれる」意味を実感できるものです。

時代を投影するフィクションの数々

優れたフィクションほど、ひるがえって私たちの直面する社会問題や現実に目を向かわせ、多くの示唆を与えてくれます。異なる国に暮らす3人の女性の人生が交錯する『三つ編み』、台湾の戒厳令時代を生き抜いた主人公の人生から民主主義の意義を再認識する『來自清水的孩子』、アメリカとイスラムの軋轢を虚実入り混じる筆致で描いた“Homeland Elegies”。登場人物の人生に想いを寄せたとき、そこで描かれる現実には、たとえ国が違っていても身に迫るものがあるはずです。

本と出合うそのとき、世界は広がる

Twitterなどで「翻訳書ときどき洋書」と検索すると、多くの読者の皆さまが、新旧問わず当メディアの記事をシェアしてくださっています。翻訳書・洋書の素晴らしさは、まさにその「飛距離」の長さ。それぞれの国で出版された本に、その言語に通じた方が出合い、その内容について評する。そしてそれが翻訳されることで、他の国にも広がっていく──。日本語に翻訳されたときはじめてその本と出合い、感銘を受け、さまざまな価値観や思想への理解を深めることもあるでしょう。そうやって巡り巡って、世界や人のありようが豊かになっていくことを、私たちは信じています。

「翻訳書ときどき洋書」は定期更新をいったん終えますが、これからも翻訳書・洋書の可能性を広げ、日本と世界をつなぐ架け橋となっていけたらと考えています。どうぞ引き続き、読者の皆さまもお付き合いくださいませ。これからもよろしくお願いいたします。

翻訳書ときどき洋書 編集部
構成:大矢幸世


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