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2021年1月に読んだ本たち

今年もせっせと読書にいそしんでいます、小笠原です。
年に一度のまとめは少ない気がするし、一冊ごとはめんどくさいので、月1ぐらいでゆるく所感をまとめることにしました。少しでも誰かの選書の役に立てばと思います。

古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

昨年からnoteで文章を書く機会が増え、少しづつ「書く」ということを意識するようになりました。この本を読んで以降、古賀さんのnoteをほぼ毎日読んでいますが文章も読みやすくて、その読みやすさの中に温かみみたいなものを感じられてほっこりさせてもらっています。犬の写真も毎回かわいさ満点で癒されるので是非読んでみてください。

益田ミリ『今日の人生』

以前、益田さんの本を『一度だけ』を読んでいたので、ふと漢字とカタカナの名前が目にとまり手にとって読んでしまいました。イラストたっぷりのコミックエッセイ。益田さんの世界観と素朴な絵がマッチしていました。映画、音楽、芝居、読書は自分の世界に「手すり」をつけること、という言葉が印象的。それらは転ばないように自分を支えてくれるもの、転んでしまった時に再び立ち上がるために必要なもの、「手すり」の表現ステキでした。

山口周『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』

山口さんの新しい本が出ていたので年明け早々さっそく読みました。
消費の非物質化がし、物質的な満足度がすでに高い水準に至った社会では、活動それ自体が報酬となるコンマトリー(自己充足的)な活動が求められるようになることに納得。主旨とは少しずれるけれど、その世界に活動そのものが大きな楽しみになり、そこから高い精神的な報酬も得ることのできる「スポーツ」の可能性を感じました。まだまだ先が見えない状況ですが、スポーツ界に身を置くものとしては、よりスポーツが求められるようになって欲しいと願っています。スポーツがなくても生きてはいけると言われるけれど、これから生活必需品の一つになってくると思います。

pha『しないことリスト』

京都大学出身のphaさん。バイアスがあるかもだけれど、文章の中に賢さが滲み出ている気がします。何かに対してのアプローチをする際に、逆からのアプローチで目的の輪郭をはっきりさせることは大事なことだなと。好きは嫌いなことを挙げていくとより好きの形が鮮明になるし、やりたいこともやりたくないことからの逆算で輪郭ははっきりとする。漠然とやりたいことに矢を放つよりは、少しは命中率は高くなりますね。ダンバー数(人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限)がおよそ150人という記述があり、久しぶりに思わず数えてしまいました...

苅谷剛彦『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』

「考える」という行為はその考えが何らかの形で表現されて初めて意味を持つ、とあり、頭の中でグルグル回しているだけではダメで、noteなり、人に話すなりしてまずは外に出してあげるべきだなと。ビックワード(概念)を使いすぎると、言葉が一人歩きしてわかった気がしてまうことは、耳が痛かったですね。気をつけよう。

灰谷健次郎『兎の眼』

児童文学の名作。教育免許を持っている身としては、新人教師の小谷先生に想いを重ねつつ、心を開いてくれない鉄三に対して自分ならどうするだろう?という視点で読んだ。学校という閉ざされた仕組みにうまく適応できない子たちへの教員のアプローチってやっぱり難しい。人は誰しもきらめくものを持っているという前提で、対象の子のきらめきが見つかるまで待てるかどうかは尚更難しいと思う。哲三目線で言えば、小1で小谷先生みたいな生徒に向き合ってくれる教員に出会えたのは大きいだろうな。昔の作品だけれど教員を目指す人は読んでおいて損はないと思います。

平野啓一郎『空白を満たしなさい』

以前『私とは何か?個人から分人へ』を読み書いたnoteに反応をいただいて、このい小説を勧めてもらいました。(『ドーン』も勧めてもらってまた読みます)平野さんの分人主義の考え方を理解した上で読んだのでスラスラ物語が入ってきた。テーマとしては幸せとは?という大きなものに集約されるけれど、「幸せはささやかなことの積み重ね」というありきたりな言葉が妙に自分の心に残りました。最近のテーマは「お金で買える小さな幸せは惜しみなく買う」です。把握のほど宜しくお願いします。

恩田陸『夜のピクニック』

遠征の飛行機に忘れてきて、チームのラインに「夜のピクニックという本を忘れた人はいますか?」というポップアップ通知が浮かんで、チームの人からタイトルを読んで一瞬怪しまれ、さらに帰りの郵便代で新しく買うよりお値段以上になった思い出が残った本になりました。また、この作品が大学同期の母校である茨城県立水戸第一高校の「歩く会」をモチーフにしていると聞いて、大学時代を過ごしたつくば の風景が浮かんできてより一層親近感に似た感情を覚えました。優しさの足し算と引き算の話は共感しました。大人の優しさは引き算の優しさ、いい言葉。

棚木悠太『どこかで』

航空自衛隊の出身で、退官後に執筆活動を始められたそう。とにかく文章が柔らかかった。文章が柔らかいっていうのは適切じゃないかもしれないけれど、それはサッカーで「あの人のキックって柔らかいよね」っていうのに似ているかもしれません。ずっとサッカーをしていたり、ずっと文章を読んでいると、自分は柔らかく表現できなくても、その柔らかさに気づけるようになれたことは収穫の一つです。構成も「春夏秋冬」ではなく「冬春夏秋冬」。日本人にとって「自死」は重要なテーマであると思うし、意図的に選ばずとも月に読む本に一冊は自殺のシーンが入ってきているので、わりかしこういったテーマを多くに人が扱っているのだと思わされます。自死という選択は積み重ねてきた小さな死の総仕上げに過ぎない。コロナに罹患し家で自殺という選択肢を選んでしまった人のニュースを見かけた。コロナに罹ったことがストレートに辛かったんじゃなくて、周りの反応、回復した後の生活、そういった想像のなかの小さな死が積み重なってしまったのかなと思ってしまった。

凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』

昨年の『流浪の月』で本屋大賞を獲った凪良さんの最新作。『流浪の月』では「事実と真実は違う」というメッセージがあり、勝手に他人の行動や言葉を解釈して、ラベリングしたり決めつけたりしていないかと考えさせられました。今回の『滅びの前のシャングリラ』も今年の本屋大賞候補にノミネートされていて、また違った意味で凪良さんの物語に魅了されました。テーマとしては「1ヶ月後、小惑星が地球に衝突して死ぬならどう過ごす?」という大きな括りになると思います。死を目の前にして善悪に限らず、それぞれが生きる理由なるものを探し始めて、最後の日にむけて自分が誰といるべきか、だれと一緒に死ぬべきかを探し求めます。「誰でも死ぬときは一人だ。それでも、最後のときに誰といるかは大事だ。」とセリフであります。死ぬという行為は一人でしか行えないけれど、大勢に見守られながら死ぬことはできます。友人とのzoomでもこの話になったし、7つの習慣でも触れられていたお葬式からの逆算なるものは大事だと思います。「1ヶ月後地球が滅ぶなら?」ともう既に世界で使われてしまった問いが僕に与えられることはないので、本当に人生で大事にしたいこと、本当に一緒にいたい人、意識的に自分に問いかけながら探し求めていきたいです。

山本文緒『自転しながら公転する』

順位は付けられないけれど、一つしか誰かに勧められないとしたら今月はこの本をお勧めしたいと感じた作品でした。なるべくネタバレにならないようにと気をつけます。

何よりわかるようなわからないようなタイトルに惹きつけられました。この作品も本屋大賞のノミネート作品の一つです。時間はかかりそうですが、本屋大賞発表の4月までに全10作品は読了したいと考えています。

まず、舞台が茨城県であるのでそこも感情移入しやすい要因の一つでした。車から眺める牛久大仏、アウトレットモール、筑波山からの関東平野を見下ろしたときの感動など、懐かしいものばかりでした。本作は、主人公が30代前半の女性であり、恋愛、結婚、家族の世話、仕事での人間関係などに関心のある主人公と同世代の人たちにドンピシャに響く物語だと思います。心配することと束縛することは紙一重」「何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。幸せに拘れば拘るほど、人は寛容さを失っていく。」など、何かと思い当たる節があるフレーズばかりでした。特に「結婚じゃなくて”連帯”」という言葉は結婚はしていないけれど、大事そうな雰囲気を醸し出していて妙に記憶に残りました。

【結婚】夫婦になること。
【連帯】 二人以上の者が共同である行為または結果に対して責任を負うこと。

確かに並べてみると「連帯」の方が言い当てている気がします。自分は結婚していないからわからないけれど、どうなんだろう?と結婚している人の意見も聞きたくなりました。

僕は主人公目線というよりは、主人公の彼氏・貫一目線で自分と比較しながら読み進めていることが多かったような気がします。様々な事情のなか、回転寿司屋で働き、親の介護費を工面し、ボランティアにも参加したりと他人のために行動でき、そのことを愚痴らない貫一。でも、学歴だったり、経済的な安定性だったり、結婚とは切っても切り離せない、それぞれが抱えるいくつかのチェック項目が埋まらないことに対する葛藤はこの年になるとリアルに感じてしまいます。

僕の世界も来年今の仕事についているかはわかりません。大怪我をしたり病気になる可能性だってある。そうなってしまえば、貫一のように寿司を握るスキルがあっても働くところ、活躍する場所がなければ厳しい場合もある。何かと考えさせられて、考えるいいきっかけをくれた作品になりました。最近、ふと友人との会話で本での話が出てくるようになりました。「You are what you eat」という言葉がありますが、思考は「You are what you read」かなとも思います。何かに偏り過ぎず、バランスよく栄養価の高いものをとりこみつつ、たまには自分が好きなものを優先する日があってもいいですよね。


ですます調は苦手です。長文失礼しました!


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