たなかゆうすけの 生殖よもやま話

生殖医療7年目の産婦人科医。生殖関連のよもやま話を記録していきます。私見多め。メッセー…

たなかゆうすけの 生殖よもやま話

生殖医療7年目の産婦人科医。生殖関連のよもやま話を記録していきます。私見多め。メッセージ、リクエスト、ご質問があればhttps://querie.me/user/turedureessays からお願いします。みなさんがしあわせな結末にたどり着けますように。

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【易しい】妊娠初心者ガイド『何を参考にプランを考える?』

たなかゆうすけです。 あなたのプラン、どうやって考えましょうか。 ・年齢 まずは年齢です。 これは想像しやすいですね。 人間のカラダを構成する細胞は、日々新しいものに入れ替わっています。 年を取れば、入れ替わる細胞も徐々に衰えていきますので、全体として組織は劣化していきます。 このスピードはさほど速くありません。 これに対して、新しく置き換わらないものがあります。 卵子です。 卵子は生まれたときから、ずっと体内にあります。 新しく入れ替わったりはしません。 あ

    • 【易しい】妊娠初心者ガイド『まず何から始めたらよいの?』

      たなかゆうすけです。 今日は一番最初のお話。 まず何から始めたら良いのかということです。 ・まず何から始めたら良いのか? 世の中には、いろんな情報が溢れています。妊娠関連でもたくさんの情報に触れる機会があると思います。もしかして、いろんな情報に触れすぎて、何をしたら良いのかわからなくなっていませんか? まずはシンプルに、原点に戻りましょう。 『あなたたちご夫婦はどうしたいですか?』 これをしっかり考えることが一番重要だと思います。 ・ちょっと先の未来、どうなって

      • 【小噺】妊娠初心者ガイド『着床』

        たなかゆうすけです。 今日は着床のお話をします。 無事卵子さんと精子くんが出会い、一つとなって、受精卵ちゃんが誕生しました。ここからまだまだ道のりは長いです。たった一つの小さな細胞は、どんどん数を増やして赤ちゃんになろうとして行きます。 1個の細胞が2個になり、4個になり、8個になり、どんどん増えていきます。生まれたばかりの受精卵ちゃんは、自分では動けません。放っておくと、ゆらゆらとどこかへ行ってしまいます。そんな受精卵ちゃんを、卵管はそっと優しく子宮へと運んでいきます

        • 【小噺】妊娠初心者ガイド『受精』

          たなかゆうすけです。 これまで、排卵の話をしてきました。排卵した卵子には、受精卵になるために受精してもらう必要があります。 これから、受精についてお話していきましょう。 年頃のお二人(卵子さんと精子くん)が出会って意気投合したら、輝かしい未来へ向かって一緒になって進んでいきます。受精ってそういう感じです。その結果赤ちゃんができるんですから、やっぱり受精って素晴らしいですね。青春って感じです。 未来を夢見ているお二人ですから、その辺でテキトーに出会うというのもあまり気分

        【易しい】妊娠初心者ガイド『何を参考にプランを考える?』

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          妊娠初心者ガイド④『ホルモンの制御機構』

          受精のお話をする前に、ホルモンの制御機構についてお話をしておきます。ホルモン制御にはフィードバックという機構があります。 Aというアクションがあり、それを行ったことによりBという結果が得られたとします。このBが良いとか悪いとか、多いとか少ないとかによって、Aというアクションを変化させることがあります。 例えば料理をするときに、なかなか食材に火が通らなければ、火の勢いを強くすると思います。火が通りすすぎて食材が焦げてしまうなら、火の勢いを弱くすると思います。 このように、

          妊娠初心者ガイド④『ホルモンの制御機構』

          妊娠初心者ガイド③『排卵はどのように起こる?』

          前回、妊娠成立には、『排卵』『受精』『着床』の3つのステップが必要であるということと、各ステップの概要についてお話しました。では、『排卵』について、もう少し詳しくお話をしていきましょう。 排卵は、成熟した卵子がおなかの中へ放出される現象ですが、排卵するまでには、まず卵子の格納された卵胞という袋が大きくなる必要があります。そして卵胞が一定のサイズまで大きくなったら、排卵が起こります。 この過程には、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が大きく関わっています。

          妊娠初心者ガイド③『排卵はどのように起こる?』

          妊娠初心者ガイド②『妊娠に必要な過程は?』

          前回、少なくとも『妊娠のために精子と卵子が存在することが必要』ということをお話しました。では、その精子と卵子が存在するという条件で、どのような過程を経て妊娠が成立するのでしょうか。 妊娠の成立には、『排卵』、『受精』、『着床』の過程が必要となります。この3つの過程が滞りなく進んでいくことで、妊娠が成立します。実際には体の中でどのようなことが起こっているのでしょうか。 ・まずは『排卵』が起こります 卵子は、卵巣の中に格納されており、そのままでは精子と合体・受精はできません。

          妊娠初心者ガイド②『妊娠に必要な過程は?』

          妊娠初心者ガイド①『妊娠に最低限必要なことは?』

          初めましての方は、初めまして。ご存じの方は、いつもありがとうございます。たなかゆうすけです。これから妊娠を考える方への『妊娠初心者ガイド』、1本目を始めていきたいと思います。 ・妊娠するために最低限必要な条件とは そろそろ妊娠を考えようかなというときに、私は妊娠できるのか?ということが気になる方はいらっしゃると思います。もしかして妊娠できないかも?と不安になることもあると思います。『これがなければ妊娠は始まらない』という条件とはいったい何でしょうか。 ・妊娠するためには、

          妊娠初心者ガイド①『妊娠に最低限必要なことは?』

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑨トラブルシューティング

          トラブルシューティングです。よくあるトラブルとして、 ・排卵誘発に反応しない場合 ・発育卵胞数が増えた場合 ・遺残卵胞を疑った場合 ・妊娠しない場合 などがあります。 下に私の対応を記載しますが、あくまでご参考に。  排卵誘発に反応しない場合ですが、私は上記のように対応しております。内服剤のみで反応が見られない場合は、適宜ゴナドトロピン製剤をspotで注射します。基本は150IUを使用しますが、複数発育を避けるため、投与間隔は基本2日間以上空けています。それでも発育がない場

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑨トラブルシューティング

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑧タイミング法のテンプレート

           卵胞計測における経腟超音波の保険請求回数については上記の通りです。詳細は割愛いたします。社保の資料の通りです。  これまでの内容から、タイミング法のテンプレートを作成してみました。月経不順がなく、誘発を行わない場合です。各先生、各ご施設で改変していただいて結構です。不妊症の病名が必要です。  こちらは月経不順があり、誘発を行う場合です。  タイミングを合わせる時期についてです。基本的には排卵の1日前、2日前が推奨されます。排卵の5日前から妊娠の可能性がある程度あります

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑧タイミング法のテンプレート

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑦排卵誘発剤の使用法

           では、誘発剤の使い分けについて説明します。内服の誘発剤は3種類あり、クロミフェンクエン酸塩、レトロゾール、シクロフェニルとなります。シクロフェニルはクエン酸クロミフェンの効果が弱い版と思っていただければよいと思いますが、使用頻度は少ないです。主に、クロミフェンクエン酸塩、レトロゾールを使用します。クロミフェンクエン酸塩は、E2レセプターをブロックしE2を感知させないことで、卵胞発育がないと誤認させ、FSH分泌を増加させる薬剤です。レトロゾールはエストロゲン産生量を低下させる

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑦排卵誘発剤の使用法

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑥排卵誘発のイメージ

           卵胞の発育について、上記のようなイメージを持っておいてください。各卵胞について、発育を始める『FSHの閾値』があり、これを超えている間は発育するというモデルを考えます。『FSHの閾値』を超えている時間が長いと、その超えた時間のぶんだけ発育するというイメージです。  また、別の『卵胞径の閾値』というイメージも持っておいてください。排卵誘発を行うときに意識すべきこととして、単一卵胞発育を目指すということを先に述べました。自然周期の場合はほとんどの場合単一排卵となりますが、ここ

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑥排卵誘発のイメージ

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑤排卵障害の種類と誘発剤の選択

           先の排卵障害の考え方で、排卵障害の種類を明らかにしましょうというものがありました。排卵障害の原因についてはどのように考えれば良いでしょうか。大まかに、卵巣性、中枢性とそれ以外に分けていただくと分かりやすいと思います。これらはホルモンの基礎値(E2、FSH、LH、PRL)を測定することで鑑別することができます。  卵巣性とはすなわち、卵巣に排卵する卵子が残存しておらず、排卵するものがないため排卵障害となっている状態です。この場合、脳はなんとか排卵させようと刺激を強めていくため

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ⑤排卵障害の種類と誘発剤の選択

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ④排卵誘発の考え方

           では、ここからは排卵誘発についてお話していきます。排卵誘発の基本的な考え方は、『リスクを避けること』です。リスクは、主に卵胞が複数発育した結果発生する、多胎妊娠と卵巣過剰刺激症候群です。日産婦より発行されているガイドラインでは上記のようになっており、単一排卵を目標とすること、16mm以上の卵胞が4個以上存在した場合、治療周期をキャンセルすること、過排卵となった場合は卵巣過剰刺激・多胎妊娠・正所性異所性同時妊娠の発生に注意することといったように、複数の卵胞発育、複数排卵による

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ④排卵誘発の考え方

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ③卵胞モニタリング時の採血

           卵胞モニタリングの際の採血値の読み方ですが、基本はE2、Pで確認します。  E2は卵胞発育を反映し、検査系で少し差はありますが、排卵前に300pg/mL前後へ上昇します。E2値は加齢、内膜症の有無、排卵誘発剤の種類などで多少の影響を受けます。特にレトロゾール使用時はE2値が半分以下へ低下するため、卵胞が発育した状態でも100pg/mL程度しか出ないことはよくありますので、ご注意ください。E2値は卵胞の発育は反映しますが、正確な排卵時期は判断できません。  プロゲステロンにつ

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ③卵胞モニタリング時の採血

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ②経腟超音波での卵胞計測

           卵胞計測は、長径と直交する短径の平均値を卵胞径とするのが基本となります。矢状断で測定だったり、3軸の平均だったりといった記載も見られます。私は基本最大断面での計測を行っています。卵胞径 10mmくらいから1日2mmの速度で増大し20mm前後で排卵に至りますので、排卵日の予測を行ってください。  卵胞計測はスポットで判断することも重要なのですが、経時変化を意識することは非常に重要となります。簡単に言うと、周期の中で増大の後消失するものは卵胞以外にはほぼないでしょうということ

          タイミング法のススメ ~卵胞計測、排卵誘発の実践~ ②経腟超音波での卵胞計測