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【やさしい】新鮮胚移植と凍結融解胚移植~凍結融解胚移植の特徴~【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

今回は凍結融解胚移植の特徴です。


凍結融解胚移植の特徴

・凍結融解胚移植では妊娠までの期間が長くなる可能性がある
・周産期のリスクが増大する可能性がある

これらの2点については、新鮮胚移植の項を確認していただければと思います。

これらは凍結融解胚移植によるデメリットで、新鮮胚移植ができる状況でわざわざこれらのリスクを増やす必要はありません。ですので凍結融解胚移植は基本的に、新鮮胚移植が適さない場合に行うと考えていただいて差し支えありません。新鮮胚移植が適さない場合とは…

・発育卵胞数が増えた場合
・卵管水腫やポリープなどがあり、妊娠率の低下が予想される場合

です。凍結融解胚移植はこのような状況で有効となることがあります。


卵胞が多数発育しても、比較的リスクが低い

新鮮胚移植の項で、回収卵が多くなると合併症が起こりやすくなるというお話をしました。これを卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome;OHSS)と呼びます。OHSSの最大のリスク因子はhCGの存在です。逆にhCGの投与と妊娠の成立を回避すれば、OHSSは比較的早期に改善します。

もともとAMH(anti-Müllerian hormone:抗ミュラー管ホルモン)が高い方で安全に卵胞数を増やすには、妊娠を回避するためにすべての胚(受精卵)を凍結保存する全胚凍結と凍結融解胚移植は不可欠です。AMHの高い方は発育個数コントロールが難しく、かなり刺激を弱めても多数の卵胞が発育してしまうことがあります。こういった方でも合併症を回避しながら安定して成績が出せるようになってきたのも、凍結融解胚移植が進歩してきたからに他なりません。

近年では、アンタゴニスト法の出現でhCGの投与も回避できるようになってきたため、OHSSリスクはさらに低減できるようになりました。

このように、多数の卵胞が発育することが予想される場合や、結果的に多数の卵胞が発育した場合には、全胚凍結と凍結融解胚移植が有効です。


受精卵を確保してから卵管水腫やポリープの対応が可能

卵管水腫や比較的大きなサイズのポリープ、粘膜下筋腫が存在する場合は、妊娠着床率の低下や流産率の増加が予想されることがあります。このような場合は胚移植の前に手術などで対応を行うことがあります。

これらは採卵を行う前に対応しても良いのですが、手術には待機時間があります。受精卵を確保した後に採卵後の休み期間を手術の待機時間に充てることで、待機時間を軽減することができます。

また、手術の後に採卵を行ったが結局受精卵が得られなかったというケースも考えられます。卵管水腫やポリープ、粘膜下筋腫は症状がなければ手術を行わない場合があります。結局胚移植ができなければ手術をした意味もなくなってしまうことがありますので、受精卵を確保してから手術する方が良いことも考えられます。

こういった理由で凍結融解胚移植を行う場合もあります。


まとめ

新鮮胚移植と凍結融解胚移植についてお話しました。次は、採卵に特徴的な合併症、卵巣過剰刺激症候群のお話をしましょう。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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