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【やさしい】誘発したときに起こること【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

この続きです。

排卵誘発を実施した場合に起こることとして、卵巣過剰刺激症候群と多胎妊娠があります。

卵巣過剰刺激症候群については別項で説明しています。


排卵誘発の副次的効果

卵胞を発育させるのは、主に卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用によります。排卵誘発を行わない場合には、FSHは排卵に向けて緩やかに低下していきます。卵胞は基本的にFSHがないと発育できないので、FSHが低下するとある一定のサイズ以下の卵胞は縮小していきます。しかし、ある一定のサイズを超えた卵胞はFSHの作用が小さくなっても発育します。たくさんの卵胞が団子の状態から一つが抜け出して発育を始めると、FSHが低下して他の卵胞は縮小していきます。このFSHの微妙な調整で卵胞の選別が起こり、基本的に一つだけが発育・排卵するようになっています。この仕組みをリクルーティングと言います。

人間はもともと二人妊娠できるような体のつくりにはなっていないので、複数排卵して二人以上の赤ちゃんを妊娠してしまうと危険なのです。そのため、排卵を一つにしてお母さんと赤ちゃんを守っていると考えて下さい。

さて、排卵誘発は基本的に排卵障害のある方へ実施します。排卵まで長くかかる方は、卵胞が発育し始めるタイミングが通常より遅めです。この発育のタイミングを早めてしまうのが排卵誘発の主な目的です。これと超音波で卵胞の発育をモニタリングすることで、タイミングを合わせやすくします。

排卵誘発を行うためのお薬(排卵誘発剤)はいずれも、卵胞刺激ホルモン(FSH)を上昇させる作用を持っています。FSHがある一定の値以上に上昇することで、卵胞の発育が始まります。内服薬は体の中の機構を利用してFSHを上昇させます。注射薬はFSHそのものを体内へ供給します。

ここで、お薬を長く効かせてFSHの低下が起こりにくい状態にしたり、ドカンと上昇させてしまってなかなか低下しない状態にしたりすると、一つだけの卵胞を発育させる微妙な調整が効かなくなります。この結果、複数の卵胞が発育してしまいます。排卵誘発は卵胞が発育するタイミングを早めるのが主たる目的ですが、副次的効果として複数の卵胞を発育させやすくしてしまいます。

この結果として2個以上の卵子の排卵が起こると、そのどちらもが着床してしまい多胎妊娠(双子、三つ子、四つ子…)となってしまうことがあります。


医療行為の合併症としての多胎妊娠

双子は吉兆とされることがありますし、珍しいのでなんとなく良いものというイメージがあるかも知れません。生まれた後の苦労は2倍ですが、そのぶん幸せも2倍かも知れません。

しかし先にお話したとおり、人間はもともと二人以上妊娠できるような体のつくりにはなっていません。多胎妊娠はそれなりのリスクをはらんでおり、お母さんや赤ちゃんに危険が及ぶこともあります。医療行為として実施した治療が、逆に大きな問題を作り出してしまうことがあります。

ですので、排卵誘発を実施するときには発育個数には細心の注意を払っています。


それでも複数発育するときには

国内のガイドラインでは、4個以上卵胞が発育した場合にはその周期のタイミングや人工授精の治療は中止しましょうとなっています(2~3個の発育なら治療してもいいという話ではありません)。しかし、AMHがかなり高い方など、もともと卵子が複数発育しやすい方がいらっしゃいます。こうした方はコントロールが非常に困難な場合があります。通常の量ではぜんぜん発育が起こらず、仕方がないので少し強い刺激を入れたらすぐに多数の卵胞が発育してしまうような方です。こういった場合にはどうしたら良いのでしょうか?

次回は、卵胞発育のコントロールが難しい方への対策をお話します。



妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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