見出し画像

【つれづれ】針仕事の基本【よもやま話】

たなかゆうすけです。

採卵のお話の3回目。針とエコープローブの動かしかたです。

採卵で気を付けることは、
・穿刺回数を極力少なく
・短時間で迅速に
・痛みを少なく
・合併症を起こさず
・可能な限り多くの卵子を回収する
ということです。

大切なことなので、何回も言います。


針の動かしかた

針を動かすときのポイントは、第一に針先を見失わないようにすることです。針先を見失うと、まともな運針ができなくなるのと、何を刺しているかわからなくなるので危険です。


基本は前後運動

エコープローブを全く動かさずに針を前後に運動させるだけだと、針を見失うことはありません。上達するための最大のポイントは、変に針を上下左右に動かしたりせず、前後運動を最大限に活用して穿刺を行うことだと思います。

卵胞を穿刺して中の卵胞液を吸えば、当然卵胞は縮小します。そして卵胞が縮小すれば、そのぶん周期から卵胞が寄ってきます。理想的なモデルであれば、寄ってくる卵胞をその場で前後運動を繰り返して穿刺し続けるだけで、すべての卵胞が穿刺できてしまいます。実際はそこまでうまくいくことはありませんが、これに近い状況を作ることが重要です。最初の位置取りでなるべく卵巣の中心に近い場所で、なるべく多くの卵胞が描出されている断面を確保し、その真ん中を穿刺します。こうすることで、上下左右の動きを最小限にしながら穿刺を行うことができます。

前後運動が運針の基本であり、いろいろテクニックを駆使する前にまずはこの基本動作に採卵全体を落とし込む、ということが最重要だと思います。


プローブを動かす場合は縦方向の移動をメインに

針を刺入した状態でプローブを動かすと、針には必ずテンションがかかってたわみます。プローブを動かして運針する際には、この『たわみ』を意識することが非常に重要です。基本的には動かした方向の逆方向にたわみます。上向きに動かせば下へ、下向きに動かせば上に、左向きに動かせば右に、右向きに動かせば左にたわみます。

プローブの先端からは縦に扇状にエコービームが出ています。この扇状の平面上に針が乗っている場合は針を見失いません。縦方向(上下方向)へプローブを動かす場合は、たわんだ針はこの扇状の平面からズレることはありません。

最初に『なるべく多くの卵胞が描出されている断面を確保する』と言いましたが、ここで描出している卵胞は基本的に縦方向の動きだけで穿刺ができます。


プローブの左右方向への移動は避ける

さてプローブを左右に動かした場合ですが、エコービームは厚みがほとんどありませんので、少したわむだけで先端は簡単に扇状の平面からズレてしまいます。

左右に動かすこともないわけではありませんし、むしろよくあるのですが、
繰り返すとどんどん針先が見えにくくなっていくため、針にかかるテンションとたわみをしっかり意識しておくことが重要です。少し左右にうごかした後は、できる限りもとの位置に戻って針先を見失わないように心がけます。


穿刺した状態からプローブを回転させない

回転はほぼ一発アウトです。ほぼ確実に針を見失います。しかもリカバリがかなり難しいので(もとの位置が分かりにくい)、腹膜穿刺からやり直さなければいけないことがほとんどです。


テンションをしっかり抜く

針が深くまで入った状態で上下左右に動かすと、針のたわむ量は大きくなります。ですので針を動かす場合は、極力浅い位置で行うことが重要です。一つ卵胞を穿刺して次の卵胞を穿刺するときに針を上下左右に動かす場合は、しっかり針を引き戻す動作を心がけます。横着して深い位置にある針を大きく動かすと、すぐにスムーズな穿刺ができなくなります。


今日は穿刺の基本について説明しました。これを徹底して行うことが上達の近道だと思います。これ以外にも細かいテクニックがあります。次はそのお話をしましょう。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

コメント、メッセージ、スキなどいただけると大変励みになります!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?