月雪(靑蓮華)

あさすあしでしもをふむつめたくてかなしかった

月雪(靑蓮華)

あさすあしでしもをふむつめたくてかなしかった

最近の記事

20200405誇り

まぎれもない降っているのはツェツェバエ蠅の死骸蛾は哂っているそれが幻に過ぎなければツェツェバエの黒いプールで埋もれて安らかに眠るけど蝕まれて黒ずんでいく鮮やかな蛾が自らの身を引き裂き、黒い死骸が口にも耳にも入って詰まり呼吸が止まるね

    • 今更ですが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。

      • 付け替えればいい

         止まった。シャワーの音が止まった。弟の退屈な文章が映るパソコンから顔を上げる。そのままパソコンへ戻るのも何かソワソワして、立ち上がる。  何か頭がさえない。 「なあ。」  呼び掛けるが聞こえないのか弟は答えない。  こんな狭いワンルームで、  隣の部屋のわびしい咳まで筒抜けなのに、 「入るよ。」  シャワールームを開ける。 「……。」  居ない。  ……。  シャワールームの床はぬれている。  おれの気が狂っている訳ではない。居ない弟を居ると言っている訳ではない。  弟がじ

        • メイアンの日課

           昼食のサンドイッチ、コーヒーと原稿用紙、ぬれるとただれるインクのペンをトートバックへ入れ、町外れの屋敷の門を開ける。今では門のチェーンは、来る時カフェで百円三枚とかえたコーヒーを持ったままで取れる。  屋敷の庭は手入れを嫌って申し訳程度の広さしかなく、おかげで屋敷の主が眠った後も、手間がかからずすんでいる。  重いトビラを押し開け、屋敷の奥へ向かう。大理石の床も、天井のシャンデリアも今となっては珍しくも何ともない。夜中家へ来て(しんしつのマドから。)お前のヨダレの方が美しい

          こんばんは。……えっ前回のが、2020年10月ですか?

          こんばんは。……えっ前回のが、2020年10月ですか?

          タイトル︰企画「伝説を追え」取材音声

           ずるずると文学の上ずみをすするメイアンはナプキンの裏へ、ペンの走った跡をつける。眉唾なヴァンパイアのネタをもとめ、三文文士のメイアンと中華料理屋のテーブルを挟んで向かい合う僕はメモパッドとペンを持ち、メイアンの手が止まるのを待った。 「もしかして、待ってる?どうぞ。」  僕を上目使いでみてそう言うと、メイアンは又ペーパーナプキンへ目をおとした。  支払いは勿論、僕の自腹であるから、キクラゲ一個、ネギ一欠片、美味しく食べなくては僕のATMの残高が反乱を起こすだろう。  レンゲ

          タイトル︰企画「伝説を追え」取材音声

          未明(20200927)

          1  生まれ落ちた室内で私は膜を被り外界を知らぬ娘であった。せわしなく汚れてゆく私とお前。顛末を前にして文学的に言い表してみたくなる。「私は小鳥。お前も小鳥。」私の預かり知らぬ所で脂肪を落としお前は息を絶やす。 2  奇蹟よと不出来な娘をあやすので他人の絵を上書きするようなことを真っ当な顔でしたのだ。兄様、まだ幼い貴方が蝋と顔料を混ぜたものをへし折ってそっと泣くので私は自分の行いを初めて恥じたのです。 3   教室の誰よりも早く恋を知った。私の恋煩いはお前と似て早計だった

          未明(20200927)

          私生活

          夢を見ても夢を見ても夢を見ても腹は空く 雪の上で無花果をつぶして僕はそこで芸術を見たい どうしたものかとえんえんなやむ 砂漠での行方不明を望む はくしの原稿、四百マス計算 夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、夢、どうしたんだよ獏、溺れんなよ ハサミでちょん切りたいよな君の喉ハサミ せめて死ぬ間際は自分の芸術を見たいこと 見られたらきっと生きてしまうこと

           君を自分と同じ「普通の人間」に引きずり落としたのを今でも後悔している。遠くへ行ってしまう君を引き止める方法を、それしか知らなかった。今なら、引き止めたりしない。あの頃、そうしていたなら君は「遠くへ行ったからといって通じあえなくなるなんてことないよ。」と言ってくれただろう。  廊下をすあしで走る音。君の窘める声から十分程経って「珈琲要る、」と控えめな少女の声が聞こえた。「要る。」と答えるとお盆を持った少女は廊下から火照った顔を覗かせて「どうぞ。」と珈琲やミルクののったお盆を差

          斜交

           (ゆらゆらと湖に揺れていた小舟が何か、硬いものにぶつかり、停止する。夜辺は眼を擦り起き上がった。他の小舟にぶつかってしまったのだろうか、と不安を抱いていると不意に、柔い、柔い、この手一つで消せてしまいそうな、煙のような声が聴こえた。その柔い声は胸の中にしいんと溶ける。夜のように、甘く染みるのに、そのくせ、夜のみ咲く花のように切ない。)  夜辺「月来香を匂わせる声だ、」  (小舟から身を乗り出して耳を澄ませる。バランスを崩し小舟はガタガタと揺れていた。辛抱強く耳を澄ませている

          飢えと渇き

          Twitterのアカウント移行に伴う再掲です  喉が渇いていた。布団の中で丸まるのを止めて起き上がる。「おでこに触ってみて」既に起きて本に何かを書き込んでいる彼に声を掛けた。起きた時に喉が痛いのは鼻呼吸が口呼吸に変わってしまっている時で、それは圧倒的に風邪が原因であることが多い。「来て」  本から顔を上げて彼は近寄ってきた僕のおでこに触れた。表情を変えずに自分のおでこに触れ、「熱い」と短く告げる。「薬を飲んだ方がいいね」机の上から彼が引き寄せた薬瓶を受け取り、ちら、と本のペ

          飢えと渇き

          「    、」

          目が覚める。電話が鳴っていた。 毛布を肩まで引っ張り、途切れることを期待する。 ちりりん。 ちりりりりん。 期待を裏切って、電話は鳴り続ける。 電話が鳴り止まないと、眠れない。覚悟を決めて手を伸ばし枕元の受話器を手探りで掴んだ。 「もしもし、」 耳元に当てて呼び掛ける。 「約束は?」 「何の話?」 寝ぼけた頭で尋ねると、約束だよ、と友人は繰り返した。「ずっと待っているんだけど、」 「こんな朝早くに約束なんて、」 「えっ?ごめん、聞こえないよ、」 受話器から、強い風の音が聞こえ

          「    、」

          ずっとこのまま、

           あの日の僕は確かに、夢を見ていた。もう今となっては現実と空想の境目が牛乳を温めすぎた時に生まれる膜よりも薄く、区別をつけるのは酷く難しい。しかしあれが夢であると分かるのは、騒がしい電車に巻き込まれて死んだ友人が目の前にいるからだ。夢の中で、彼は自殺した。僕は反対側のホームで携帯を構える冷たい手と、甲高い叫び声にひっそりと紛れて、ぐしゃぐしゃになった彼を見ている。即死だったせいで彼は一瞬で生から死へと飛び込んで肉だけを残した死体になった。二度と彼に会えない悲しさが巡っていたけ

          ずっとこのまま、

          うすい

           朝目が覚めると春が来ていたから窓を全て開けた。桜の木が見える。ほんのりピンクに色付く、見慣れた、けれども飽きない、ある意味家に感じる安心のような、花。きっと今日の昼や明日の昼、もしくは夜なんかになれば、私の知らない、見たことも無い、でもやっぱり安心する、桜の木の下で飲めや歌えやするんだろうな。などと予定のない温かさを胸に染み渡らせたりする。私には昔からそういう所がある。特に予定もないのに、聖夜が好きだったり七夕が好きだったりする。  「おはよう。特に意味もないけれど」  本

          含んだ

          「君、見知らぬ手紙が届いたらどうする」 「どうもしない。灰になって、さよならさ」 今夜の月は気紛れだった。顔を覗かせたり、隠したり。この手で雲に触れられるならば、横暴に雲をどかし僕は月を露にするだろう。 「では書いたのが僕だったら?」 「君だと断定出来なければ捨てるだろうね」 成程、声に出してみても納得感はなかった。言葉が体を巡るだけで。君の言葉が三周程した時、酷い虚無と吐き気が襲った。バレないように僕は唇を噛み締める。 「なんだか、変だ。もしや、手紙が届いたのか

          内蔵された飢え

          「君の願い、叶えてあげるよ」突然、月を背にして現れた願いに飢えた悪魔は、三日月からやってきたように見え、僕の後ろではトラックの振動が聞こえていた。それは、非日常への飛躍と日常への保身を揶揄しているようで。 「それじゃあ君の青白い、死に近い手で、僕の耳を塞いでくれよ」 「ちっぽけな願いだ。それじゃあ、駄目だ」 駄目だ、駄目だ、と否定から遠すぎる言葉を繰り返し、首を振る。表すなら、うわ言。 「けれど、僕にとっては、必要なことだ」 すらり、すらりと、三日月が光り、眩しい。なんだか、

          内蔵された飢え