タイトル︰企画「伝説を追え」取材音声

 ずるずると文学の上ずみをすするメイアンはナプキンの裏へ、ペンの走った跡をつける。眉唾なヴァンパイアのネタをもとめ、三文文士のメイアンと中華料理屋のテーブルを挟んで向かい合う僕はメモパッドとペンを持ち、メイアンの手が止まるのを待った。
「もしかして、待ってる?どうぞ。」
 僕を上目使いでみてそう言うと、メイアンは又ペーパーナプキンへ目をおとした。
 支払いは勿論、僕の自腹であるから、キクラゲ一個、ネギ一欠片、美味しく食べなくては僕のATMの残高が反乱を起こすだろう。
 レンゲでチャーハンを掬い、久々の米粒をかみしめる。
「ヴァンパイアの話だったね。」
 チャーハンとセットだったスープをすすっているとメイアンが話し出し、あわてて僕は「ぁはい。」と肯定した。ハッキリ「は」のはつおんが出来ず、僕は田舎から出て来て直ぐのあのはずかしい差別をおもい出して、あつくなった。今の僕はわるい方のいみで、殆ど動じなくなったが時折こうして昔の僕がやって来る。
 メモパッドとペンを持ち直そうとするとメイアンはチャーハンとスープを口へ入れるのをつづけるよう促した。僕はカセットテープレコーダーが作動しているのを確かめ、レンゲを持ち直す。
「……ありがとう。堅苦しいのは苦手なの。専門的な話でも登場人物の多い話でもないから、あんしんして。それまで、料理が持つといいんだけど。」

(一部、インタビュー・ウィズ・ヴァンパイアのオマージュです。)

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