世界一の洞窟銀座~ベトナム ホンニャ・ケバン~「暗黒洞窟探検と純白おむすび」(後編)
8.各国から集結、海パン&ビキニ探検隊
20分ほど桟橋で待っていただろうか。
ようやく後発の人たちも揃い、いよいよ暗闇洞窟に進む時がやってきた。ここからは、光のない真っ暗な世界へと足を踏み入れる。道に迷わないように、この15人が隊を組んで進んでいくことになる。
この隊はバラエティ豊かなメンバーで構成されていた。日本人は自分たちだけ。他のメンバーはアメリカ人、スペイン人、フランス人、オランダ人、ニュージーランド人、イギリス人、スウェーデン人と、かなり国際的なチームだ。若い人から年配の方まで幅広い年齢層が揃っている。欧米系の人が多く、ガイドの説明に対して大きな反応を見せている。
ガイドは隊の前方と後方に位置し、その間に15人のメンバーが1~2メートルの間隔を保ちながら進むことになった。間隔を空けすぎず、詰めすぎず、注意を払いながら進む。装備はヘッドライトがついたヘルメットだけで、ヘッドライトが照らす場所だけが見える。それ以外の場所は漆黒の闇に包まれ、その広さも狭さもわからない。
靴ははいていないので、全員裸足だ。
洞窟はとにかくヌルヌルしていて滑りやすかった。
すべって転ぶことも多く、固い岩に足や腰をぶつけながら進んでいく。
洞窟の半分くらいは水の中だった。
胸まであるような深い水たまりもあったし、すべり台みたいに滑って降りていく壁もあった。人がぶつかるのがいちばん危ないらしく、前の人と間隔を詰め過ぎず、開きすぎずを保ちながら慎重に進んでいく。
洞窟の壁は、音をすべて反射させているようだった。いろいろな国の言葉やウォー、キャーと悲鳴が響き渡っている。この隊はかなりにぎやかなようだ。
洞窟の中を進むと、ヘッドライトが照らす範囲内に様々な景色が浮かび上がる。巨大な鍾乳石や奇妙な形の岩が現れ、その美しさに息を飲む。しかし、注意を怠るとすぐに滑って転びそうになる。洞窟内は寒く、湿度が高い。冷たい水に浸かると体温が奪われ、震えが止まらない。
ガイドの声が響き、次の指示が伝えられる。「ここからはもっと慎重に進んでください。壁をよく見て、滑らないように注意して!」その言葉に従い、皆が一層緊張感を持って進む。暗闇の中での探検は、予想以上に体力と精神力を試されるものだ。
鍾乳石の間の小さな通路を通り抜け、さらに奥へと進んでいく。この先には何が待ち受けているのか、誰も予想できない。心の中でドキドキと高鳴る冒険心を抑えきれないまま、暗闇の中へと進んでいく。
この先に広がる未知の世界。何が待ち受けているのか、その一歩一歩が新たな発見と驚きに満ちている。暗闇洞窟の探検はまだ始まったばかりだ。その果てしない闇の中で、どんな冒険が待っているのか。期待と不安が入り混じる中、探検隊はさらに深く、洞窟の奥へと進んでいく。
9.暗黒の地底湖で泥パック
暗闇洞窟を進んで、30分ぐらい経っただろうか。
狭い通路から次第に広がる空間にたどり着いた。天井が高く、左右にも大きく広がったこの場所。目を凝らして先を見ると、地面に反射したヘッドライトの光がゆらゆらと揺れている。水たまりみたい。いや、それよりも大きい。
そう、ここが目的地の漆黒の闇にたたずむ幻の地底湖だったのだ。
バシャンと音がして、ガイドが地底湖に飛び込んだ。どうやら、この地底湖に飛び込めということらしい。はあ、また泳がされるのか。でも、今回はライフジャケットはつけていない。溺れたらどうしよう。
しかし、ガイドの話によるとこの地底湖は溺れないらしい。
なぜなら、この地底湖は泥の湖。その泥の密度がかなり濃いため、中に入ると体が自然と浮いてしまうらしいのだ。しかも、この地底湖の泥はお肌にとてもいいらしく、この泥を体や顔に塗るとスベスベ艶々になるらしい。
地底湖での滞在時間は20分ほどだった。
各国から集まった海パンやビキニ姿の冒険者たちは、頭から足まで湖に浸かり、湖の底に溜まった泥を掻き出して体に塗りたくったり、暗闇の中をプカプカ浮いたりしていた。
謎の暗闇洞窟探検のゴールは、全身泥パックができる地底湖に浸かることだったのだ。
探検の様子は同行していたガイドがGoProで撮影していたため、思い出を後で振り返ることができる。
しかし、行き道があれば当然帰り道もある。体中に泥を塗りたくったせいか、行きよりも滑りやすくなっていた。行きよりも時間をかけて慎重に慎重に歩き、ようやく洞窟を出ることができた。
洞窟の篭った空気から解放され、生ぬるいジャングルの風が心地よく感じる。しかし、ホッとするのも束の間だった。目の前に広がる湖を渡らないと元の場所に戻れない。行きはジップラインで滑空したが、帰りにはその高低差のためジップラインが使えない。
代わりに用意されていたのはカヤックだった。このカヤックを漕いで広い湖を渡って戻るのだ。行きは5分で滑空してきた湖を、30分ほどかけてカヤックで渡り切った。ジップライン、水泳、洞窟探検、泥の湖、そしてカヤック。なんというアトラクションの数々だ。もう全身がヘトヘトだった。
それでも、湖をカヤックで渡り切った泥だらけの海パン&ビキニの仲間たちは、皆ニコニコしていた。刺激的で神秘的な体験を、ここでしかできない特別な冒険を共にしたのだから。その笑顔は、疲れた体を癒してくれるようだった。
暗闇洞窟探検は終わったが、その記憶は永遠に心に残るだろう。この冒険がもたらした興奮と感動、そして出会った仲間たちとの絆。それは何ものにも代えがたい宝物となった。
10.ご褒美はワイルドな洞窟料理
レイクサイドの建物に戻ってシャワーを浴びると、オープンエアなテラスへ案内をされた。
テラスの中央に座ると、バナナの葉が大皿代わりになった料理が次々と運ばれてきた。バナナの葉のうえには炭火で焼かれた豚肉や鶏肉がこんもりと盛られていた。もやしやきゅうり、パクチーなどの生野菜やお米で作ったビーフンみたいな麺もあった。卵焼きやナッツなども盛られている。
これが名物の「洞窟料理」らしい。
確かに、ジップラインや湖スイム、暗闇洞窟探検やカヤックでの冒険を表現したようなワイルドな内容だ。
食べ方がよくわからないので、周りの人たちを観察してみる。
どうやら、ライスペーパーに肉や野菜などの具材を包んで食べるスタイルらしい。
バナナの葉の上には、赤色、黄色、白色といたカラフルなおこわ風ごはんもある。この写真には写っていないけれど、すぐ横に普通のご飯も鍋で置かれている。もはや、米米祭りである。
スウェーデンから来たという女性のバックパッカーのグループと同じテーブルで食べることになった。片言の英語しか話せないので身振り手振りを交えて、互いにコミュニケーションをとることになった。ちょっと緊張してしまう。
でも、そんなことを気にする必要はまったくなかった。スウェーデン人の女性たちもスリリングな洞窟探検でテンションが上がっているみたいで、気さくにたくさん話をしてくれた。こういった人との交流も旅の魅力かもしれない。
11.米のライスペーパー包みは純白おむすび
大きなバナナの葉に盛りつけられた赤色・黄色・白色の三色のお米。もち米を混ぜて蒸したおこわのようだった。本来、東南アジアの長粒米は日本のお米に比べて粘りが少なく、おむすびに向かない。その点、おこわのモチモチな粘り気はおむすびに向いていそうだ。
ライスペーパーに、白いおこわを乗せて、炭火焼チキンと卵焼きを巻いてみる。日本の海苔というわけじゃないけど、その姿は白いおむすびにも見えないことはない。
今回の冒険のもうひとつの目的は、その地域でしか食べられていないおむすびの存在を見つけること。ベトナムのダナンやホイアン、フエなどの街中ではおむすびらしき姿は見つからなかったけれど、この洞窟料理の中でついにその姿を発見することができた。
白いおむすびにニョクマムのタレを少しつけて、かじってみる。
パリッ。ふにゅ。不思議な食感と、野趣あふれる味わいが口の中に広がっていった。爪の間に残っている洞窟の泥が、いいスパイスになっていたことだろう。
エピローグ
あれから5年が経った。
あの冒険の記憶は、今でも美しい色として残っている。寝台列車の中からみた黄金色の朝焼け。パール色に輝く天国洞窟。ジップラインの上から見たエメラルドグリーン色の湖。漆黒の闇に包まれた洞窟。そして真っ白いおむすび。
海パンとビキニの探検隊。
キラキラ輝くような冒険の世界。
それらを心に持ち続けること。
つまらない大人にならないために。
完
👉前編
👉中編
👉後編
※こちらの旅行記は、「1000日間で1000のおむすびを食す男」の中で、2019年8月~9月に書いた記事を元に、追記編集、再構成して書き上げたものになります。
※毎日、おむすびの食リポをしていますので、よろしければ読んでみてくださいね。↓
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ファンベースデザイナー、地域創生プロデューサーなどしてます。 おむすびnoteを毎日書いてたり、浦和レッズを応援したり… みんなが、好きなこと、応援したいことを素直に言える世の中にしたいなあ。 皆さんと、いろいろなコラボをしたいです! ぜひぜひご連絡ください!