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協力的な空気を醸成する。国内最大CVCコミュニティ運営者に聞く、人が集う理由とは?

広がるCVCの輪。国内最大CVCコミュニティ運営者に聞く、最近の変化とは』に引き続いてのインタビュー企画。

ですがその前に…
改めまして、東芝テックCVCでは、社内外にもっと自分たちの活動を知っていただきたいという想いから、PR・ブランディング活動の一環としてnoteで継続的に情報発信を行なっています。

手探り状態でスタートし、今でもいろいろと試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいますが、CVCを設立する企業が増え、最近ではCVC同士が交流する場で同じような課題や取り組み事例を徐々に共有できるようになってきていると感じています。

これはPRブランディングに限った話ではなく「CVCを立ち上げた後どうすればいい?」「他のCVCはどうスタートアップと連携しているのだろう?」「スタートアップ情報はどうやって入手すればいい?」といったCVC活動におけるさまざまな疑問を持つ人たちにとっても、CVCコミュニティは貴重な場になっているのではないかと思います。

前回のお話を聞いて、改めて「FIRST CVC」に人が集まるのは、そういうところにも理由があるのではないか、と思いました。そこで今回は、FIRST CVC代表の山田氏と東芝テックCVCの石井にコミュニティ活動に参加することの意義について話を聞いてみました。

業界やフェーズが違っても目的は同じ。CVCへの想いがコミュニティ拡大の源泉に

ーーCVC活動の情報収集に関する変化について聞かせてください。最近ではCVCが増えてきたこともあり、いろいろな方法で情報を得る機会が増えてきているように感じますがいかがでしょうか?

石井:そうですね、以前はいい事例があってもなかなか共有されにくいような、情報がかなりクローズになっていた印象はあります。そこからFIRST CVCのようなナレッジシェアする団体が出てきたことで、様々な機会が広がっているのではないかと思います。

ーーFIRST CVCはスタートアップとCVCの連携促進だけではなく、CVC同士のネットワーキングやコミュニティ形成にも注力されていると思います。石井さんもたびたび参加していると思いますが、実際にコミュニティに参加してどういう機会につながっていると感じましたか?

石井:こういったしっかりとテーマを持ったイベントを通して知り合ったCVCネットワークはとても濃いもので、副次的にどんどん関係をつくっていって1対1の関係にとどまらず、人×人、情報×情報というようにN対Nの関係になる、そういう重要なファンクションを持っていることが大前提にあると思います。そしてそのような有機的な広がりが、自社に留まらない業界全体のイノベーション推進において重要なポイントだと思っています。

CVCと言っても長く活動している企業もあれば、始めたばかりの企業もありますよね。当然、業界もフェーズも異なる人とコミュニケーションを取ることもあるのですが、それでも根底にある課題意識は同じで、やりたいことも一緒だったりするのです。なぜ自分たちがCVCをやっているのか、初志貫徹の精神を再認識させてくれる場という意味でも、コミュニケーションを通して学ぶことは多いと感じています。
それと、CVCに携わる人たちは基本的に前向きで、未来に向けて新しい事業を考えている人が多いと思っているのですが、それでも自発的に関係性を作ったり、自分のテリトリーを広げることが難しいと感じている人もいるかもしれないので、いろんな粒度の人がミックスした場でフラットに喋る機会にもなると思います。

山田氏:確かにフラットに喋れる機会というのはあるかもしれない。

石井:そこは山田さんの人柄や存在も大きいと思いますよ。

山田氏:それはうれしいですね。イベントをやっていて毎回特徴的なのが、ネットワーキングの時間がすごく盛り上がるということ。長く残ってくれる人も多いですね。

石井:みんな、滞在時間がめちゃくちゃ長いですよね(笑)。しかも同じ人とずっと話しているわけではなく、いい意味で初めましての人も顔なじみの人とも交流するし、いろんなCVC同士のつながりが生まれています。それに私もそうですが、多くの方がFIRST CVCの運営メンバーではないのに、自然と運営側にいるかのような気持ちになったり、人と人をつなぐ役割をやっていたりと、みんな協力的ですよね。

ーーなぜ、そんなに協力的な雰囲気が生まれているのでしょうか?

石井:やっぱり、前回も山田さんがおっしゃっていたように、CVCがスタートアップの選択肢の “ファースト” になることを目指している人が多いからだと思います。そして、CVCをやっている人は心のどこかで、CVCが大きなイノベーションのカギになると信じている。だからこそ、FIRST CVCのようにCVC業界全体を盛り上げていく活動に共感し、自発的に協力する人が増えているんだと思います。

ーー山田さんは、ポジティブな雰囲気を醸成するために心がけていることはあるんですか?

山田氏:私自身が心がけているというよりも、いい人の周りにはいい人が多いというか、FIRST CVCに参加してくれたいい人たちがいい人をつなげてくれるから、こういう前向きな取り組みができているのかなと。
スタートアップの方から資金調達を相談されたVCさんが、「いったん、FIRST CVCに行ったほうがいいですよ」って伝えてくださっているケースもあるんです。特に広告とかも打っていませんから、本当にレピュテーションだけでここまで広がってきたんだと思います。

ーーコミュニティ運営にはいろんな方が参加する難しさもあると思いますが、苦労することはありますか?

山田氏:そうですね、確かにコミュニティが広がってくると営業目的だけで参加する人が出てくるという話も耳にしますが、今のところは問題ないですね。

ーーそこはレピュテーションで広がっているところに秘訣がありそうですね。

スタートアップやCVCの人材活性化に必要なことは?

ーーFIRST CVCはCVCの業務支援やスタートアップの採用支援も手掛けられていますよね。最近は事業会社にいた人材がスタートアップに転職するケースも多いと思いますが、どのような人がスタートアップに向いていると思いますか?

山田氏:スタートアップに行くメリットやインセンティブを考えると、経営に近いところでいろんなことを早く経験したい人が向いているんじゃないでしょうか。そして、スタートアップはやることが常に変わるし、決まった業務ってほとんどないので、自分の業務範囲や職域を絞らずに楽しめる人がいいと思いますね。私もCFOをやりながらコールセンター業務の管掌にも携わっていました(笑)。でも、「え、コールセンターも見ないといけないの?」とは全然思わなかったですし、むしろ「これをやったらもっとコンバージョンが上がりそうだな」という施策をどんどん思いつく。そういうことを自分で決めてやれるのがスタートアップの醍醐味だと思うんです。

石井:ちなみに、僕からも質問していいですか?最近はVCからCVCに転職するケースも出てきている気がするのですが、そういう人たちはどんなところにCVCの魅力を感じていると思いますか?

山田氏:普通に考えて、CVCってすごく魅力的なポジションだと思うんです。それこそ、新しいテクノロジーやビジネスに触れられるのは、絶対に面白いじゃないですか。ファイナンスの側面で見ても、CVCって割と幅広い領域に携われるんですよね。マイノリティ投資だけではなく、本来はM&Aも考えますし、コーポレートファイナンスにおける幅広い選択肢を検討することができます。それは単純に投資だけをしている立場や、外部パートナーとしてコンサルティングだけをしている立場では、なかなか経験できない仕事内容だと思います。

石井:一方で、CVCの人材採用で「魅力を感じてくれる人はいるけれど最後の採用まで辿り着かない」という話を聞いたこともあります。

山田氏:そこは様々な要因があると思いますが、求めている人材とその人に対する待遇のギャップが大きいケースはあるかもしれませんね。

石井:確かに、CVCは財務的な要素、事業理解、社内外のコミュニケーション、ディール成立の交渉など高い専門性を求められることがけっこう多かったりするので、そこに対する企業側の理解度を高めていくことも重要かもしれないですね。そういう意味でも、CVCの世の中に対するプレゼンスを高めることが業界全体を盛り上げるためにも必要な気がします。

山田氏:分かります。FIRST CVCのコミュニティから一歩外に出ると、「VCは聞いたことがあるけど、CVCってなんですか?」と言われることも普通にありますから。CVCを運営している企業の名前は、日本中に知れ渡っているエンタープライズ企業であったとしても、CVCとなった瞬間にプレゼンスが一気に低くなる。世の中的にはまだそれぐらいの認知度だと思います。でも、ポテンシャルは非常に高いとも思っています。

ーー東芝テックCVCもPRブランディング活動を行なっていますので、共にCVCのプレゼンス向上に寄与できればと思っています。
最後に、山田さんから見る東芝テックCVCの印象を一言いただいてもよいでしょうか?

山田氏:東芝テックの、特に、リテールソリューション事業は、生成AIをはじめ、ロボティクス、EC、Web3など、いま世の中でもっとも変化の激しい領域での事業だと思います。だからこそ、今後の進化がとても楽しみです。また、CVCに関わる錦織社長をはじめ、鳥井さんや石井さんなど、専門性が高い知見を持たれていて、そして親身に向き合ってくれる方が多いと思います。

ーーそうおっしゃっていただけて光栄です。本日はありがとうございました。


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