アフリカの社会課題に”テック×アイデア”で挑むスタートアップ企業たち【ナイジェリア編】
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アフリカの社会課題に”テック×アイデア”で挑むスタートアップ企業たち【ナイジェリア編】

東芝テックCVC

今回は「ラストフロンティア」と呼ばれているアフリカのスタートアップ企業の動向を追ってみました。

「世界人口白書2021」によると、 2021年の世界人口は78憶7,500万人。そのうちアフリカの人口は13億人を超えています。さらに国際連合「世界人口予測2019(World Population Prospects 2019)」のデータ予測によると、2050年にはほぼ倍増するとみられています。世界人口予測2019の中間値のデータを基に、上位15カ国の人口推移が分かるバーチャートを作成したところ、2020年には3カ国のみであったアフリカが7カ国にまで増えるという結果もあります。

そのようなアフリカでは雇用や貧困、教育、医療、インフラなどで数多くの社会課題を抱えています。一方、人口増加やインターネットの急速な普及などに伴い、テクノロジーで社会課題解決に挑むスタートアップ企業が続々と登場している側面もあります。

こうした背景から、JICAによる開発途上国の起業家を支援するプロジェクト「Project NINJA(Next Innovation with Japan)」は、ポストコロナ時代の革新的なビジネスモデルやテクノロジーを生み出すアフリカのスタートアップ企業を支援するため「NINJA Business Plan Competition in response to COVID-19」を2月に開催しました。

さらに、8月には上記ビジネスコンテスト応募総数2,713社からナイジェリア企業を対象にしたNinja AcceleratorのDemo Dayが開催されました。

今回はこのビジネスコンテストのデジタル冊子を参考に、アフリカのスタートアップ市場と、ナイジェリアDemo Dayに参加した企業をピックアップしご紹介したいと思います。

アフリカ特有の社会課題解決に挑む、テック系スタートアップたち

なぜ今、アフリカでテック系スタートアップ企業が急成長しているのでしょうか?

冒頭でお伝えした通り、アフリカの人口は13億人を超え、世界平均の約2倍のスピードで増加しています。つまり、マーケット自体がシンプルに巨大であり、ビジネスが社会に浸透したときのインパクトも非常に大きいと考えることができます。さらに資料によると、アフリカ大陸の多くの地域で高速回線のインターネットが急速に普及しており、現状の課題をテクノロジーで一気に解決するようなイノベーションが起こりやすい土台が出来上がっているのです。

実際に、アフリカのスタートアップ企業の資金調達件数は2015年から右肩上がりで増加し、2020年にはテック系領域だけで359件、資金調達額は14億3,000万ドルを記録しています。

ちなみに、2020年はフィンテック系のスタートアップ企業が大きな盛り上がりを見せた年でした。決済代行サービスを提供するケニアのDPO Groupは2億8,000万ドル、モバイルマネー/決済サービスを知恵強するナイジェリアのPaystackは2億ドルもの資金調達に成功しています。他にもヘルステック、エネルギー、マーケティングなど様々な分野で大型の資金調達が行われました。

国別に見ると、2020年はナイジェリア、ケニア、エジプト、南アフリカの上位4カ国が全体の投資額の約80%を占めています。

なお、JAICA主催のビジネスコンテストの応募総数2,713社のうち、最も応募企業数が多かった国はナイジェリア(549 社)で、次いでウガンダ(460 社)、ケニア(341 社)の順となっています。

今回開催されたナイジェリアDemodayは特にヘルスケア・ロジステック・教育分野を中心に8社のアーリーステージ企業が参加しましたが、その中でロジステック(特にラストワンマイル領域)に注目してスタートアップ企業を紹介したいと思います。

農産物のラストワンマイル可視化が、食糧危機を救う?

最初に取り上げるのは、ロジステック領域で活躍するスタートアップ企業、Route Mastersです。現在、アフリカ都市部では安く安全に移動できる公共交通手段の情報を取得する環境が整っていないため、時間とお金、さらに健康までも失うケースがあります。これは公共交通機関利用者が日々直面している問題です。

これらの課題に対し同社は、通勤者が交通手段を計画、ナビゲートするのを支援しています。さらに同社は、機械学習、テレマティクス(※1)、データソースを活用し配車や輸送を自動化する貨物管理プラットフォームを開発。都市部の配送・配車業者をデータで管理することで、不正取引をする悪徳配送・配車業者を排除した状態で、ルートに合わせた配送と配車の自動化も可能にするようです。

今後、同社は首都ラゴス以外の地域やアフリカ大陸全体でのサービス提供も視野に入れ、2030年までに大陸最大の交通・モビリティデータプラットフォームになるというビジョンを掲げているとのことです。

※1 テレマティクス(telematics):自動車に通信システムを搭載し、さまざまな情報サービスを提供すること。


また、アグリテックのスタートアップ企業でありながら、ラストワンマイル領域で面白い取り組みをしているTradeBuzaも紹介したいと思います。

2050年までに人口が2倍以上になると予想されているアフリカでは、同時期に食糧需要も増加すると言われています。多くの小規模農家は金融機関にアクセスできないため、生産量を増やすための資金を調達することができません。

そして、これらのアグリビジネスに対して資金を提供しようとしている企業にとっては農業ポートフォリオの信用リスク分析とモニタリングを効果的に行うための業務データへのアクセス手段に課題があります。

同社のプラットフォームは、衛星リモートセンシング技術を活用して、小規模農家の農地情報の取得をサポートし、さらにテクノロジー活用により、生産者のプロフィールから、生産前の田植え、収穫、収穫後の取引情報までといった農産物に関するあらゆる情報をトラッキングして農作物の可視化と取引の効率化を図ります。それにより、金融機関の貸付業務の自動化を可能にしているようです。

さらに、消費者に農作物を届ける最後の区間におけるデータを、ラストワンマイル運用データとして外部に提供。契約農家の管理にニーズがある大規模農業事業者や食品メーカー、バイヤーといったアグリビジネス系のユーザーなど幅広いシーンで活用されているとのことです。

偽造医薬品を検知し、正規医薬品を安全に届ける

次に取り上げるのは、2016年創業のRxAll。同社は患者と医療従事者の双方が利用できるアフリカ最大の正規医薬品プラットフォーム「RxDelivered」を開発・提供しています。このサービスを活用することで、薬剤師は卸売価格で正規医薬品を仕入れ、患者はドラッグストアや薬局に行く時間やコストを省いて自宅に居ながら正規医薬品を購入することができます。また、卸売業者にとっても売上向上、事業エリアと認知度の拡大というメリットがあるのです。

なぜ正規医薬品にニーズがあるかというと、アフリカでは偽造医薬品の蔓延が社会問題化し、毎年多くの人が命を落としているからです。創業者のAdebayo Alonge氏も、かつて偽造医薬品の使用で21日間も生死を彷徨った経験から薬剤師になることを決意した人物。偽造医薬品を20秒程度で判定するハードウェアデバイス「RxScanner」を開発し、その精度は99.9%を誇ります。CrunchBaseの情報によるとRxAllは現在までに650万ドルを調達し、今後のさらなる発展に期待がかかっています。

もう一つ紹介したいのが、同じく2016年創業のLifestores Healthcareです。同社は薬局を中心に、医薬品の効率的な在庫管理プラットフォームを提供。ネットワークに参加する薬局が増えるほど医薬品の割引率が上がるため、利用する患者は医薬品を安く購入でき、薬局もより良い患者データを取得できるので、双方にメリットが生まれます。

アフリカでは多くの消費者が体調不良や病気になると最初に薬局を訪れます。しかし、肝心の薬局側で患者データの効率的な収集や適正な在庫管理ができていないため、消費者が必要な医薬品を求めて何軒もの薬局を回るケースも少なくありません。

同社のシステムでは、医薬品の有効期限のトラッキングや薬剤師のメモ、自動で処方箋を補充する機能などにより、薬局の在庫最適化および顧客満足度の向上を実現しています。まだテクノロジー活用が行き届いていない薬局に引き続きフォーカスし、今後アフリカ全土の薬局業界を革新するという大きな目標にチャレンジするそうです。

まさしく、「必要は発明の母」

ここまでスタートアップ企業数社の事例を見ても分かるように、アフリカは先進国のように環境が整備されておらず、早急に解決しなければならない社会課題がたくさんあるからこそ、テクノロジーとアイデアで何とか解決しようとする野心的なスタートアップ企業が次々と誕生している気がします。

新規事業創出の本質は社会に新しい価値をもたらすことではないかと思いますので、まさしく課題解決型であるアフリカのスタートアップ企業のアプローチはとても勉強になります。

ナイジェリア以外にも面白い事例がありそうなので、次は他国のスタートアップ企業の情報も調べてみたいと思います。

なお、本記事はJICA主催「NINJA Business Plan Competition in response to COVID-19」のデジタル冊子、および、後日ナイジェリアにて開催されたNinja AcceleratorのDemoDayの内容を参考に執筆しています。

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