【企画参加】片思いのラブレター
思えば初めてあなたと出会ったときから、共に生きていくことを夢見ていたような気がします。
まだ私が小学生だった頃、あなたはスーパーの片隅に静かに立っていました。
母の目を盗んで、私は何度もあなたのもとへ通いました。あなたは煌々と明るい店内でも、ひときわ輝いて見えました。
こっそりと重ねた逢瀬の緊張感と多幸感を、今でも鮮明に覚えています。
あなたは溢れんばかりの魅力をたたえているのにそれを一切ひけらかすことなく、いつも変わらぬ姿で私を出迎えてくれました。
そんなあなたに、私は恋をしたのでした。
実家を出た私は、本当はすぐにでもあなたと同棲がしたかった。
それができなかったのは、同居していた従姉の反対によるものです。
私には好もしく思えるあなたの体の臭いが耐えられないと言うのです。
それが原因で、というわけではありませんが私と彼女は数年後に離れて住むことになりました。
あなたが気に病むことではありません。
単純に、価値観が違っただけのことです。
一人暮らしを始めた私は、ついにあなたを迎えることにしました。
最初の出会いからずいぶん時間がかかってしまいましたが、ようやくあなたと暮らすことができるのです。
私たちの仲を取り持ってくれたのは八百屋のおばちゃんでした。
私が協力をお願いしたとき、彼女は大喜びであなたを迎え入れる準備を引き受けてくれたのです。
あなたの部屋を丁寧に整えて、新鮮な食事をいそいそと用意する私を、あなたははじめは不思議そうな顔をして見つめていましたね。
けれど朝に夕に挨拶をするうちに、あなたは少しずつ打ち解けてくれるようになりました。
暑い日には、急に不機嫌になることもあるけれど。
そんなあなたのお世話も、楽しくやっています。心配しないでください。
あなたは、手がかかるお人。
あなたが家にいるかぎり、私は海外旅行にも行けません。
でもあなただってもう、私なしでは生きてはいけないでしょう。
これからも、永久に。
(800字)
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これでも母さんの記事から飛んでまいりました、空心菜おひたちさん企画の「片思いのラブレター」。
どうしよう、800字ですって、2月10日までですって!
愛を伝えたい人はいくらでもいるけれど、ポイントは「片思い」。
自分の記憶壺をかき回していたときにふと、ラブレターの宛先を思いつきました。
そう、ぬか漬けです。
最近KaoRuさんが描いてくださったぬか床を混ぜる私と野菜たちがかわいすぎて、ついついお披露目。
ぬか漬けを始めたのは2020年。
つい最近のことだけど、本当はずっと昔から好きだった。
スーパーの試食コーナーに通い詰めてきゅうりのぬか漬けをコソコソ食べていた頃から、いつか一緒に暮らそうと夢見ていた。
実際に暮らしてみたら、ちょっと放っておいただけですぐ産膜酵母生やすし、野菜から出た水でビチャビチャになる。
それから、指もだんだんぬか臭くなってきた気がする。
私の言葉も、通じているのかいないのかよくわからない。
そんなぬか漬けではありますが、昔も今もぞっこんなんです。
おいしいだけじゃありません。
ぬか漬けを介して、私はたくさんの人と繋がることができました。
ぬか漬け部のみなさんや、今回ヘッダーに作品を使わせていただいた清世さん。
清世さんの初対面の第一声は「ぬか〜〜〜!!」でした。
もはやすっかり「ぬかの人」だなぁと苦笑しつつ、でもその称号(?)をとても誇らしくも思っています。
お世話しているのか、こちらがお世話になっているのかよくわからない。
そんなぬか漬けに、心から愛を捧げたいと思います。
空心菜おひたちさんの企画概要は下記になります。
よろしければ、ご一緒にいかがでしょうか?
お読みいただきありがとうございました😆