女の子同士の怖い話

今は昔、俺がカフェでバイトしていた瞬きくらいのごく僅かな期間に起きた出来事である。

そのバイト先にはお世辞にも可愛いとは言えないブスな女の子が働いていた。名前はアリス。

別にみんなアリスちゃんに対してブスだからどうと言う感情を抱いている訳ではなく、ただ事実としてブスがあるだけでみんな仲良く働いていた。

ある日、仲良く飲み会をしていた時のこと。バイト先で一番可愛い女の子が「アリスちゃんってめっちゃ可愛いよね〜。なんで彼氏できないんだろ〜。」とか言い出した。

？？？？？？？？？？？？？？？？？？

いや、全然可愛くないよ。酔っ払って頭が上手く働いていないのかな？それともめちゃくちゃ頭が働いた戦略的なセリフなのか知らないが、明らかにおかしな事を言っていた。人狼ゲームだったら今夜の投票はこの子で決まりだろう。

それで終わればまだよかったものの、そこから恐ろしい事態に発展する。その子は「アリスちゃんってめっちゃ可愛いと思わない？？」っと俺に対して話を振ってきたのである。

俺はどう答えればいいのだろうか。とてもフリの効いたボケと捉えて「いやいや、何言うてますねん！！めちゃくちゃブスやないかい！！！」っと言いながらアリスちゃんの頭を引っ叩けばよかったのだろうか。

そんなこと本当にやったらアリスちゃんが泣いちゃうんじゃないかと流石に出来ずに俺は、「いや、本当にアリスちゃん可愛いですよね〜！可愛すぎて高嶺の花になっちゃってるんじゃないですかね〜！！！」っと悲しい嘘をつく事になった。閻魔大王様も泣いている。

すると周りは「本当に思ってる？？なんか今のセリフ、軽い男っぽい」っとこっちが損する羽目に。

いやいや、本当には思ってないよ。全く大嘘だよ。めちゃくちゃブスだよ。めちゃくちゃブスって言ってやろうか。でもこの状況に及んでそんなこと言えるはずもなく一方的に当たり屋にぶつかられただけである。

アリスちゃんを守るために気を遣った俺の優しさは、儚くも勇敢に自らの腹を刺した。

いわゆる女子同士の褒め合いと聞く、女の子にはよくある光景なのか。それともあの子の眼球が逆さまについていて、本当に可愛く見えていたのか、今となっては確かめようもない。今じゃなくても確かめようがない。

そもそもどんな状況でも「〇〇ちゃんのことどう思う？？」っと聞かれたら、その子が可愛くてもブスでも「めっちゃ可愛いと思います！」っと答えるしか選択肢がないのだ。選択問題ではなく、応募者全員サービスなのだ。 

この質問をされた方は損しかしないが、どうにも逃げる手段もない。

生け簀の中はこんな景色だったのか。