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さといも隊長 -勘とリズムの友人- #029

同年代の友人「さといも」、はわれわれの間で「隊長」と呼ばれている。もうかれこれ20数年来の友人である。

彼とは大学生の時のコンビニのバイトで出会った。さといも隊長はとにかく仕事が早い。いつも動き回っている、というより、動いていないと落ち着かないようだった。

われわれは住んでいるところが近かったこともあり、大学を卒業後もよく飲みに行ったり、そのあたりをぶらぶら歩いていた。さといも隊長と私ともう一人の友人の3人は、ある時ショッピングモールにいた。

つなまよ&友人「トイレに行ってくる」
さといも隊長「お、じゃあ待ってる」

私と友人がトイレから出ると、隊長がいなかった。

トイレの隣はスーツを売っている店だった。隊長はレジで支払いをしていた。

「スーツ買った」

決めるのが早すぎではないか。

トイレに行っているほんの数分の間に、隊長がスーツを買っていたことに私達は驚いた。

もちろん、最初から買おうと思っていたわけではなかった。ちなみにその時は別に酔っていたわけでもない。どうやって決めたのか、と聞いた私に、隊長は「勘で」と言った。隊長は、試着などしないのである。

隊長の座右の銘は、「勘とリズム」らしい。

別の時には、隊長は急に布団を買おうとしていた。

「布団?今買うのか?」
「部屋が寒いんだよな」

布団は道で見つけて通りすがりに買うものなのか。隊長はそんな私の戸惑いはお構いなしである。

その時は、手で持ち帰るのはちょっと…、と現実的に考えたようで、買わなかったのは、その後も一緒に歩く私にとって幸運だった。
 
飲んだ後、店から駅に帰る途中で、さといも隊長は転んだ。

幸い、けがはなかったが、スーツの膝の部分が破れていた。

「まあいいや」

いいのか。隊長のあまりの屈託のなさに、こちらが動揺した。

隊長ともなると、細かいことは気にしないのである。


しかし、隊長は必ずしもいつもポジティブ、というわけでもない。

隊長にだって仕事に行きたくない朝もあるようだ。

そういう時、どうしてるの?と聞いた私に隊長は、朝歌っている自作の歌を教えてくれた。五七五七七の節回しで歌うらしい。

「行きたくないー、行きたくないけど、行きたくないー。だけど行かなきゃ、生きていけないー」

そうやって、俳人のように歌いながら、隊長は準備をして家を出る。


ある時、蕎麦屋のメニューで鴨南蛮そばを見た、隊長は言った。

「なんで鴨って、ネギっしょってるんだろうね」
「それはことわざだから、本当にしょっているわけじゃないよ」
「そうなのか、じゃあなんでしょってるの?」

話はあまり、通じない。しかし、私は隊長の発想が好きである。元気がでるからだ。

食べ物にあまり気を遣わないから、というのもあると思うのだが、隊長は最近元気がない。彼の存在が、自然に周りに(時に困惑と)元気を与えるためにも、元気でいて欲しいと思っている。

2023年11月18日執筆、2023年11月26日投稿

すごい友人、同僚シリーズ

自己紹介とご挨拶、読んでくださると嬉しいです。


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