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毛のレベルをつける -同僚のとんでもない趣味-【同僚偉人伝 -ハルさん編-】#013

「つなまよさんは、3だね」

踊るさんま御殿というテレビ番組の「誰にも理解されない私の趣味」というコーナーに、「人の毛のレベルを測る」で投稿したんだよね、と同僚のハルさん(精神保健福祉士)は、私にこっそり打ち明けた。

そして唐突に、私の腕毛のレベルを宣言した。私の腕毛のレベルは薄いところで3、らしい。手の甲の外側の濃い一部分は?と尋ねてみると、6という答えだった。どういう基準なのか分らないが、確信に満ちている。最高はレベル10らしい。

ハルさんは動物好きだ。毛のある動物だけでなく、爬虫類も好きで、犬やトカゲやいろいろな動物と暮らしている。動物だけでなく、人の毛も好きなようだ。そしてレベルをつけている。

私が仕事中パソコンに向かって、マウスを操作している時、ハルさんは私の後ろから手を伸ばし、突然私の右手の甲を撫でた。

「え?」
「きゅーきゅー」
「は?」
「きゅーきゅー、って言ってる」
「…?」
「鳴いてるんだよ。きゅーきゅー」

私の右手の甲の部分が動物に見えたらしい。鳴いているという。どういうことなのか。

「ハルさん、つなまよさんはお仕事中ですから、触る時はちゃんと声をかけないとダメですよ」

近くで見ていた先輩のヨリさんはそう言った。そういう問題ではないだろう。「だって、動物が鳴いてたから」とハルさんは言い、ヨリさんは「でも、つなまよさん、急だとびっくりしますよね?」と優しく笑っている。私は「まぁ、たしかに…」とは言いつつ、何にびっくりすればいいのかわからなかった。


職場には職員食堂があって、お昼どきは大変混み合っている。ある日、ハルさんと、同じく同僚のとけいさん(女性、精神保健福祉士*)、私と、もう一人の同僚の男性の4人でお昼を食べていた。

ハルさんは、「あ、あの人は、7だね」などと急に言う。声が大きいため、「ちょっと、ハルさん、本人に聞こえちゃうって」と私は言うも、「あ、あの人は!…8.5だね、すね毛が」と嬉しそうにしている。

突然とけいさんが腕まくりをして、腕をハルさんに差し出した。

「私、剃ってないんだけど見て!いくつ?」
「うーん…これは、0.5だね。いや、1かな」
「そっかー、1か」

二人は真剣だ。もう一人の同僚の男性が「とけいさん、女性なんだから毛を見せちゃだめだよ。ハルさんも冷静にレベル測ってる場合じゃないでしょ」と、至極もっともな注意するも、とけいさんは「だって冬だから」と謎の理由を述べた。

その後、その男性の同僚が、「実はとけいさんは、1年間ずっと口紅が唇からはみ出している」と暴露し、とけいさんが「なんで一年間教えてくれなかったの—」と言っている。お昼を味わうどころではないのであった。

(追記)
この当時の職場はめちゃくちゃに忙しく、いつもみんなバタバタしていた。だからなのか、それは関係ないのか、会話は無茶苦茶で日々こんな感じであったが、その後の付き合いで、別に忙しくなくても、こういう会話なのは変わらない、と分かったのだった。

*とけいさんシリーズ

2023年10月6日執筆、2023年10月11日投稿


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