自分の時間を生きる。建築家が豊かに暮らすコツ
僕は「時間」に対して真剣に向き合っているつもりだ。
日々、周りの建築家・デザイナーたちを見ていると、時間の捉え方を曖昧にしているなと感じている。おそらくこれは他の仕事をしている人にも共通していると思う。
世の中に唯一平等なものがあるとしたら、それは「時間」だ。立場や世代、年収や知識に関係なく「時間」だけは平等である。
にも関わらず、「時間」の扱い方が雑な人が多い。そもそも「時間」を自身でコントロールしようとする意識が希薄な気がする。特に日本人は。
当たり前だが、僕の24時間も、クライアントの24時間も同じ24時間だ。そして、僕にとっての24時間の価値と、クライアントにとっての24時間の価値も対等である。優劣はない。大事なのは、社会的価値ではなく、あくまで個人同士の価値の話だ。
時間の捉え方が豊かな暮らしを実現する。
僕はこうした価値観をすごく大切にしている。
むしろ時間の捉え方次第で、豊かな暮らしが実現出来るか決まるといっても過言ではない。と思っている。
僕は「豊かに生きる建築家」とか言ってみたり、アウトドアブランド「we know enough<」を始めてみたり、自由で奔放な生き方をしているように見えるかもしれない。時間にも多少ルーズそうに見えるかもしれない。
しかし僕は、時間だけは必ず守る。遅刻はほぼしないし、締め切りも遅れたことはほぼない。そこには結構こだわりを持って仕事をしている。自由に、そして「豊かな暮らし」がしたいからこそ、時間が一番大切なのだ。
だから、他人の時間を奪う遅刻や提出の遅れなどはしないし、出来るだけ無駄を省き効率化をして、自由の時間を確保する。家に帰ってソファーに座り、のんびりコーヒーを飲むために。家族と一緒に晩ご飯を食べるために。
締め切りは自分で決める
周りを見渡しみると、僕の時間の捉え方は少し独特なのかもしれない。
当然仕事である以上、いつも締め切りが存在する。そしてそれは他人によって与えられるものがほとんどだと思う。けれど、僕はいつも締め切りは自分で決めるようにしている。
例えば、
クライアントから、1ヶ月後までに、これこれを提案してほしいというオーダーが入ったとする。集中すれば、2週間で終わる内容だ。仮にプレゼン日を7/1としよう。
すると締め切り直前の2週間前の6/15頃から作業に入る。それまでの2週間はアイディアを練る段階だと言ったり、リサーチ期間だと言って、実際にはほとんど稼働しない。結局締め切り前に焦って残業して、または徹夜までして提出するのがオチだ。
これがパターンAとする。
建築家に限らず大体みんなこんなものだと思う。
(そうではない方はごめんなさい。)
では、このパターンはどうか?
仮に締め切り1週間前の6/24から海外出張が入っていたとする。
すると実質的な締め切りが6/24となり、6/10頃から作業に取り掛かり、2週間掛けて仕上げることができる。
これがパターンB。
こういう経験もそんなに珍しくはないと思う。
ではこの次のパターンはどうか?
締め切り直前1週間はバタバタしたくないから、余白として残そう。だから、6/24を締め切りにする。その為に6/10頃から作業を始めて、2週間集中して仕上げよう。最後の1週間はどうプレゼンするか、のんびりサウナにでも入りながら考えよう。
これがパターンC。
僕のいつもパターンだ。締め切りは自分で決める。
整理すると
*パターンAは、他人が指定した締め切りに合わせて動いている状態。つまり、他人の時間で生きている。
*パターンBは、自分の仕事に合わせて動いている状態。仕事の時間で生きている。
*パターンCは、自分の時間に合わせて動いている状態。自分の時間で生きている。
どれが理想かは、言うまでもないと思う。
常に計画を立て、動けている人にとっては当たり前の話かもしれないが、意外にこれができている人は少ないように感じる。ほとんどの人が他人の時間、または仕事の時間で生きている。
そして、忘れてはいけないのは、どのパターンでもアウトプットのクオリティに差が生まれないと言うことだ。結局実働期間は2週間だし、それぞれの締め切りに合わせて、集中して仕上げている。なんだったら、最後の1週間に余白を持っているパターンCが、一番クオリティーが高いのではないかとすら思っている。
であれば、仕事でも高いクオリティを保ちつつ、プライベートもゆとりが生まれるパターンCを目指すべきではないだろうか。だから締め切りは自分で決めないといけないのだ。
予定に上下はない。
パターンAまたはBの方が、緊張感が違うとか、切羽詰まった時の集中力が違うとか言う人もいるかもしれないが、それは違う。
締め切りに上下?をつけている時点で、その思想からは抜け出せない。
僕は、クライアントからの締め切りも、自分が行く予定のサウナの予約も、同じ強度で、同じ緊張感で守るべき締め切りとして扱っている。
この二つの予定を同等の存在だと、いかに信じ込めるかがポイントである。
実際は別にサウナなんていつだって行けるし、いくらでも予定を変更できる。しかし、一度それを許せば、締め切りに上下が生まれてしまう。
だから、僕は締め切り直前に堂々とサウナに行く。意地でも。
自分の時間を生きる。
最初は自分を騙し騙し、大小様々な予定に対して、こうした価値観で行動していくと、本当に自分で決めた予定とクライアントからの予定に境目がなくなってくる。予定の大小すらもなくなってくる。大きな仕事のプレゼンも、スーパーで買い出しも同じ予定として扱える。
よく考えて欲しい。
仕事の場合、会議などをセッティングする時には必ず相手の予定を確認する。そして、相手がその時間は先約があるということは当たり前に起きる。その時に、その先約は仕事ですか?プライベートですか?なんて聞く人はいない。
だから家でのんびり1時間かけてポトフを作りたいと思えば、先約があると堂々と言えば良い。
ポトフの時間も会議の時間も、同じ1時間だ。
相手から見たら、ポトフしているのか、別の会議をしているかはわからない。1時間は1時間だ。
自分の時間はだれも守ってくれない。そして、他人はどんどん仕事という名目で自分の時間を奪いにくる。だから「 ポトフ > 会議 」くらいの価値観バランスでいるのがちょうど良いのだと思う。
自分の時間は自分で守る。
他人の時間で生きない。
自分の時間を生きる。
ただそれだけだ。
これがどんな仕事をしている人でも共通の、「豊かな暮らし」を実現するための第一歩だと思うし、一番重要なコツかもしれない。
夏休みの宿題を、いつも最後の数日でまとめてやっていた人が、今ではこういう思考になれているのだから、誰でも簡単にシフトできるはずだ。と言うことだけ最後に補足しておく。
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