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20240716 イラストエッセイ「私家版パンセ」0036 日本は二流国?

  命の危険にさらされた時、人は財産と自分の命のどちらを選ぶでしょうか?
 間違いなく自分の命です。命は金で買えないからです。
 戦後、日本はアメリカ(西側諸国)の同盟国として、あらゆる紛争、戦争に多額の金を出しました。
 けれども、どれだけ多くの金を払っても決して尊敬されることはありませんでした。
 武士道精神においても、騎士道精神においても、自らの命捧げること以上に崇高な行為はありません。
 はっきり言って、金だけ出してお茶を濁すのは卑怯者のすることです。
 そういう意味で、日本は二流国と見られているのだと思います。
 金だけ出して血を流さない者は尊敬もされないし、信頼もされない。
 ぼくはそれは真実だと思います。

 しかしよく考えていただきたい。
 一流、二流を決める価値の尺度は何か?
 その尺度は絶対に正しいものなのか?

 武士道精神も騎士道精神も「男の論理」です。
 ぼくが言う「男の論理」とは、勝者でなければ子孫を残せない生物としての性質に由来する男の論理です。
 その論理は、完全に競争原理に基づく能力主義です。
 一流というのは、あくまでもその原理の中で一流ということです。
 ちなみに「女の論理」は全ての存在に価値のある(子を産めるという意味で)共生原理だとぼくは思っています。
 共生原理から見れば、命を投げ出すことは崇高でも何でもない。戦争は愚行です。そもそも存在に一流二流を決めるのも間違っている。

 ぼくは戦後、平和憲法の元で育ちましたので、そのようなバイアスを持っています。また長く学校の先生をやってきたので、若い人を戦場に送ることにものすごく抵抗があります。そのことを承知の上で言いますと、日本はあえて二流の生き方を選択したのだと思います。
 二流の生き方を選択したのだから、むやみに威張らぬ方が良い。
 江戸時代の武士は実に窮屈でした。(ぼくの先祖も武士でしたけれど)
 一方の庶民はお武家様には頭を下げるけれど、歌舞伎や吉原で面白おかしく生きていたんですよね。
 もちろん尊敬はされたいけれど、俺は一流だぞって胸を張るために、払う代償が大きすぎる。それを日本は学んだんじゃないかなって思います。

 戦争を抑止するためには軍備が必要。いつでも血を流す覚悟がある国民は攻められない。
 いや、軍備があるから戦争になるのだ。ぜったいに血を流しませんという国民は相手にされないけれど脅威にもならない。
 どちらの立場も戦争を避けたいという点で一致しています。どちらも頑張って戦争にならないことを願っている。
 どちらの立場をとるにしても、やっぱりあまり威張らぬ方が良いとぼくは思っています。あえて二流国の立場をとる。
 ぼくの立場を言えば、勝海舟の「抜かない名刀」というものかな。自衛隊の人たちには敬意を払っています。名刀であって欲しい。でも、抜かない名刀です。先の大戦で亡くなった方たちにも敬意を払います。正邪を超えて、哀しみを持って。

 もう一つ重要な視点があると思っています。それは戦争によって利益を得る人たちがいるということです。彼らは人間の崇高な感情を利用します。美しい言葉を吐きながら私利私欲のことばかり考えている悪い人って、残念ながらいるんですよね。二流国でいいんですか?一流の国になりましょうって口では言うんですけれど。

 余談ですが、戦中の庶民の日記などを読みますと、日本は一流国になるべきだ、もっと頑張るべきだ、戦争もやむなしって騒いでいたのは軍部、政治指導者というより一般庶民なんです。これはコロナ禍の経験で分かると思います。むしろ軍部のエリートたちは冷静に戦争を回避しうとしてい部分もあります。台湾有事だ大変だって騒いでいる人も多いですが、外交官経験者はもっと冷静にという発言もしています。庶民が賢く冷静であることが大切です。
 ウクライナ戦争は、軍備増強のきっかけになりましたけれど、同時に、今の時代こんなことやってられないな。一流国だろうと二流国だろうと、やっぱり戦争は紛争解決の手段としては高くつきすぎるなってことも学んだのではないでしょうか。

 パリオリンピックが開幕しますね。スポーツで一流になるのは大いに賛成です。笑 がんばれニッポン!

オリジナルイラスト 旧日本陸軍歩兵装備





私家版パンセとは

 ぼくは5年間のサラリーマン生活をした後、キリスト教主義の学校で30年間、英語を教えました。 たくさんの人と出会い、貴重な学びと経験を得ることができました。もちろん、本からも学び続け、考え続けて来ました。 そんな生活の中で、いくつかの言葉が残りました。そんな小さな思考の断片をご紹介したいと思います。 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。


 

 
 

 


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