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20240605 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 006 ホフマン「黄金の壺」 

 ホフマンは、ドイツ後期ロマン主義の作家で、近代幻想文学の創始者とも言われています。
 もともと神話や伝説は超現実的、神秘的な物語を扱いますけれど、それを現代社会を背景にして描いたものが幻想文学と言えると思います。
 ゲーテは古典主義に分類されますが、ぼくはゲーテの中にもロマン主義的なものを感じます。ていうか、ドイツ文学の根底にはものすごくロマン主義があるように思います。ホフマンはゲーテより三十歳若く、若い時には愛読していたそうです。もともとドイツにはロマン主義的、幻想文学の伝統があるように思います。
 ホフマンの影響は大きくて、カフカももちろんそうですけれど、ドストエフスキーやビクトル・ユーゴーも影響を受けています。日本文学でも、漱石の「吾輩は猫である」は、ホフマンの人語を話す「牝猫ムルの人生観」がヒントを与えたと言われています。
 漱石先生に影響を与えたということは、芥川、川端など、あらゆる日本文学にも影響を与えたということになります。
 ぼくは個人的に、村上春樹さんもこの系譜に位置すると思っています。

 さて、ホフマンの作品でぼくが一番好きなのは、岩波文庫に収録されている「黄金の壺」。数年に一度は読み返すほど大好きな小説です。
 緑色の蛇に恋した夢見がちな青年のお話。
 高校生の時に読んで、主人公と自分をだぶらせながら読みました。笑
 還暦を過ぎたわたくしも、昔はロマンチックな文学青年だったのです。
 自分を夢見がちな文学青年と思っている方は(もちろん女性も)ぜひお読みください。風の音、鳥のさえずりに不思議なメッセージを聴き、物陰に奇妙なものの姿を見るようになるかも知れません。 笑
 あらゆる文学作品にホフマンの影響を見ることができるようにもなります。
 

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