20240821 イラストエッセイ「私家版パンセ」0044 読書について
今日は、読書のすばらしさについてお話ししたいと思います。
読書はとても創造的な営みです。
まず、文字という記号を音声に変換するという作業を行います。
次に音声から具体的な事物や行動を思い描きます。
この間、脳はフル活動しているんです。画像や動画を見るよりこの部分が多いわけです。
文章は不完全です。ですから、登場人物の顔つき、表情、動き、背景、小道具など、全て自分の想像力で補ってゆかねばなりません。
あたかも自分が映画監督になり、役者になって脚本を映像に変えてゆくように。
読書は創造的なんですね。
よく言われることですが、映画より原作の方が面白いことが多いんです。
映画は数百億円かけてプロフェッショナルな芸術家たちが作り出したイメージです。
普通の人が自分の頭で想像したものの方が面白いって、不思議だと思いませんか?
もう一つ言われるのが、読書はディープ・シンキング(深く考えること)だということです。
読書は単に情報を得ているのではありません。読み進めながら、作者と一緒に考えているのです。
読書している時の脳の働きは、深くものを考えている時と同じだと言われています。
スマートフォンを使えば、毎日膨大な量の情報を手に入れることができます。でも深く考えることができなければ、その情報を使って判断することができないばかりか、偽情報に騙されてしまいます。
しかも情報は取り込めば取り込むほど満足感があって、自分の考える力が衰えていることに気づかないのです。
読書は優れた芸術がみなそうであるように、一つの体験です。
迷宮体験と言っても良いでしょう。読む前の自分と読んだ後の自分では違う人間になっている。
実存主義的に言えば、本物の「経験」になる。
小説の場合、読者は登場人物と一緒に一つの人生を生きる、と言っても良いかもしれません。それが本物の経験ということです。
知識として知っていることと、自分が経験を通して学んだことは、その人の人生において持つ意味の大きさが違います。
本を読むと頭がよくなる上に、経験を重ねることができます。
読書の習慣は間違いなく人生を豊かにします。
先日、「パーフェクト・デイズ」という映画を観ました。
主人公の平山氏の数少ない趣味は読書でした。
あのシーンを見ただけで、彼がどれほど豊かな人生を生きているかが伝わりますね。
私家版パンセとは
ぼくは5年間のサラリーマン生活をした後、キリスト教主義の学校で30年間、英語を教えました。 たくさんの人と出会い、貴重な学びと経験を得ることができました。もちろん、本からも学び続け、考え続けて来ました。 そんな生活の中で、いくつかの言葉が残りました。そんな小さな思考の断片をご紹介したいと思います。 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。