マガジンのカバー画像

スキが100を超えたもの

22
スキが100を超えたものだけ集めました。皆さんが読んでくれたこと、ほんとうに嬉しいです。(ほぼ100もいれちゃう)
運営しているクリエイター

#夏の思い出

あのひとの香水は、大人の香りがした

あのひとの香水は、大人の香りがした

サングラスを頭にのせて、髪をかきあげながらそのひとはやってくる。かっこいい車に乗って、都会の風をまとうそのひとは、わたしにいつもトキメキを教えてくれるひとだった。

そのひとは母の友だちで、お日さまの香りの代わりに、いつも花の香りを纏っていた。うちでは嗅ぐことのないその香りがわたしはだいすきで、母に「あの香りにして!」と駄々をこねては怒られていた。今思えばきっと高い香水だったのだろう、わたしも!と

もっとみる
夏の終わり、永遠に"普通"になれない私たち

夏の終わり、永遠に"普通"になれない私たち

夏の終わりに瞬いたのは、まるで花火のような愛だった。

「初乗りはいくら?」と聞かれた先日。タクシー待ちをしていたわたしに声をかけたのは、青の宝石を胸元につけた、腰の曲がったおばあちゃん。どうやらおしゃべり好きのおばあちゃんらしく、わたしが質問に答えても永遠に話しかけてくる。暑さでイライラする毎日、タクシーも来なくて気分は最悪。めんどくさいな、なんて少し思ってしまう。

おばあちゃんは「あなたのワ

もっとみる
痛くて夏い

痛くて夏い

海が見えた懐かしい坂を、自転車の二人乗りで駆け抜けたあの夏。

夏の終わりが近づく季節、もうセプテンバー。9月のはじまりはいつも、なんだかソワソワして、少し寂しくなる。夏にサヨナラはなかなか言えなくて、きらっきらに眩しい太陽と思い出が、胸をざわめかせる。

秋の風が吹く今日は、夏の残り香を探してさまよっている。花火ができなかった今年、まだ「若者のすべて」を聴けないままでいる。最後に花火をしたのはい

もっとみる