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自分の「好き」と向き合う、すまいづくり。 Interview 桐島かれんさん 後編

葉山でも指折りの、美しい海を臨む高台に構える日本家屋にご夫婦でくらすモデルの桐島かれんさん。後編では、「古い家」が好きだというかれんさんが思う、古いものに手を加え、育てていくことの愉しみについて。また、理想のくらしを描き、実現するためのすまいの考え方を伺いました。

▼ 前編は、こちら。


門をくぐり玄関へ着くまでのアプローチ。
緑が瑞々しく生い茂り、自然の中を歩くようで心地いい。

― 現在は東京と葉山、八ヶ岳の三拠点生活を愉しまれているかれんさん。さらにもうひとつ拠点をつくれるとしたら、どんなくらしをしてみたいですか?
 
桐島:ずっと、茅葺き屋根の家に憧れています。土地さえ見つかれば、古民家を移築して茅葺きを張って建ててみたいと思って物件を探していたほど。その間に、この日本家屋に出合えたので、十分満足しているのですけれどね。

― 葉山のおすまいも然り、かれんさんの中で「古さ」は心惹かれるポイントのひとつなのでしょうか。
 
桐島:思えば、独身の頃から古い物件を選んで住んでいます。わたしは「半分アメリカ人」で(スコットランド系アメリカ人である父と日本人の母)、母の趣味もあって西洋のものに囲まれて生活してきました。そんなこともあり、日本の伝統的な建築やしつらえは新鮮で魅力的に映るのかもしれません。

一方、夫は兵庫県出身で古い日本家屋で育ったんです。土間や水屋があって、鶏を飼っていて、それはもう素晴らしい家だったそうです。ところが、ご近所さんが続々と古い家をリフォームしていくのを見て、その家も取り壊して近代風の家に変えてしまって。そのことが、今でも心残りなんだそうです。

古いものをいかに育てていくか。手を掛ければ掛けるほど、価値は生まれる。

― そのときの後悔が、日本の古き良き建築を残したいという想いにつながっているのですね。
 
桐島:そうなんです。最近でこそ古民家などが注目されていますが、これまで日本には古い時代の建物を残すという文化があまりなかったですよね。みなさん、どちらかといえばピカピカの新築が好きでしょう?

海外では古い家のほうが価値があるんです。それも築200〜300年が当たり前だから、築100年以上の葉山の家なんてまだまだこれから。

― いいですね。(n'estateを運営している)三井不動産では「経年優化」というコンセプトでものごとを考えているので、とても共感できます。

 
桐島:古いものにいかに手を加えて、育てていくか。手を掛ければ掛けるほど、価値は生まれると思うんです。それなのに長い月日をかけて建てられた古い家が、安値で売られたり、取り壊されてしまっている。あたらしい家を簡単に建てては潰しての繰り返しでは、あまりにも寂しいですよね。

だから、古い家があるとつい見てしまうんです。今でもよく物件情報をチェックしては、間取りを見ながら、そこでどんなくらしができそうかイメージを膨らませて楽しんでいますよ。

― 素敵な古い家を見つけたら、また引っ越したくなってしまうかも?

桐島:さすがに、また引っ越したいなんて言ったら夫に怒られてしまいそうですが(笑)。わたし、物件を探すのも引越しも大好きなんです。結婚するまでには25回くらい引っ越しを繰り返してきました。

― 25回も!

桐島:幼少期から母とアメリカに行ったり日本に戻ったり、すまいを転々としていたので、私も根無し草のように育っちゃいました(笑)。

― でも、これだけこだわり抜かれたおすまいを離れるのは名残り惜しくないですか?

 
桐島:それが、あまり執着がないんです。もちろん大切な家ではありますが、いざとなったらいつでも手放せると思います。今の自分が思い描く「くらし」に合わせて、「すまい」に求められる役割も変わっていくものだと思うから、もっと柔軟に変えていけばいいんです。

人生、一回だけ。 自分の理想を求めて「すまい」をもっと軽やかに変えていけたらいい。

―それこそ、年齢やライフステージによって理想のライフスタイルは変わっていきますものね。

桐島:わたし自身、昔であれば東京以外で暮らすことは考えもしなかったと思います。それが、子どもたちが成長し、コロナ禍をきっかけに観葉植物に夢中になって。思う存分ガーデニングを楽しめる生活を求めた結果、今こうして葉山にくらしていますからね。

― 素敵ですね。とはいえ「いいな」という憧れがあっても、なかなか行動に移せない人のほうが大多数なのですが。

桐島:難しいかもしれないと思って諦めてしまいがちだけれど、やってみれば意外と大丈夫なんです。みんな「一度でいいからハワイに住んでみたい」とか、何かしら願望があるじゃないですか。それなら、やってみるべき。
わたしも若い頃、パリに数か月住んでみたことがあるし、ニューヨークにいる友人がしばらく家を留守にすると聞いて「じゃあ、その間住まわせて」とお願いして行ったこともあります。

― 海外にも! その軽やかさ、ぜひとも見習いたいです。

桐島:夫がセントラルパークの目の前にあるアパートを借りてきたこともありました。娘たちがニューヨークの大学に留学していた頃、娘たちのためというわけでもなく、自分たちのために。(ジョン・レノンとオノヨーコが住んでいたことで有名な)ダコタハウスの近くで、石造りの素敵なアパートでしたよ。たまにしか行っていなかったから、もったいない気もしたけれど、それぐらいが気軽でいいんです。

今でこそ、すまいのレンタルサービスもいろいろありますから、とりあえず気になる場所に住んでみたら、きっと楽しいですよね。結果、大変だったとしても、それがいい経験になりますよ。人生、一回だけですからね。

― 最後に、かれんさんの旅や移動のおともを教えてください。

桐島:わたし、ものすごく身軽なんですよ。自分が手掛けているブランドで販売する商品を買い付けるために海外に行くことが多いので、帰りの物量が増えるぶん、自分の荷物は最小限に収める習慣が染みついています。
必ず持っていくのは、ビーチサンダルくらいかな。たくさん歩くので、履き潰してもいいように3足くらい持って行きます。あとは、大判のストールも。ものを包んで持ち運ぶ風呂敷として使えますし、冷房対策や急な雨で濡れたときなどの洋服代わりになるので、一枚持っておくと便利ですよ。

ブラジル生まれのブランド<Havaianas(ハワイアナス)>のサンダル、ストールを<GLOBE TOROTTER(グローブ・トロッター)>のトランクケースに入れて。

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Photo: HONTANI

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