居心地のいいくらしのために、大切なこと。 Interview 桐島かれんさん 前編
自分に合ったライフスタイルを実践する人、未来のくらし方を探究している人にn’estate(ネステート)プロジェクトメンバーが、すまいとくらしのこれからを伺うインタビュー連載。第11回目は、モデルの桐島かれんさん。
現在は、別荘として使用していた日本家屋を改修した葉山の家で海辺のくらしを楽しまれています。世界各国から集めた調度品が和の空間にマッチした、センスとこだわりが光るおすまい。古き良きものを活かしながら、自分にとって心地いいくらしを追求するかれんさんのすまいづくりの心得を伺いました。
― 葉山の海を一望できる高台のおすまい。日本家屋の味わい深い佇まいも、趣がありますね。
桐島かれんさん(以下、桐島): 水平線までよく見えるでしょう? 電線の一本すら視界を遮るものがなく、海が見えるところは湘南エリアでもなかなかないんですよ。
この母屋は前に住んでいらした方が京都から移築した家で、築100年以上は経っているとても古いものなんです。一階は太い梁が印象的な田舎造りで、二階は繊細な数寄屋造りとなっています。この家が持つ本来の魅力を失わないよう、京都から宮大工さんに来ていただいて改修しました。
― もともとは、別荘として使っていらしたのですよね。
桐島:そうなんです。子どもが小さな頃は家族みんなでよく来ていたのですが、彼らが成長するにつれて学校の行事や友達との時間が増え、なかなか別荘に行く機会も減ってしまって。せっかく時間をかけて改装したのに、どんどん家が寂れていく気がして、なんだか可哀想で。「一度、この家に住んであげたい」と思ったんです。
ー 家族の思い出がたくさん詰まったおすまいですものね。
桐島:やはり人が住んでいないと、家って生きてこないんですよね。それに、海が近くにあるから留守の間も湿度管理のために除湿機をつけておく必要があったり、定期的に草むしりに来ないとならなかったりと、別荘としてはなかなか手が掛かるのです(笑)。
引っ越すならば、子育てもひと段落して、わたしも夫も体力があるうちがいい。もう少し歳をとったら東京の方が便利なのかもしれないけれど、今は心地よさを優先してくらしてもいいんじゃないかと思ったんです。
葉山であれば、東京まで電車で片道1時間程度なので、いつでも戻れると思って気楽にはじめてみることにしました。
― 東京とは結構な頻度で行き来されているのですか?
桐島:夫は、ほとんど葉山。わたしは仕事で行かなきゃ行けないし、最近生まれた孫と過ごすために通っています。東京にも拠点があるんです。
― 東京のおすまいも、どんな感じなのか気になります…!
桐島:東京のマンションは私と同じで築60年くらい(笑)。いわゆるヴィンテージマンションです。東京の家は私たちがリノベーションしたわけではないのですが、こちらもまた若干ユニークなつくりで素敵な茶室があるんですよ。
ホッと落ち着ける“故郷”が、ずっと欲しかった。
桐島:他には、長野県の八ヶ岳にも別荘があります。夏と冬、年に2回ほど行きますね。夏は避暑地として、冬は雪が降るのでウィンタースポーツも楽しめます。山暮らしの楽しみは、焚き火。葉山の家は地域のルールで焚き火ができないので、八ヶ岳の家では思いきり楽しんでいます。
― 三拠点生活ですか! 海のくらしも、山のくらしも、どちらも満喫できるのが羨ましいです。そのほか、拠点を複数持つことの楽しさはどのような点にあると思いますか?
桐島:八ヶ岳と葉山に別荘を持つことで、東京以外に慣れ親しんだ土地ができたことはとても嬉しかったですね。私は神奈川県の生まれで幼少期は海外で過ごしたりもしたので、日本にはいわゆる“田舎”というものがなくて。そういう場所を持っている人たちが羨ましかったんです。
いろんな生活を味わうことで、くらしが広がっていく感覚が楽しいのかもしれないです。何度も通ううちに、お気に入りのお店もできますし。必ず立ち寄る蕎麦屋さんやレストランとか。故郷と呼べるような拠点があると、そこがホッと落ち着ける居場所になる。
― 二拠点、三拠点と生活の軸となる「すまい」を構えることで「くらし」の幅が広がっていく。まさにn’estateが体現したい世界観そのものです!
桐島:海外では、別荘というものがもっと一般的ですよね。北欧のご家庭なども、たいていサマーハウスと呼ばれるような小さな小屋を持っている。夏の間は一ヶ月くらい休んで、のんびりする。最近はだいぶ変わってきたと思うけれど、日本人はやはり自分を犠牲にして仕事を優先しがちだから「くらし」を楽しむ余裕をもう少し持てたらいいですよね。とはいえ別荘を持つのはなかなか大変だから、それこそ(n’estateのように)「試しに住んでみる」体験を気軽にできるのはとてもいいことだと思います。
― 多拠点生活ならではの利点として、ほかにどんなことがありますか?
桐島:家ごとにインテリアのテイストを変えて、違いを味わえるのも楽しいですね。わたしはクラシックなものが好きだけれど、夫はミッドセンチュリー系の家具などが好き。だから、東京の家はもう少しモダンな雰囲気なんです。それぞれの嗜好を凝らした家があって、行ったり来たりできるからふたりとも満足できる(笑)。
すまいづくりに大切なのは、家族が居心地よく集まれる場所があること。
― なるほど! そういった楽しみ方もあるのですね。葉山のおすまいの場合、インテリアはどのような点を意識してセレクトされているのですか?
桐島:日本家屋ということをあまり気にせず、ライフスタイルにあったものを選ぶようにしていますね。例えば、キッチンはインテリアに合わせて建具もアンティークのような仕立てに。でも、中身は一般的なシステムキッチンなので使い勝手はいいんですよ。
― 古いものとあたらしいもの。東洋と西洋のもの。いろいろなテイストが混じり合いながら絶妙に調和していますよね。なんだか初めて来た気がしないくらい、居心地がいいです(笑)。
桐島:居心地のよさは、大切ですよね。家族みんなが居心地よく集まれる場所があるかどうかは、すまいにおいて最も重要だと思います。そういえば、うちは葉山の家にも八ヶ岳の家にも必ず暖炉があるんですけれど、なんとなくあたたかいところって人が集まってくるんですよね。
桐島:家族をつなぐものは、やっぱり食卓。あたたかいお料理かな。うちには(写真家である夫の)アシスタントも出入りするので、彼らのぶんだけでも4〜6人前のごはんを昼も夜も用意するのが日常なんです。若い子たちはたくさん食べるから、わたしも「ちゃんと食べさせなきゃ!」と張り切って、ものすごい量の料理をつくってきました。お米は一升炊きだし、お肉はキロ単位。おかずも4〜5品つくりますよ。子どもたちが小さい頃は、朝から4人分のお弁当をつくっていたし、我ながらよくやってきたなと…!
ー ダイニングのテーブルも大勢で囲めるくらい大きいですものね! それこそ古き良き日本の食卓を想起させるような、あたたかみを感じます。
桐島:美味しい料理があれば、みんな帰ってくるでしょう? 核家族が多い現代ですが、わたしの場合、大家族のお母さんになった気分(笑)。たとえ血が繋がっていなくても、アシスタントの子は、わたしにとって子どもみたいなものですから。
>後編はこちら。
> サービスや拠点について、さらに詳しく。
「n'estate」(ネステート)公式WEBサイト
「n'estate(ネステート)」 Official Instagram
Photo: HONTANI
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?