UXデザインとの出会いーUXデザイナーの独り言①
はじめまして。デザインコンサルティング会社でUXデザインとかサービスデザインとかデザイン思考の講師とか、なんか色々をしている内藤と申します。
なんですか、会社から急に「君、Noteで日頃思ったこととか考えたことを書いてみたまえ」と命じられました。正直、非常に困りました。
困りましたが、今後は時々、デザインに関して日々思っていることとか、考えたこととかを、軽々しくかつざっくばらんに書いていきますので、どうぞコーヒーでもしばきつつ薄目で読んでいただければ幸いです。
(この出だしの文章だけですでに怒られそうです。でも反省はしません。修正もしません。)
◆◆◆
はじめましてなので、自分の経歴をたどりながら、UXデザイナーを名乗る私が「UXデザイン」をどう捉えているかにつなげてみようと思います。
うまくつなげられるかは、現時点で全くわかってません。
結論から言うと、私はUXデザインのことを「翻訳」だと捉えています。
その理由や、誰の何をどうやって「翻訳」しているのか、何回かに分けて書いていきます。
では、はじめてみます。
◆◆◆
UXデザインとの出会い
ーその行為の名前もわからないままー
私のキャリアのスタートは、八百屋さんです。冗談ではありません。本当に野菜とか果物とか売ってました。
八百屋時代は魂から遊びまわる日々だったので、人間としてのバイタリティとか面白さはこの時代がピークだったと思います。週に3日は朝まで飲んでました。
そんなエピキュリアン内藤、何を思ったのか急にアプリ開発会社に営業職として転職しました(きっかけは省きます)。
広告関連業務とかお客さんとの折衝などが主な仕事でしたが、時々バナーや簡単なLP制作などのいわゆるWEBデザインをする、そんな平和な日々を送ってました。
ある日、男性向けアダルト事業部の営業課長さんから「死にそうに忙しいから手を貸してくれ」と言われ、アダルト部門のお手伝いにいきました。
それは、バナーを大量に制作してひたすらABテストをするという、筋トレのような地味ながら過酷な案件でした。
社内のデザイナーとともに、私もいくつもバナーを作りました。
でも、ABテスト以前の問題がありました。
どれもこれも、そもそものクリック数が少なすぎるのです。
なんでだよーと腐る私たちに営業課長さんが近づいてきて、作ったバナーを見るなり一言。
「こんなの絶対クリックされないに決まってるじゃん」
そして、たどたどしい手つきでフォトショップを操り、自ら一つのバナーを作ったのです。
それはまったく整ってない、素人が作ったのがまるわかりの、意匠観点から見たらどっからどうみても落第点なバナーでした。
暴言に内心いらついていた私は「思い知れ!」と思って、一番腕のいいデザイナーさんに頼んで大変美しいバナーを作ってもらい、彼が作った粗雑なバナーとABテストしました。
その結果。
クリック率もコンバージョン率も、営業課長さんがつくった粗雑なバナーが大圧勝だったのです。(たしか、6倍以上の差がついていました。)
不思議がる(というかくやしがる)私とデザイナーさんに、課長さんは「そりゃそうでしょ」とまったく動じていない顔で、
「男性向けアダルトなんだから、男の人がエロいと思うバナーじゃないとダメに決まってるじゃん。バナーとしてのクオリティとか、見た目がきれいかなんて、どうだっていいよ」
※実際はもっと過激な言語表現だったのですが、大変マイルドな感じに変換しています。
見た目がきれいかなんて、どうだっていい。
私は、この言葉にものすごい衝撃を受けました。
デザインカルチャーショック、一発目の衝撃です。
そう、私を含めデザイナー陣はみんな「きれいなバナー」「デザインとして優れているバナー」を作ろうとしていたのです。
「ターゲット層がエロいと思うバナー」を作ろうなんて考え、まったくありませんでした。
当時はまだ「UXデザイン」という言葉が日本に浸透する前でしたので、彼の「その行為」をなんというのか、わかりませんでした。
でもあとから考えると、これが私の「UXデザイン」とのはじめての出会いでした。
もうちょっといい出会い方はなかったものか。
と、思わないでもありません。
◆◆◆
「優れたデザイン」て、なんなんでしょうね?
色合いが美しいこと?レイアウトが整っていること?ビジュアルが優れていること?
UIの世界では、使いやすいこと、直感的に使えるもの、なんて言われ方をされることもありますね。
(しかしこの「直感的」という言葉。まあよく聞きますが、個人的には大変お好きじゃないですねー。)
見た目がきれいかなんて、どうだっていい。
そう言い切っていいなんて、今でも思えません。
でも、確実に言えることは。
見た目「だけ」がきれいではダメ。
営業課長の言葉で、そのことを実感をもって深々と理解しました。
はーい、そこでUXデザインが必要になりまーす!
なんて簡単な話ではもちろんありません。だって、
見た目だけがきれいじゃだめ=だからUXが必要だよね
こーんな、誰でも思いつく簡単な公式がビジネスに当てはまるのであれば、もうとっくにどの企業も大成功!どのプロダクトも超素敵!リリースするもの全部いいね!になってると思いませんか?
でも、なってない。
「UX」が「必要」
って、どういうことなんだろう?
このことについて、私はこのあとの仕事人生で向き合うことになり、掘り下げて考えざるを得ないようになっていきます。
大変生意気なことに、続きます。
◆◆◆UXとの出会い編 完◆◆◆
次回:②はじめてのペルソナと、勘と気合のグロースハック実践 https://note.com/trinitydesign/n/n95fe82548745
内藤亜由子
UIUXデザイナー/サービスデザイナー/人間中心設計専門家
アプリ事業のディレクターを経験後、SIerに転職しシステム開発・ソフトウェア開発のマネジメントと開発実装に従事。その後、UXデザイン・デザイン思考など「広義のデザイン」と出会い、UIUXデザイナーに転向。再転職したBtoB事業会社ではシステム開発のマネジメントとともに、デザインチームのチームビルディングを担当、開発組織へ「デザイン遺伝⼦」をインストールする。担当したHR系サービスにおいて、グッドデザイン賞を受賞。
「UX翻訳家」として、実務と⾃⼰研鑽をし続けるHCD専⾨家。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?