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ロイヤルバレエ「マクミラン・セレブレイテッド」 @ロンドン

MACMILLAN CELEBRATED:
Danses Concertantes
Different Drummer
Requiem
Saturday 13 April 2024 at 19:30, Royal Opera House

ロイヤルバレエのミックスビル、マクミラン・セレブレイテッドを見てきました!

ロイヤルバレエの要を担う振付家の一人、ケネス・マクミラン。ロイヤルバレエの真骨頂ともいうべき演劇的バレエの名作の数々を生み出してきた人です。有名な「ロミオとジュリエット」「マノン」の全幕バレエの他にも数々の一幕もののバレエを生み出しています。今回はその中でもかなり珍しいラインナップで、私もレクイエム以外は知らないものばかり。(レクイエムも通しでは見たことなかった)

マクミランは暗いものが多いので(一幕ものだと尚更)あまり食指が動かなかったのですが、ロイヤルバレエがアップしていたリハ風景のプロモーションビデオを見て、これは行かなくては⁉︎と急遽思い立ち、行ってきました。

Danses Concertantes

最初の「ダンス・コンチェルタンツ」は、マクミランが振り付けた最初の主要作品で、これをきっかけにマクミランは自分で踊ることをやめ、振り付け一本で生きていくことを決めました。かなりユニークな振り付けで、舞台や衣装から少しバレエリュス的な感じがします。(音楽はストラヴィンスキー)。ロミジュリやマノンからは想像できない振り付けで、これはこれで面白い。

Different Drummers

さて次の「ディファレント・ドラマー」が私にとってはこのプログラムのハイライトでした。原作は1836年に描かれたビューヒナーの戯曲「ヴォイツェック」。実際の殺人事件を元に描かれていて、暗い!重い!これぞマクミラン!的な作品。ヴォイツェックの悲痛な叫びが聞こえてくるかのよう。演劇バレエが得意なロイヤルバレエだからこそできる作品かもしれません。今回はマルセリーノ・サンベが急遽代役で踊ったのですが、この迸るような叫びが聞こえてきた素晴らしい演技でした。

Requiem

最後の「レクイエム」は、マクミランの友人であり、こちらも有名な振付家だったジョン・クランコを偲んで作られた作品。タイトル通りの鎮魂歌であり、観客も幕間は拍手をしないようにとのお願いがありました。粛々とした中での聖なる踊りといった感じ。数年前にウクライナ支援のバレエガラで、ロイヤルのウクライナ人バレエダンサーのツェンベンホイがソロを抜粋で踊ったのが印象的です。本当にウクライナの人たちへの鎮魂の祈りを捧げているような踊りでした。今回は、プリンシパルのサラ・ラムが清らかに踊り上げました。

さてここから下は、いつもの通り私の独断と偏見の感想ですので、ご理解いただいた人だけどうぞ!


Danses Concertantes

ビビッドな色合いの衣装、ストラヴィンスキーの音楽、4番ポジションを多用したユニークな振り付けがちょっとバレエリュスっぽかったです。個人的にストラヴィンスキーの音楽が苦手なのですが、面白い振り付けのおかげで集中力途切れず見ることができました。

印象的だったのは前田紗江さん。昨年ソリストに昇格し、くるみ割りでクララも踊っています。今回のこの変わったスタイルの振り付けでも美しさが際立ってた。体の使い方が美しくて、遠くから(バルコニーでした、ど近眼には大変笑)も目を惹きつけられました!

左から、ヒンキス、ズチェッティ、前田さん
中尾さんも正確なテクニックでソロを決めていました。
ガスパリーニとロヴェロ。ガスパリーニはこの後のレクイエムにも代役出演で引っ張りだこ。

Different Drummer

バレエ界隈がざわつくほどキャストチェンジが続いていたロイヤル。今回も監督自らが舞台に出てきてキャストチェンジを発表していました。実はこの日はディファレント・ドラマーはリース&オシポワ組でした。私はサンベとオシポワが見たい〜!と思っていたのですが、組み合わせ的に二人が踊る日はなく、結局私と友達の都合のいいこの日となったわけなのですが、リースが急病で降板。代わりにサンベが登板したのですが、そして演技面、振り付け面でも重要な相手役も変更になり、サンベのパートナーのヘイワードに変わりました。

でもね…リースさんには悪いけど…サンベ良かった〜!良かったどころの騒ぎじゃない!すごかった。(語彙力ない!)作品は、まぁ〜暗い。重い。えぐい‼︎ 本当にまさにマクミランバレエという感じなんですが、本当にサンベのヴォイツェックからは悲痛な叫び声が体を裂いて劇場中に響くような感じでした。パワーがみなぎっていた。実は、後から知ったのですが、サンベは前日に白鳥でジークフリードを踊っていたらしく。そこからのヴォイツェックってかなりハードだと思うんですよね。

しかもですよ。実はこの日ハプニングがありまして、私の席の近くの天井桟敷で喧嘩が始まりまして。しかもこのドラマティックで張り詰めた演目中に!しかも声も潜めずに普通に怒鳴り声。しんと静まり返った劇場で大きくFワードが響き渡る始末。しかもこれが何回かにわたってあったんですよね。最初の時に注意して引きずり出して欲しかったよ…。会場中に響いてたので多分舞台上のダンサーたちにも聞こえてたはず。そんな中でのあの演技。本当にサンベはものすごい集中力で臨んだと思います。

ヘイワードも良かった。この役はセックスシーンや暴力のシーンもあってかなり大変な役だと思いますが、サンベの熱演にに応えた迫真の演技でした。

エリートシンコペーションみたいな明るい作品もある反面、どうしてもマクミランはこの人間の感情を剥き出して抉るような作品が多く、この作品もその一つ。エモーショナルなダンスを、芸術を見られたのは本当に素晴らしいことですが、頻繁に見たいか、というと…どうかな〜。この作品も、ダンサーにとっては踊るのも心身ともに削られそうです…。個人的にはプリンシパル・コーチングに初演のフェリとイーグリングがついていたのがツボでした。何回も見たマクミランのロミジュリのビデオのあの二人が…。

隊長のエイヴィスとドクターのエマートン。この二人の怪演も作品を光らせました。
左から、セラーノ、ヘイワード、サンベ。
セラーノも魅力的な鼓手長を好演。

Requiem

その名の通り、鎮魂歌。クランコを偲んで作られたということは知りませんでした。観客には、幕間は拍手しないようにと演目前にお達しが。明るい真っ白な舞台はまるで天上のようで、厳かな雰囲気の中で踊られたまるでミサのような、儀式のような踊り。

サラ・ラムが素晴らしくて、清らかな魂を表現しているようでした。最後、魂が昇天するかのような振り付けが好き。

私は全く気づかなかったのですが、平野亮一さんがこの演目中に負傷。友達によるとめちゃくちゃ痛そうにびっこを引いて退場したそう。最初の群舞で退場したらしいのですが、私はど近眼なので、舞台上の人の顔はほぼ見えず、サラ・ラムとのパドドゥで、あれ?平野さん、さっきいたよね?と思いながら、キャストチェンジのアナウンス聞き逃した?と不思議に思っていました…。(友達にはサラとパドドゥ踊ったのはボールだけと言われたのですが…。いや、青い服の人とも踊ってたと思うんだよね…。ルカさんなのかな?でもルカさん別役だしな?)心配でしたが、今日インスタグラムで手術したことをアップしていらっしゃいましたね。でも白鳥は降板された模様。早い回復をお祈りしております。

アクリさん。
ルーバックもメリッサ・ハミルトンの代役で出演。(マリアネラの分も)
大役を務め上げました。
マシュー・ボールはミケランジェロの絵に出てきそうな美しい体と舞。本当に天使みたいだった。

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