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おやすみエッセイ~January 2024


1月1日 元旦

苦しみはなぜ、幾度となくやってくるのか

痛み 苦しみ 悲しみ どれも遠いところからやってきて、あっという間に近づいてくる

あまりにも悲しい

1月2日

とても静かだ。

となりから規則正しい寝息が聞こえる限りで、無性に無音が耳につく。

静寂が発するキーンと聴こえる音に、誰の叫びも混じっていないのはなぜだろう。

この現実が、現実味を帯びない。

1月3日

時を戻せたらどんなにいいかと思う。

もし戻せたとしても それは

ビデオテープを再生する

ただそれだけと同じ。

過去の出来事は変えられないけれど

記憶として人の中に残る

その人が忘れなければ

いつまでも在り続ける。

残された者たちは 記憶を抱いて生きていく

けれど

1月4日

眠れぬ夜が続く。
おかしいな、昼間は何ともないのに。

新年あけて夜がくると崩れる。
疲れているのに、眠れない。考えてしまう。

こんな夜ばかりでは、そろそろ身体がもたない。

いやだ、もう悲しい出来事は嫌だ。
ニュースに泣いていたら、私の頭を撫でる、小さな娘の手。

1月5日

仕事が諸々とひと段落して、
心おきなく眠れる夜!
と、思いきや

まるで縄跳びを飛んでるよう。

深く眠り、起きての繰り返しで。

何も考えず、ふうと息をつけて
思い悩み不安になった夜も乗り越えて
今夜はたっぷりと眠りたかったけれど

私を見張る、もうひとりの私。

1月6日

カーテンを開けると
まだ夜かと思うほどに、暗い。

人が時の感覚を失ってしまったのは、きっと
時計を読むようになったから。
時計を覚えたから、時を読めなくなってしまったのだ。

そんなことを考えながら、朝日が昇るまでのひとときを、
はやめに淹れた珈琲とともに、味わう。

1月7日

いたい人といっしょにいる

話したい人とたくさん話す

それだけのこと、大切なこと

それがかなう人、かなわない人

願っても、願っても。

1月8日 成人の日

人の営みは、まるで編み物のよう。

友だちのお父さまと、色々な話をした。

長く朗読をやられているそうで

その深い世界の話を聞いて、

私は作家を目指していると伝えた。

本を読む人 本を書く人。

誰かがやってのけたことは、別の誰かの人生に繋がっていくんだなあ。

1月9日

カラン コロン

マンカラの

いろとりどりの

ガラス玉

きらり きらりと

みんなのえがお

1月10日

期せずして、日に三度もつぶあんを食べる。

朝はカフェで、モーニングのあんトースト

昼は近所のおはぎ屋で、あん団子

3時にたい焼きを食べた。

たい焼きの角をつまんでいた時の、気づきと恐怖。
流石に夕飯には食べないと誓う。

つまり、どちらかといえば、こしあん派なのだ。

1月15日

ひとりキッチンにいた頃。

朝がた、大きな流れ星が落ちたらしい。

ここよりとおい上空で、なのにこちらの空にも届いて見えるとは。
空はやっぱり、繋がってるのだな。

目撃した旦那は、UFOを見たと勘違い。

娘は流れ星より、一輪車の練習に夢中。

今日も平和な我が家です。

1月16日

ねむたげな娘は 私に

にこにこ顔を向けてくる。

トントンと拍を打って、心音を真似た寝かしつけをするけれど

ただそばにいるだけでいいみたい。

どの子も どんな状況の子も

トントンしてくれる存在

寄り添い 心をあたためる人がいますように。

安心して眠れますように。

1月17日

見上げた空は久方ぶりにくもり空。

昨日はきれいな星星がまたたいていたな。

いつも自転車を停めて、娘と空を見上げる。

みて!今日も星がきれいだよ

ほんとだ

オリオン座あそこだ

どこ

あの星なんて名前なのかな

今日は三日月だね

寒空に星月。
空があるって、いいな。

1月18日

薬売りがよく、私の家に
漢方薬や西洋のこな薬や薬玉やらを売りにきた

私は玄関のすみで、母と薬売りが話すのを聞いている

箱にあるバンドエード、貼った指の跡がいつもかゆくて
バンドエードとはそういうものだと思ってた

子どもの頃にあったものは
今では見かけないものばかり

1月19日

道にでると ひたひたと 雨がふる

しだいに ばたばたばたと 大きな音になって

前屈みになって傘にしがみつく

風もびゅうとおどしてくる

小さな男の子が こちらを見て嗤ってる

ガラス越しに目が合うと 男の子はどこかへ行ってしまった

1月20日

眠れない日は、何をしても眠れなかったりする。

ああ、もう0時だ。

目をつむっても冴えていて、欠伸すらでない夜更け。

家族はもう寝ているのに、どうして私だけ起きてるのかな。いつもこうだ。

翌朝、やっぱり寝坊はするけれど

いつも通りに赤いランドセルを背負う、幼い私。

1月27日

朝日を浴びるのも好きだけど、夜の訪れはもっと好き。

とくに、冬の夜は好きかもしれない。
なぜだろう、人の手が加えられていない唯一の夜は冬夜だと感じる。

きんとした空気

凍える手と耳

湯気の立つ空気

澄んだ星空

どれも冬がもたらす、自然現象。

1月28日

強く思う。

「私は自由に生きたい 幸せでありたい」

私の人生は私のものだから。

色々と失うものも多い人生だったけれど

今は幸せ。

それを構築するのは、私自身と、私と時を共有する人たち。

幸せの連鎖と言うけれど

期せずして、最近の私は

その連鎖で成り立っている。

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