【書評】木村幹『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書)
日本と韓国の間には、歴史認識問題を始め多くの難題があります。「韓国崩壊」を見出しに掲げるウェブ記事や、書店に平積みにされる嫌韓本も今や見慣れたものとなりました。
日韓関係はなぜここまで拗れてしまったのか。なぜ両国の国民の間ですれ違いが起きてしまうのか。これらの疑問に答えるのが本書です。
著者は韓国政治の専門家ですが、学生の質問に答えて講義するという形式をとっており、丁寧でわかりやすい説明が特長です。
研究者の著書は文章が難解になることも多いですが、木村先生は「一般人の理解レベル」をよくわかっていて、そのレベルにまで降りて説明してくれるので、一般にも読みやすい著作になるのだと思います。
さて、本書を読んで気になってくるのは、「日本人の固定観念(ステレオタイプ)」の根深さです。
確かに、1970年ころの韓国は経済的に日本より遅れており、貿易面でも依存していました。しかし、日本の停滞と韓国の成長により格差は縮まり、今や韓国の一人当たりGDPは日本を凌駕しています。
現実には韓国における日本の重要性は低下しているのですが、以前の(はっきり言えば「見下した」)イメージのまま韓国を見てしまう日本人が多い、というわけです。
また、日本人が韓国に対して抱きがちな「誤解」についても検証されています。
例えば、「韓国の大統領は支持率を上げるために反日的な政策を行う」というもの。2012年の李明博大統領による竹島上陸などは、確かに支持率に好影響を与えました。しかし、韓国にとっての日本の重要性の低下にともない、その状況は変わってきています。例えば2015年、朴槿恵大統領が(韓国から見て多分に妥協的な)慰安婦合意をしましたが、支持率が低下することはありませんでした。
インターネット上で検索できる情報だけでは、上記のようなデータも交えた冷静な分析に触れることは困難です。あらゆる世代の人にも推薦できる良書だと感じました。
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