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川光 俊哉 Toshiya Kawamitsu
2019年4月30日 20:32
真空管幻想夜 落ちかかるころのこと空気がぬけたオレンジの甘美なかおり 色ガラス通信不能 凍る胸食器は かたかた 泥の沼ちらばる 痛み 泡をふき冬の浜辺のバイオリン鎖につながれ 根をはって耳をすませば 砂男あいもかわらず クロールで水底 長い影を 軽蔑消え去れ ボタン 草 深く無口な少女 ひじをつきやすらか 半分 ドライフラワー
2019年4月27日 10:13
メランコリーブロッサム赤は 色 濃く 反映し雨をこわがる あなたなら切りきざんでみた 火もつけただけど 沈黙 水蒸気石を投げたら ぬけがらでよく見てほしくて かたち 変えナイフのように冴えた のど白く 光って 蛇いちごうすい みどりの 蛾の幼虫心のなかに生きつづけ境界線の こちら あこがれため息 ついても 静物画蜂蜜味の すてきな日それでも 覚えている 声は
2019年4月25日 23:16
バクテリア失踪とぎれた線の眠る部屋かたく むすんで ひらいた手紙風船は待ちぼうけ花壇のすみで 繭のなかかがやく葉っぱに身をつつみブリキの太鼓は 赤と黒泳げば 時計の歯車ときしむ 旅する 万華鏡しょせん あなたは ハンカチのエンゼルフィッシュ ほつれ 燃え分かりはしない 砂糖 骨 灰空と煙突 その あいだランプ ゆらゆら 落ちた 夜きりとり線に そって 吸う
2019年4月24日 09:03
近眼畜角をまがって 夜のなかふりかえっても まだ 近くわたしをつかまえようとする若い けものが ただ ひとりおかしのお店はスカートにかくされ 今日も 雨 明日もたどりつけない 子供たちだまって じっとして 埋めるここでは なにも起こらない細くて 長い 腕を 組み赤 青 むらさき 地面を たたく小鳥のように 花を 食べ歯を みがいては 泣きわめくめんどくさくて
2019年4月22日 17:40
聖金曜日やぎ座のもとに ひざまずきここに不安はないけれどさみしい天体 空の島水色の影 ただよわせ赤いケープは あでやかに無題の一年 閉じこめてみだれた黒髪 額 肩芝生の こがね よぎる 象魔法の太陽 からっぽの胸に置かれた かたつむり鏡に夢中な あなたに さよなら月のつめたい血をひいた銀貨 一枚 嚙みくだき遠い汽笛に 心 うばわれ
2019年4月20日 12:18
孔雀飼い発芽までには まだ 少し時間がかかる 指先に季節 浮かべて 金の繭カーブ ゆるやか 水銀灯体温 なくせば うつくしいことば たゆたう 弱虫のしるし 誰かと手をつなぎ幽霊 守る 摩天楼冒険はつづく 真実の眠る しずかな 森の奥まにあうのなら 光線 吸いこむいっしょに行けたらいいけれどひびく こだまが ほら 否定ひっくりかえった パノラマ 指輪
2019年4月19日 12:21
流星魚コオロギ 鳴いた 壁のなか花粉を糧に 夢 うつつ声をからした餌食なら巣食う 循環する 回路拒絶しながら ばら色の頬 ふくらませ 床下の地球儀 ぬすんで マーメイド少し はなれて 破裂したかおりは ジャスミン 色も青窒息寸前 格納庫蛇口から 逃げ あざける とかげもがき 苦しみ ゆるすことまだ 可能性 指 さされしげみに ころがる さくらんぼ 一個
2019年4月16日 09:53
庭園公女あなたのほどけた髪の下くらがり うつむく 雪割草温室 ひそむ 退屈に抵抗すること できなくて背中 なだらか 日が暮れて生まれて一度も 手をつなぎ笑ったことがない 秘密漂白剤の犠牲者でいつもの同じ現象に不安げ かじかむ 金魚草とねりこ 慟哭 出発は まだタイムマシンは未完成離陸の合図も無責任芽吹き 花 咲き 一歩 残照へ
2019年4月12日 12:42
終日人影 ひとつ 通りすぎ土の下には セルロイドともしび 流れる 夕霞誰も悪くはないけれどかわいく 強く 背が高いやさしくなれる 観覧車光をひいて ゆらゆら と生まれたことも知らないで数 かぎりなく 糸杉の遺伝子 涙で 終わらせないからぜんまいじかけ 黒トマトブーツは空虚で 雲の上白日 横断歩道 物音
2019年4月9日 18:04
ふるえとゆらぎ花は ほのかに 白く 散り夜明けのなかで あざやかに影をかならず落とすから明日の世界は今日の夢ペンキぬりたて カメレオンにくしみ 忘れて すばらしく見えた 飛行機 生命線ファスナー あければ 部屋の奥膝をかかえた 嘘つきの月の素顔に会えるでしょうしたたる 光 鬼薊 初夏雨 そそぐ日は うつくしく気高い心も瑪瑙色たったひと息 草笛 こわれた
2019年4月9日 00:22
灰色チューリップだまっていても それだけで砂が入った赤い目で日傘の下でまどろんでスプーンの上 さみしくてそちらから見たわたしなら足音 流れる 空 見あげしずかにうなずくことでしょう次のあらしは もうすぐだいまごろ あなたは 海の底かがやき 忘れた オウムガイ風は なにいろ ナイチンゲールプラネタリウムで かくれんぼ愛されるとは知らないでまだ 残る 酸素 全部
2019年4月4日 19:23
夏至物語うつくしい蛾に選ばれて寒い夜には 靴の音おびえたように ゆれ 動きあなたに似た人 知っている変形しながら顔をなで大きな青い目だけ残る表情 空中 縫いあわせあなたもわたしもリトマス紙わかちあうもの なにもなくただ ふりつもる パンの耳季節の国境 そびえる サボテン石を蹴っては 共鳴し路地裏 なんて 絶縁体光を愛する心を守る
2019年4月2日 17:33
魔法の葉っぱかおりは木犀 風に舞うあそびつかれて 色は青影もかたちもなくなって証明される のぞみ 消え夜は ようやく ふけていくかざりのこした ガラス窓きらいな 一羽 立ちあがり心配いらない まだ 暑いほこりをはらって 笑っていたなんて 芳醇 石鹸水わかれの予感 ひとすじ 毛糸あそびつかれて ふたりきり最後の汚点 ぬぐえずに栽培するには 苦すぎる 土