見出し画像

統合失調症2級男のちょっと昔の話 part4

医者に内緒で勝手に断薬して症状が悪化していた頃は、幻聴たちの活動も活発になり幻聴たちからは、いつもいじめられて苦しめられていました。「ベランダから飛び降りろ、それがお前が天国に行ける唯一の方法だ」とか「寿命を全うしたなら、お前は100億年の地獄を体験する事になる」とか、散々言われたものでした。その中でも一番辛かったのは、幻聴たちの命令で11月の深夜の街を半袖半ズボンで数時間歩かされ続けた揚げ句、疲れ果てて駅のベンチで休憩していたら、幻聴たちに「今、お前の父親が福岡のヤクザにリンチされて死んだぞ」と言われた事でした。あの時は本当に辛かったです。また別の日には普通に電車に乗っていたのに改札口で、「駅員さん、不正乗車です、捕まえて下さい」と幻聴たちが叫ぶ事もありました。更に別の深夜にも幻聴たちの命令で街を徘徊していたのですが、その最中に立ちションをしていると、今度は女性の声の幻聴に、「お巡りさん助けて下さい、痴漢です、射殺して下さい」と叫ばれる事もありました。そして、これは今となっては笑い話になりますが、自宅でテレビに映るとある女性アナウンサーを見ている時に、彼女の夫である吉本芸人の声にそっくりな声の幻聴に、「人の嫁エロい目で見んな、殺すぞ」と凄まれる事もありました。あの頃の幻聴たちは非常に狡猾で悪辣な性格をしていたと思います。また僕が、世界史の中で1番好きな人物であるイスラムの開祖ムハンマドの伝記を読んでいる時や、好きなアイドルのイメージビデオを見ている時や、K-POPを聴いている時などにドブの臭いを感じる事もありました。これは幻聴というか僕の脳の中に居たもう1つの人格が、僕の好きな者たちの印象を悪くする為に、幻臭を嗅がせるといった嫌がらせをしていたのだと思われます。色々と奇妙な体験をしていた僕ですが、精神薬を真面目に服用するようになってからは、幻聴との力関係も逆転し、今では僕が幻聴をいじめるようになりました。幻聴には僕の事を兄者と呼ばせたり、別の時には様付けで呼ばせたりしています。しかし、少し残念な事もありました。それは女性の声が聞こえなくなってしまった事です。僕はアニメファンという訳でもないのですが、あの頃は男性芸能人の声の他にアニメチックな女性の声も聞こえていて、若干、楽しめていたのも事実です。今の幻聴には声色が無く、只の言葉が頭の中に浮かんで来るといった感じです。しかし、だからと言って今さら断薬してあの頃の様な幻聴たちとの生活に戻りたいとも思いません。精神薬は僕の命綱です。精神薬を飲み続けていると寿命が縮むという話もありますが、断薬してしまうと悲惨な生活を送る事になるのは、目に見えているので僕は死ぬまで精神薬を飲み続けて行く事になるだろうと思います。そして、唐突ですがここで断薬中の奇妙な話をもう1つさせて下さい。断薬を始めてから暫く経つと、僕の味覚は本来の甘党から大きく変化し、苦味を好む様になっていました。具体的な例を挙げますと、僕はゴーヤーを生で噛りながら、ノンアルコールビールを飲むという行為を週に数回は行う様になっていたのです。酔う為に仕方なく我慢しながら不味い酒類を飲むという事は、それまでにもありましたが、酔えもしないノンアルコールビールをわざわざ飲むというのは、以前の僕からは考えられない行為でした。しかし、そんな大人の味覚も幸か不幸か服薬を再開した後は完全に元の甘党に戻り、今は2日に1個の菓子パンを楽しみに生きています。そして、最後になりますが、これを言って終わりにしたいと思います。今は精神薬を開発してくれた白人科学者たちと、精神薬の実験台になってくれた動物たちに感謝する毎日です。ありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?