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恋と学問

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もののあはれとは何か?本居宣長「紫文要領」から読み解く、源氏物語の魅力と本質。
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#物の哀れ

恋と学問 番外編その1、映画「東京物語」のこと。

恋と学問 番外編その1、映画「東京物語」のこと。

映画監督の小津安二郎氏(1903-1963)は、本居宣長の遠い親戚にあたるらしい。

らしい、というのは投げやりな言い方かもしれないが、インターネットでしか聞いたことがなく、自分で調べたわけでもないから、こう言うしかない。

宣長の本姓は小津であった。宣長は20代のなかばから、義兄の先祖の旧姓である本居姓を、あえて名のったのであり、幼名を小津富之助といった。参考までに家系図を掲げておく。見てのとお

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恋と学問 第6夜、異様な「まえがき」について。

恋と学問 第6夜、異様な「まえがき」について。

今夜は、紫文要領の「まえがき」を読み解きながら、この文章の「異様な切迫感」は何に由来するのか考えてみたいと思います。(あとがきに相当する部分を冒頭に持ってきたことは前回を参照のこと)

まえがきは非常に短い文章ですので、いきなり全文を引用してみましょう。

右紫文要領上下二巻はとしころ丸が心に思ひよりて、此の物語をくりかへし心をひそめてよみつつ考へ出だせる所にして、全く師伝のおもむきにあらず。又諸

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恋と学問 第5夜、紫文要領の目次づくり。

恋と学問 第5夜、紫文要領の目次づくり。

今夜から紫文要領の本文に入ります。初回となる今回は、ふつう本を開くと最初に出くわすことが多い、目次についてお話します。なぜ目次に注目するかと言うと、本というものは大抵の場合、目次を見ればそこに何が書かれているのか、大体の見当がつくからです。

著者である本居宣長の章立てを元にした、岩波文庫版・紫文要領の目次は次のようになっています。(カッコ内の数字は岩波文庫版におけるページの枚数を表します)

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恋と学問 第4夜、恋の学問の誕生。

恋と学問 第4夜、恋の学問の誕生。

本居宣長の個人的な恋の経験が、どうやって物の哀れの学問へと深められていったのか?今夜は、宣長の思想の「成長過程」について考えます。

そのために、紫文要領の完成(1763年)から時を戻して、宣長が京都に留学していた頃(1752-1757年)に書かれた作品・あしわけをぶねを取り上げます。宣長の処女作にして歌論書、和歌のあるべき姿を論じた本です。全編を通じて対話(自問自答)の形式で書かれています。

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