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恋と学問

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もののあはれとは何か?本居宣長「紫文要領」から読み解く、源氏物語の魅力と本質。
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2021年9月の記事一覧

恋と学問 第5夜、紫文要領の目次づくり。

恋と学問 第5夜、紫文要領の目次づくり。

今夜から紫文要領の本文に入ります。初回となる今回は、ふつう本を開くと最初に出くわすことが多い、目次についてお話します。なぜ目次に注目するかと言うと、本というものは大抵の場合、目次を見ればそこに何が書かれているのか、大体の見当がつくからです。

著者である本居宣長の章立てを元にした、岩波文庫版・紫文要領の目次は次のようになっています。(カッコ内の数字は岩波文庫版におけるページの枚数を表します)

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恋と学問 第4夜、恋の学問の誕生。

恋と学問 第4夜、恋の学問の誕生。

本居宣長の個人的な恋の経験が、どうやって物の哀れの学問へと深められていったのか?今夜は、宣長の思想の「成長過程」について考えます。

そのために、紫文要領の完成(1763年)から時を戻して、宣長が京都に留学していた頃(1752-1757年)に書かれた作品・あしわけをぶねを取り上げます。宣長の処女作にして歌論書、和歌のあるべき姿を論じた本です。全編を通じて対話(自問自答)の形式で書かれています。

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恋と学問 第3夜 、もののあはれ入門。

恋と学問 第3夜 、もののあはれ入門。

物の哀れについて述べる時、これまではカッコ付きで「もののあはれ」と書いてまいりました。そのわけは単純なことです。この言葉は恐らく、私を含め多くの人が雰囲気で理解した気になっていますが、本当のところは良く分かっていない言葉だからです。このカッコを取り外し、自信をもって「物の哀れが云々」と話せるようになれたら、今夜の目標は果たされたことになります。

手始めに、言葉についての学問である言語学が、この言

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恋と学問 第2夜、秘められた恋のゆくえ。

恋と学問 第2夜、秘められた恋のゆくえ。

前回お話したのは、いわば本居宣長の正史です。どんな歴史にも必ず正史から漏れた、語られることのない、秘められた事実があります。宣長の場合、それは「秘められた恋」でした。今夜はそんな話をしましょう。

おさらいしますと、紫文要領についての公式見解とは、賀茂真淵に出会い、それをきっかけにして神話世界の研究へと急転回する直前に作られた、「もののあはれ」こそが源氏物語の主題であると宣言した作品、というもので

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