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「留学」にどれほどの意味があるのか

社会人になってから留学。多くの人が憧れるだろうデンマーク。

けれど手放しで「最高に楽しいよ!みんな留学したら良いよ!」なんて言えません。
このタイミングでこうしてよかったと思います。でも全てが良いことばかりでもない。6:4くらいの混ざり具合。

「留学」について考えていることを書いておきたくなりました。
デンマークで、フォルケホイスコーレで、この学校で、生徒は18~25歳くらいがほとんどで、僕は社会人経験者の34歳で、
そんな前提の上で考えていること。

滞在はおおよそクリスマスまで。そろそろ折り返しです。


言葉は分からない

英語が通じるデンマーク。やり取りはほとんど英語。
この学校にきて感じたのは「言葉は分からないなあ」ということでした。それはもう、絶対に。


語彙力の問題。
「遊ぼうよ」の一言を伝えたいときにもLet’s play together.とストレートな表現がまず浮かぶ。それも伝わるけれど彼らはもっと色々な言い方をする。
(正確に言えばplayはゲームなどの遊びであって、お出かけとか飲みに行こう的な遊びではないみたい)

その言い方はLet’s chill.だったりLet’s hang out.だったりDo you want ~?だったり。
聞き取れていないだけでもっとあるのかもしれない。若い人ならスラングだって多くなる。

日本語も「いまヒマ?」「どっか行く?」「ちょっと話そう」と、ほとんど無意識に使い分ける。だから今ぼくの前にいるデンマーク人やベルギー人のあの人だって同じようにしている。

その無意識の使い分けは(ほぼ絶対に)聞き取れない。自分の中にない言い方だから。


僕らは日本語の語感をもっているから初めて聞く言葉でも日本語であれば意味の推測ができる。そうやって新しい言葉が生まれる。世代ごとの言葉ができていく。
だから違う国で違う時代に生まれた以上、もう共有できない言葉がある。

日本でだって「やばい」を理解できる世代できない世代がある。外国と日本ならその壁はなおさらだ。

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当たり前が違う。
例えば音楽のクラスで「きらきら星を歌ってみよう」と言われても、僕は英語の歌詞は知らない。みんなは当然歌える。
「ホイットニー・ヒューストンのこの歌、聞いたことあるでしょ?」と言われても知らない。周りを見てなんとなくついていく。

でも僕らだって同じことをしていて。
たとえば「トトロを歌ってみよう。音楽を理解するのに良いんだよ」なんて言って、みんな知っている前提で話を進めることは当然ある。

言葉が分からないのは、仕方がない話。


絶対に分からない言葉があるから、じゃあどうするか。
もう一度言ってもらう。言葉の意味を尋ねてみる。でも毎度毎度そうするわけにもいかない。

僕がやっているのは、こちらの話すスピードを落とすこと。イメージはYouTubeの0.75倍速。
こちらがゆっくりになることで相手のスピードも下げ、それで聞きやすくする。

だからグループの会話になるとスピードを落とせなくて厳しい。相手の言葉に集中して考えながら聞くから背景音があるとそれだけで聞きづらい。

スムーズなやり取りにはなかなか遠い。年齢が若いほど話は速くなるし言葉もポップに短くなることも要因。


この学校にくる前のお宅では、話が理解しやすくなる工夫を自然としていたのかも。
(そして教育に関心のあるご夫婦、50代ほどの年齢ということもあって言葉選びや話すスピードを合わせてくれていたのだろう)


「学ぶため」の留学は効率が悪い

言葉が分からない以上「学ぶ」もまた非効率になる。
先生の言葉はわかって7割、生徒の意見もよくて7割。相手の話をわかっていないから、自分の意見を述べたところで噛み合う実感がない。

足りない理解を補うために知識と結びつけて想像する。でもそれだと自分の知っている範囲での解釈を濃くするだけで、新しいことを知る=学ぶことと逆行する。
じゃあそれって「学んでいる」のだろうか。

発言することに意味があるとも言える。けれど「自分の意見をがんばって言ってみる」ことも僕にはもう必要ない。仕事の中で十分に経験してきた。


じゃあこの留学で何を学べるか。
ちゃんと興味がもてて、できるだけ手を動かす科目。それを選ぶようにしている。
ガーデニング、DIY。新しく関心が向いたのはソムリエや電子音楽づくり。

予習復習もしてみる。気になったことは調べてみる。今はYouTubeでパーマカルチャーについて勉強中。日本で働いて暮らしていた頃は、時間がないからと手が伸ばせなかったこと。

けれど今ならできる。留学の意味を感じられることの一つ。

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「そこでしかできないこと」なんてない

デンマークという国にいて
「ここにいるなら〇〇に行っておかないと」とは感じない。
「せっかく来たからデンマーク人の友だちをつくらないと」とも思わない。
「帰ってからの仕事に繋がることを学ばないと」とも考えていない。

行きたい場所ができたら行きます。自分らしく過ごす中で仲よくなる人がいたなら友だちになれると思います。ここで感じて考えたことに影響されて今後の自分ができていきます(だから何でも未来に繋がります)。

でもそれを初めから狙ってはいません。「せっかくデンマークに留学にきたから〇〇しておかないと」というのは、「もったいないから〇〇する」と同じことだと感じています。

それは「もったいないから」やっているのであって、本当にやりたいわけじゃない。なら、それこそがもったいない。
以前もそんな記事を書きました。)

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別にデンマークである必要もなかったのです。

たまたま知り合いにフォルケ経験者が多くて、人生のgreat resetをしたいタイミングでまとまった時間を自分に手渡したくて、
デンマークなら色々な条件が合ったというだけ。

季節の愛おしみ方を知っている気持ちの良い人たちだなと思います。
そんな人たちが暮らしている豊かな国だとも思います。

けれど「ここでしかできないこと」なんて、本当にはないとも思います。

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自分の思考を進めるための問いは、僕はもう自分でつくれる。だから考えるために誰かと話をしなくたっていい。
感覚や価値観を同じくする人が日本にいるから、時々その人たちと話せれば十分。

意識的に、独りで過ごすようにしています。

今の僕には考える時間こそが必要。もちろんここの人たちとの話を拒むことはしないけれど、「人生について、面白がりながらマジメな話」をするのだけで良い。


自分に莫大な時間を手渡して頭を自由にする。浮かぶものを丁寧に追う。この年齢になった今あらためて生活を組み立て直す。
どこでもできそうなそれを、僕はここでやっている。

学ぶというより自分のために時間をつかうということ。そういう時間をとるということ。

洗濯ものをよく絞ってから干す。そういう「時間があればできること」をちゃんとやる。

日本に帰った時の暮らしをイメージして、洗剤とかハンドソープとか作れるようになってみたり。


日本に帰った後も続けたいことを見つける。
今の身体に合うこと(ストレッチやマッサージ)を取り入れてみて、新しい習慣にする。

日本でなんとなくやっていたことを見直す。
留学はgreat resetだから「今までこうだった」という慣性を断ち切れる。今の僕はそれが無くてももう大丈夫、というものを暮らしから削っていく。

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じゃあ「僕の留学」にどんな意味があるのか

自分に莫大な時間を手渡す。それがここに来た理由。

食事は独りでとるようにしている。ただゆっくりと空を見る。

日本で働いていた頃は、食事中に「あれについて考えておかないといけない」「今日は何があったっけ」「今のうちにあれの準備をしておくのが効率的だな」と頭を動かしていた。そういうことが今はない。

ただ流れていく雲を見る。今までできなかったそんなこと。

莫大な時間の中、ぽっと考えが浮かんだりする。
こんな時にだけ出逢える、自分の中の素敵なものがある。

もし「ここでしかできないこと」があるとすれば、自分に時間を手渡して頭を自由にしてあげること。
これこそ普段できないことであって、友だちをふやす・旅行することの方がどこでもできるように思う。そして多分、実はそんなに求めていない。

今までが悪かったわけじゃない(比較によってしか価値を感じられないなんて好きじゃない)。あの経験があったから「ただ空を見ている」という幸せをじわっと感じられるのもまた本当。


莫大な時間を手渡したとき、自分の頭がどんな風に動くのか。
公園でリードが解かれた犬みたいに自由になったとき、どこまで頭は走っていくのか。僕の中に浮かぶものを見てみたい。

だから日記を書いている。
これがわざわざ仕事を辞めて、日本を離れてつくった「僕の留学」の意味。

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やっぱりどこにでも人はいて、どこでも世界は美しくて、空と風を感じていたい。
自分の暮らしを自分の手でつくっていたくて、自分そのままでいられる数人となるべく心に近い言葉を交わしていたい。

日本にいた頃と同じことを、より確かな気持ちで考えています。

今日は僕の中にどんなことが浮かぶだろうかとそれが楽しみで、
それを楽しめれば何でもやっていける気がしています。

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