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かな打ちの日本語使いとしては「思考回路はショート寸前」を防ぐためにも手習い訓練を日頃から保持して思考能力を喪わないために。〜小林信彦「生還」②

といふことで、基本的に今日の話はこちらの別立て。

無神経さに抗うまっとうなプロテストの方法とは
~小林信彦「生還」とあいみょん「生きていたんだよな」|torov|note

そしてこちらの続きです。

やっとかな打ちが芥川賞を獲る時代になったのかと。
~受賞者のコラムで気を引いたのは~|torov|note

単独でもわかるようにある程度導線は引いていきますが、
上の二つをお読み頂けるとより一層言わんとしている
ことは理解できるかと思います。

なので、一応タイトルにもある通り今日のBGMは
まずこちらになります。

まあ初めのOPにはちゃんと芸コマで六本木の10チャンネル
(地上アナログ放送当時のテレ朝のチャンネル番号)が
掲げられたシーンがあるんで、ここは東映公式をあえて
持ってきたと。
(イントロあたりの左隅にいる感じ)

ひとまずゴニョゴニョな事情もあって、先行されてた
曲はこちらだったけど、メロディーだけが流用された
形でムーンライト伝説になった、がまず基礎知識。
こちらはKEY WEST CLUB「夢はマジョリカ・セニョリータ」。
中谷美紀、東恵子によるユニットの3枚目にして最後のシングル。
中谷美紀は後に女優として活躍するあの中谷美紀。

最初に歌ったDALIは四人組ユニットだったけど、
すぐに(お得意のスターダスト案件だったことも
あって)解散し、その中にいた高橋美鈴、西本麻里の
二人がその後組んでMANISHになる、までがまた
抑えておくべきポイント(スラムダンクのEDとか
歌ってもいたと)。

ごめんね 素直じゃなくて
夢の中なら言える
思考回路はショート寸前 
今すぐ会いたいよ

但しここでの表現としてはむしろ恋愛感情に頼らない
「思考回路はショート寸前」を防ぐためにも日々の
訓練、ってニュアンスにはなりますが。

一応高瀬隼子が芥川賞を獲った際のコメント欄で
こうしたコメントを返したことがまずベース。

ワープロとポメラというデジタルガジェットには
縁がなかったので逆に親指シフト世代には
「リスペクトベース」で接することが出来るの
ですけどね。

(中略)

 ただ、「思考回路はショート寸前」にならないよう
かな打ちを保持して思考する能力を喪わない努力は
してきた、といふ感じでしょうか。

やっとかな打ちが芥川賞を獲る時代になったのかと。
~受賞者のコラムで気を引いたのは~|torov|note
コメントから

その上で少しづつ引いていくのが今回も小林信彦の
「生還」。右手と思考能力、思考回路の直結に関して
まずこう作中で述べています。

 利(き)き腕が右、と私は書いた。
 右手が自由だからこそ、私はこの連載を続けて
いられるのである。

小林信彦「生還」(文春文庫版)(2022.02)p45

その後の木皿泉は親指シフトキーボードのついた
ワープロでしか書けないと言い、高村薫はワープロ
がなければ小説なんて書かなかったとまで言い切って
いたわけだけど、原稿派の小林信彦は右手が自由な
ことで文章を紡ぎ出せる思考回路を持った人である
ことは容易に察せられる。

(あいつが面白い)と大衆が思うのは、その芸人の、
狼狽(ろうばい)も含めて、主題をそれていって
しまっているトークのうねり、私どもの仕事でいえば、
それが文体ということになるのではないだろうか。
そうしたズレは原稿用紙に向うことで初めて出てくる
ような気がする。

頭に浮んだイメージが、右手を動かすまでの短い時間に
(一秒よりも短いかも知れない)激しく変化してゆく。
変化して、原稿用紙に定着される。

小林信彦「生還」(文春文庫版)(2022.02)p46

まあ私の世代で言えば読書感想文レベルの
原稿用紙で書いていた時よりは、日記を書いていた
ノートの頃か、もしくはかな打ちを覚えた時に
そこで直結する鉛筆なり当時の重たい打鍵の感覚で
イメージを定着させるようにしていたのかなと。

脳がマトモであり、右手が使えるだけで、生産的
な活動ができるのだ!そして、脳が早く動くのは、
記憶力によって貯めこまれたシーンがいっせいに
フラッシュバックするからなのだ。

小林信彦「生還」(文春文庫版)(2022.02)p47

まあ私のケースで行くと、その脳が素早く機能して
グルーヴ感が出るのは、QWERTYキーボードで余計な
動きを強いられるローマ字変換で打つときよりも、
かな打ちないしはかな漢変換した時の方がより気持ち
よく感じられると。
 なのでローマ字変換は仕方なく出先などで使う
パソコンを動かす為に覚えましたが、私が文章を
発案するときの思考回路はかな打ちの時に主に
存在しているわけで。

なので一太郎とモバイル性と打ち込み打鍵に
特化したポメラに作家や物書きが群がるのはある
程度納得がいくと。
(ただどうしても初期コストが高くて手を出し
づらい難点はある)

なので今回のようにフリックにもある程度
慣れてそこそこのスタイルで書ける分にはいいは
いいのですが(ある程度補正も出来て校正と
文字カウントができる分では優れている)、
基本的には思考回路とグルーヴを動かすのに
かな打ちは欠かせないので、今の割れ窓にも
「せまいほう」にも手を出す気になれない
ジレンマは続いているのだけど。

人にはそれぞれその人にあった「弘法の筆」が
あるのだと思っております。

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