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32歳から孫介護9年の作家が語る介護者負担軽減のヒント


3年ぶりに新型コロナウイルスの規制が解除されたGW、介護者の皆さんはいかがお過ごしかな?GWは、デイサービスやショートステイの空きが限られ、1~2泊休めてあとは介護中って時が多かったわ。
俺は、32歳からおばあちゃんの介護を一人で在宅6年、施設3年の合計9年間経験し、5年目から「ライター」・「作家」、昨年9月は、ケアラーの政策提案・就業支援等のコミュニティー「よしてよせての会」を設立した宝塚住みのおっさんや。
今、クローズアップされている18歳未満の家事・家族の世話をする子ども「ヤングケアラ―」(日本ケアラー連盟推奨の年齢)ならぬ「ミドルケアラー」。「ミドルケアラー」もきまった定義はないけど、30代~40代の介護者だとすれば全国に110万人以上いるねん。とんでもない多さやろ?30代、40代といえば、結婚・出産・育児・仕事キャリアなど重要な年代。支援が必要なのは言うまでもない。
そこで、俺の拙い経験やけど、介護者がどうすれば少しでも負担が軽くなるかを関西弁を織り交ぜながら明るく書いてみた。
誰かの参考になればうれしいわ。

「家族が介護前にこれだけは話し合って損なし5カ条」


家族介護が必要になれば「さあ一緒に協力しよう」となかなかならへん場合があるなと実感してん。
俺の家族は、はあちゃん、おかん・弟・妹の5人家族や。
おかんは、昔からあまり体が強くなく何度かガンなどの病を患ってしまってんけど、何よりばあちゃんと馬がいまいち合わず、些細な事からようケンカしてたわ。

「あんた、タバコ吸うなってあれほど注意したのにまだわからへんのか、私はタバコの臭いが大嫌い。吸うんなら出ていけ」(ばあちゃん)

「わかってるわ。少しだけ吸うただけやのにそんな怒らんでええやろ」(おかん)

弟や妹から「お兄ちゃん、2人を仲直りさせてきて」と頼まれ、だいたい仲介役担当の俺。
弟や妹は、祖母へのイメージが芳しくない。
「幼い時さ、よく怒られて家に帰るのが嫌で近所の犬と遊んで時間を長引かせたな」(弟妹)
それもそのはずで、おばあちゃんは、俺を人一倍可愛がったんや。
おばあちゃんは、俺に小さい頃から豪華特急のトワイライトエクスプレスで北海道旅行に連れて行く、ビデオデッキを買う、私立高校や大学進学の費用を捻出すると至れり尽くせり。
あと、俺とばあちゃんは、昔から不思議と相性がよかったんや、同じ羊年だから?(笑)

車椅子に乗る祖母を支える私


俺のおばあちゃんへの愛情に対して弟と妹と開きが大きかったわけよ。
そこに、おかんが脳梗塞でいきなり倒れて、あら大変……。
おばあちゃんは、弟の子供の写真をみて「あんた、この子に水をあげないと死んじゃうでしょ」と珍言やガスの人を消し忘れボヤ騒ぎ。一人でほっとけへんやん?
おかんが回復するまで誰がばあちゃんの様子をみるかとなり、俺一択になったんや。
昔からの家庭環境が大きく影響したとはいえ、いざ、介護が必要になりドタバタ感が否めへんかった。
せやから悪い事は言わん、下記の1~5は最低限話し合い役割分担を決めといて損ないで。


  1. 1、家族の介護に備え在宅介護か施設どっちを選択するか
    2、在宅介護なら誰がどのようにケアするか
    3、お金はどう分担するか
    4、延命治療をするかどうか
    5、葬式の形態

「インタビュアーの精神で挑めれば介護成功や」


在宅介護の場合、要介護が低い頃は一ヶ月に利用可能な介護サービスの時間が少なく、一日の大半を家で過ごすことになるねん。
在宅介護をするなら、介護者は、要介護者のインタビュアーになるのをオススメしますわ。
インタビュアーは、ゲストの話を聞き、要点を絞って質問してインタビューィー(取材をうける人)の魅力を最大限に引き出すのが仕事やん。
多分、うちのばあちゃんに限らずお年寄りって「私の話を聞いてー」オーラ満載なタイプが結構多いと思うんや。
「シンゴくん、私はね英語を習いたいと思っているのよ。だけどね、私、英語全然あかんやろ。女学校を卒業しただけで親戚のおばちゃんに田んぼで寝んと働けー働け―の毎日だったからね。どこか習えるところがあるんかいな?」(ばあちゃん)

俺は、「英会話教室で習えるところあるで」と説明し、ばあちゃんが納得してくれた光景を一週間で十回ぐらいみたような(笑)。
一字一句真剣に聞いてたらメンタルもたんしイライラしてプッツンしかねんから大事なところだけ聞いて答えて笑ってリアクションすると喜ぶで!!!
ポジティブな話ならまだしもネガティブな話もわんさか飛び出すから心と体の覚悟が必要やで。例えばさ、本人が財産管理できないのに、「お金・通帳・印鑑ちょうだいーー、くれんかったら警察呼ぶで――」って言われ続けたりね。

「認知症が進行し、お金の管理が難しくなり、1日で年金を全部使ってしまったことがたびたびありました。私がばあちゃん、俺がお金預かって渡すから、1日で全部使ったらあかんやろと言いました。すると、祖母は、「私のお金なの、ほっといて。あんたは、私のお金をとろうとするの?泥棒って警察にいうで」

引用 著書「おばあちゃんは、ぼくが介護します。」
おばあちゃんは、ぼくが介護します。2022年4月ジュンク堂書店にて

本人は、「体も頭もいたって健康イエーーイ」てなもんやから、介護者が理解を深めて相手の立場に立って寄り添う必要があるで。

「もぐもぐ女子の精神で常連施設を確保しいや」


なるべく負担が少ない介護をするのは、”本人と介護者がお気に入りの常連さんを一つでも多く作る”のをすすめるわ。
在宅介護は、一人ではできんわけや。日常の相談や介護保険関係はケアマネージャー、デイサービスなどは高齢者施設職員、治療は主治医や病院、在宅医療は訪問看護士とあらゆる人や施設にお世話になるわけやん。
普段から「いつもありがとうございます」の気持ちをもって時に感謝の言葉を伝えつつ、些細な事でも何でもええからコミュニケーションをなるべくとるよう心がけよう。
俺は、デイサービスの職員さんが家に来た時、「最近、ばあちゃんの調子どないでっか?」ってよう聞くようにし、じょじょに仲良くなっていってん。
おばあちゃんもデイサービスが気にいって気にいってさ。ついには、ソックリのイケメン兄ちゃんに恋しちゃって。(笑)

母親が「ばあちゃん、もうお泊まりデイ行く時間やから、それぐらいで化粧大丈夫」と笑うと、祖母は「もうちょっと化粧してええやないの」と化粧をやめないのが、お泊まりデイサービスへ行く前の母親と祖母の日常の会話でした。

引用 著書「おばあちゃんは、ぼくが介護します」

ある日、その兄ちゃんから「ご帰宅の時間なのですが、おばあちゃんが帰りたがらないんですよ。お忙しいところ申し訳ございませんが迎えに来ていただけませんか?」と連絡があってん。
俺、急いでデイサービスに行って帰るでって言ってもばあちゃんは「私はまだここにいるの」って兄ちゃんのそばにピタッとくっついてや。(笑)
シングルや多重在宅介護者は、風邪をひいたり、コロナにかかったりと誰もケアする人がおらんようになって、「どの施設も満員でどないしたらええんや」って時がある。
そんな時、このデイサービスにおばあちゃんの面倒をお願いすると何度も快く引き受けてくれはってものすごい助かったで。
ほらさ、今年、北京オリンピックで銀メダルを獲ったもぐもぐ女子って介護にも応用できる部分があると思うんや。
例えば、メンバーがショットを成功させると、「ナイススイープ!」、「やったね」と大きな声で笑顔いっぱいに声かけするのって介護でもめちゃくちゃ大切な事やんね。
ボケが進んでくるとさ、自分で服を着るのもけっこう時間かかるねん。祖母もたまに「なんでこんなことができひんのよ、もういやや」って自信なくしたり不安になって泣いちゃった時が何度かあって俺がよく慰めたで。こういう時に、「ナイスーー」とでも言うと、気分が高揚するんちゃうかな。

左から祖母、私、母親


あるいは、介護の時間に「もぐもぐタイム」を作っちゃおう。
俺のおばあちゃんは、甘い物が大好きで、「あーちょっとイライラしてきたな」、「今日は機嫌悪そう」と感じると、「菓子パン」や「果物」を差し出してたわ。



「情報通が介護を制する」


おばあちゃんは、少しずつボケが進んじゃって一人で服が着れなかったり便や尿ができなかったりして要介護4になり、バス・タクシー運賃助成券
だけど、それ以外に福祉サービスがあるなんて知らんかったんや。認知症や統合失調症などに交付される「精神障害者保健福祉手帳」の存在を知ったのは、なんと2年先・・・。「精神障害者保健福祉手帳」は、1~3級まであって、等級によって所得税・住民税といった税金の控除やNHK受信料・携帯料金の割引などが受けられるんや、おばあちゃん1級やった。

「もう少し早く申請していたら、経済的に助かったのに」
こういう例は、他にもいくらでもあるんや。役所は申請主義で聞かないと答えよらん。
毎日が在宅介護で精一杯ちゅう人が多い中こんなこと言うのは酷やけど、情報をいかに多くインプットするかが介護を制するんや。
せやから、情報収集方法とあまり知られてないサービスをあげとくから参考にして、フル活用しておくれ。

  • 知って得するサービス
    〇精神障害者保険福祉手帳・・上記の通り
    〇家族介護慰労金・・・要介護4・5同居家族・通算90日以下の入院・住民税非課税世帯・介護サービス1年未利用の全条件満たす者のみ。※これ以外にも自治体独自で介護手当を出している場合有、要確認
    〇低所得者利用者負担軽減制度・・・単身世帯年150万以下などを対象に介護サービスの利用者負担額が1/4に軽減され、3/4。
    〇特別障がい者手当・・・日常生活で常時介護し、所得・障がいの程度により最大月額27350円まで支給
    〇高額医療合算療育費制度・・・1年間の医療・介護保険の自己負担が高額の場合、自己負担が軽減できる
    〇オムツ貸与・支給・・1日10枚以内・1ヶ月45枚以内の紙オムツ支給
    など

「在宅介護が終わっても介護は続くよどこまでも~~」


施設に入所して「はあー、介護やっと終わった」って一安心も束の間、①~③のため、介護が続くよ~~どこまでも~~。
①利用者に暴力をふるったり、暴言を吐くのが続いたりすれば退場処分になる場合あり
→他の施設を探すか、在宅に戻すか2択
②①の症状やと受け入れ可能な施設が少なく遠方になり、「精神科病院だけは入院させたくない」と思ってソーシャルワーカー・ケアマネに聞いても情報を持ち合わせていないことがあり、自力で病院探しをせなあかん可能性がある
③「急病が発生して他の病院を受診しましたが入院の可能性があります、先生や病院からの説明があるのですぐ来てくれ」で急行し入退院・転院手続き・付き添いなどに追われる

介護は、一回はじまると平均5年続くそうで長期戦になる上にめちゃくちゃストレスがたまる人が多いと思うねん。
せやから、負担が最小限になるように使えるサービスは全部使って、仲間を作って愚痴をはいて、プライベートは好きなことして過ごしてや
ほんで、「もう、在宅介護は限界」と思ったら一人で悩まずに家族やケアマネージャーらに相談しいや、きっと最適解を導き出してくれるで。

最後に、主人公のおばあちゃんは、2022年2月に老衰のため90歳で天に旅立ったんや。生前中から応援してもらった皆さん、ほんまおおきに。ツイッターやFacebookではお知らせしたけど、文章にするのに気持ちの整理含めて3ヶ月かかってしもたわ。
おばあちゃんは、ここ2年間の療養時よりそばにいるような感覚やねん。毎日、祭壇の水を変え、ご飯を供え、飾りのお花の電気をつけて、線香をあげる。一日に何度かおばあちゃんに思い出を振り返ったり、悩みを吐露しちゃう時もあるわ。

「真面目に強く生きるんだよ、頑張っていれば必ず誰かが見ていてくれるからね」
生前、ばあちゃんが俺にかけてくれた言葉を胸にぼちぼち頑張るで。
また、リクエストがあればばあちゃんと俺のエッセイや介護から学んだノウハウは、著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』(株式会社法研)に詳述してる他、新聞・雑誌・WEBに多数掲載や連載しているし、ツイッターやFacebookで随時投稿してるから暇な時にのぞいてやっておくれ。

文責 奥村シンゴ 宝塚在住。介護・メディア作家・コンサルティング、よしてよせての会代表他。近著『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』。放送・通信業を経て32歳から認知症祖母とガン・精神疾患母のシングル介護9年。ラジオ・新聞・雑誌・WEB計450以上掲載・出演/ヤフトピ複数(680万PV)/相談700人/詳細下記URL 

ツイッター @torata_t  Facebook 奥村シンゴで検索、Youtube https://www.youtube.com/channel/UC2CxorUeUx76QsTSvxheFXQ

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